マガジンのカバー画像

「&So Are You」完結済み 全50話

50
バラは赤い、スミレは青い、お砂糖は甘い、そうして君も……。 一九六三年ミズーリ。代々トウモロコシ農家を営むベンの住む田舎町へやって来たハンナは、初対面でズケズケものを言う嫌味な…
運営しているクリエイター

#銃声

「&So Are You」第一話

「&So Are You」第一話

プロローグ
 照りつける太陽の光が、僕の背中をローストターキーの表面のようにこんがりと焼きつける。
 目前に広がる湖面には零れんばかりの光の粒が溢れ、宝石箱を埋め尽くしたダイヤモンドみたいに煌めいていた。

 この場所で共に長い時を過ごした僕たちは、なにひとつ色褪せることなく同じ輝きを放っているはずだ。
 すべてあの頃のままに。

 そうして君も、あの日のキラキラした笑顔のままで……。

 耳を澄

もっとみる
「&So Are You」第三十八話

「&So Are You」第三十八話

初めての休暇(Thailand,1965)

 ここベトナムで六ヶ月生き延びた僕たちは、待ちに待った休暇をタイで過ごしていた。

 銃声や砲撃音の届かない場所なら、この際どこだって構わなかった。海の見えるバーで毎日のようにアルコールを飲み、生きている実感を満喫する。

 夕暮れ時、薄紅に染まる海を眺めていると、グレッグがビールを煽りながらつぶやいた。

「ベン、あんなこと言って悪かったな……」

もっとみる
「&So Are You」第四十四話

「&So Are You」第四十四話

悲しいこだま

 穴の中は兵士たちの流した血でぬかるみ、火薬と死肉の臭いで満たされていた。おびただしい数の死体が積み重なりもはや敵か味方かも判別できない。

 激しく響く爆撃音と銃声をかい潜り、穴を覗いてはグレッグの名を呼んだ。

 穴のひとつから僅かにうめき声が聞こえた。中に転がり落ちるように飛び込むと、エリオットとジェフの姿があった。エリオットは頭部の大部分を失っており、すでにこと切れていた。

もっとみる
「&So Are You」第四十五話

「&So Are You」第四十五話

よお相棒!

 目の前でまた一人戦友が逝った。――結局、僕は彼の願いを叶えてやることができなかった。でも彼は今、最期の望みが叶い、穏やかな表情でその人生に幕を降ろしている。

 本当のところ、ウィズリーはどうだったのか? 頭の中はそればかりが駆け巡っていた。本当に自殺だったのか? それとも誰かに最期を頼んだのか? 

 なにが善で、なにが悪なのか……。この戦争の先に行けば行くほど、見えなくなってい

もっとみる