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「&So Are You」第四十四話

悲しいこだま


 穴の中は兵士たちの流した血でぬかるみ、火薬と死肉の臭いで満たされていた。おびただしい数の死体が積み重なりもはや敵か味方かも判別できない。

 激しく響く爆撃音と銃声をかい潜り、穴を覗いてはグレッグの名を呼んだ。

 穴のひとつから僅かにうめき声が聞こえた。中に転がり落ちるように飛び込むと、エリオットとジェフの姿があった。エリオットは頭部の大部分を失っており、すでにこと切れていた。

「ジェフ! しっかりしろ! 今、衛生兵を呼びに行ってやるからな!」

 血にまみれたジェフはどこを負傷しているのかわからなかった。抱き起こし壁によりかからせると、胴体からずるりとはらわたが飛び出した。……彼はもう助からない。苦しそうに肩で息をし、ジェフは虚ろな目で声を絞った。

「ざまあねぇな……。もう虫一匹殺せそうもないぜ……」

 口を開くたび、傷口から血が溢れた。

「喋るな、ジェフ! もう良いんだ! もう終わったんだ!」
「そうか……終わったのか……なぁ、あんた、味方の兵士だろ? 悪いけど、俺の頭に一発撃ち込んでくれないか?」

 ジェフは血を吐き出しながらそう懇願した。視点が定まっていない。すでに僕が何者なのかわからないほど意識混濁している。野蛮で最低の糞野郎だったとは思えない弱々しさだった。いや、もしかしたらこれが彼の本質だったのかもしれない。

 僕は心の内に噴き上がる動揺を押しやって、答えた。

「わかったよ、ジェフ……」

 最期の願いに応じてやることが唯一の道だと自分に言い聞かせ、ジェフの手からライフルを受け取り、その頭に銃口を向ける。

「悪いな……」

 ジェフはつぶやき、ようやくこの苦痛の終わりを迎えることができるといった安堵の表情で瞼を閉じた。

 冷たい引き金に指をかける。そのトリガーは情けないほど軽い。

 そして暗い穴蔵の中を一発の銃声が悲しくこだました。

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