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虹乃ノラン
2024年5月10日 20:44
第一章動かない猫「いってきまーす!」 スニーカーを履いて玄関から飛び出すと、四月の風が頬をなでる。通いなれた道を歩いて今年で六年目。満開まであと少しの桜と日差しが、気持ちいい。 急にぽかぽかしてきた陽気のせいなのか、ベンチで眠りこけてるお年寄りや、バスが来てるのにぼーっと立ち尽くしているスーツ服のお姉さんなんかで目白押しだ。 大人になると忙しすぎて、みんな疲れちゃうのかな。 そんなこと
2024年5月15日 21:54
スカーフェイスを追って(2)《乙女町》 乙女町は住宅地で、紅葉とミチルの家もある。ただっ広いライオン公園よりは探しやすい気はするけれど立ち並ぶ建物のせいで死角が多く、見通しは悪い。 なにしろ相手は猫。隠れるのなんてお手のもの。ひょいひょいと塀に登ったり、建物の間や民家の庭先を通り抜けたりされれば、追いかけるのは困難だ。「まだ近くにいるかもしれないから、見落とさないようにね」 マシュマ
2024年5月18日 13:10
第八章作戦開始! サイレンを挟み撃て!(1) ペダルを漕ぐ僕の足取りは、自分でも驚くほど力強いものだった。通信で聞いたみんなの声が僕を後押しする。だけど結局、途中の道では猫一匹すら見つけられなかった。 コスモ小に着いたのは十時三〇分を過ぎたあたり。途中ずっとスカーフェイスを警戒していたせいか、かなり時間がかかってしまった。なんの進展もないまま自転車を止めて息を整えると、コスモ小に到着したこ