説明のテクニック〜小説のちょっとしたコツ
小説のちょっとしたコツや小技をご紹介するシリーズ。
今回は「説明のテクニック」です。
説明のむずかしさ
小説の文章には主に以下の3つがあります。
描写
説明
セリフ
それぞれに難しさがあるのですが、2の「説明」の難しさは独特です。
説明すると、物語の時間が止まるのです。
例を見るとわかりやすいでしょう。
あまり良い例ではないですが、行動描写はもちろんのこと、情景の描写もカメラの移動が伴うため、物語は動き続けます。
ですが、説明している間は、物語の進行が止まっていることが分かるでしょう。
説明中は話が一時停止するのです。
また、説明は映像を止めてもできますが、描写はできない、ということも分かると思います。
とはいえ説明は必要
さて、説明は時間を止めるので、多用すると読者はつまらなさを感じます。
では、説明ではなく、すべてを描写すればいいのでしょうか?
たとえば、上で書いた説明も、がんばれば描写だけで表現できるでしょう。
カレンダーに誕生日の印があり、そこに「誕生日までに初めての彼氏をつくる!」と書いてあるのを描写するなどすれば、なんとか説明した情報を伝えることができるはずです。
ですが、想像すれば分かるとおり、それをすると文章量が多くなるのですね。
すべてを描写で表現すると、小説が長くなりすぎるのです。
ですので、小説をコンパクトにするためにも、説明はどうしても必要になってきます。
説明は時間を止める厄介なものですが、小説には必要不可欠です。
ですから、説明するときは、
できるだけ物語の進行を止めない
物語が進んでいるように見せかける
といった工夫が必要になるわけです。
説明するときのコツ
では、説明するときの実践的なコツをいくつかご紹介しましょう。
移動中に説明する
セリフで説明する
アクションの後で説明する
それぞれ見ていきます。
1.移動中に説明する
1つ目は移動中の説明です。
目的地に向かっている車の中や、次の舞台に移動する際の電車の中などで説明するというコツです。
たとえば刑事ものなどで、現場に向かう車中で「被害者の名前は○○。年齢○○歳、独身。胸を刺され……」と説明する若手刑事などがいますよね。
車は移動しているので、車中での説明は、時間停止の影響が少なく感じられるのです。
また、物語の舞台が変わる場合にもよく使われます。
一章の最後で事件が起こり、二章から別の場所に向かうとすると、二章の最初を移動に当て、車中や電車内で事件の概要を説明すれば、物語が停滞している印象を与えずに済みます。
これは簡単なので試してみるといいでしょう。
2.セリフで説明する
2つ目はセリフでの説明です。
地の文での説明は完全に時間を止めますが、セリフでの説明ならそれほど停滞を感じさせません。
説明が必要なときは、とりあえず、セリフの応酬でなんとかできないか考えてみるといいでしょう。
ただ、セリフの応酬だけで説明すると単調になるので、合間に人物の行動を挟んだり、地の文での説明も入れていくと、バリエーションも豊かになってつまらさなを回避できます。
とはいえ、説明ゼリフは嫌われる場合もあるので、ジャンルによって調整が必要です。
私のいるジャンルでは、地の文を飛ばす読者も多い印象なため、多少おかしくなってもセリフで説明するようにしています。
この辺りはジャンル特有の事情も考え合わせるといいですね。
3.アクションの後で説明する
3つ目は説明の順番です。
説明してからアクションを起こすのではなく、アクションを起こしてから説明しましょう。
特に冒頭はこのパターンを意識するといいです。
冒頭から説明するのではなく、とりあえず何か事件を起こして、主人公に行動させ、一段落したら説明するといいでしょう。
多少、意味が分からなくても、何かが起こっていれば読者はついてきてくれます。
適当なところで事件を終わらせ、そのあとで説明すれば充分です。
アクションシーンや、スピード感が必要なシーンでは、極力説明は省くといいです。
説明が入るといちいち時間が止まるので、テンポが崩れます。
説明を入れるなら、とりあえず一連の動きや行動が終わってから入れることを意識するといいでしょう。
今回のまとめ
小説のちょっとしたコツ「説明のテクニック」でした。
説明は物語の時間を止める
説明を入れないと小説が長くなりすぎる
説明を入れるなら工夫が必要
なるべく時間を止めないようにする
時間が進んでいるように見せかける
説明するときのコツ
移動中の説明
セリフでの説明
アクションの後での説明
最初は、「必要だから説明を入れる」ことしか出来ないでしょうが、慣れるに従って、「どこにどうやって説明を入れれば物語を停滞させないで済むか」と考えるようになります。
そこまで考えるようになったら、もう上級者といえますね。
それではまたくまー。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?