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「日本のパスポートは強い」はデマ?

はよにちばんは!Nijiです。

「日本のパスポートは世界一」

この文言を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。何でも鵜呑みにせず疑ってしまう癖のある私は、この文言でさえも疑ってしまいます。


【旅行】日本のパスポート、確かに万能。

確かに、日本のパスポートを持っていると色々な国へビザなしで簡単に旅行ができる。同じ大学の中国人の友人によく羨ましがられることがあるし、「日本のパスポートは世界一」という言葉をよく聞くので、実感はしています。現に、日本人がビザなしで最も長く滞在できる国はジョージアで、365日も滞在できます。私の大好きなフィジーにも120日滞在できるし、かなり行ってみたいペルーにも183日も滞在できる。ヨーロッパ含むほとんどの国には90日滞在できる。日本人が観光目的の渡航の際にビザを必要とする国は、ほとんどアフリカや中東ですが、それを除くとほとんどの国にビザなし渡航可能なんです。

ビザなしだと何がいいの?

ビザなしで旅行できることの何がそんなにいいのでしょうか。ビザの申請をせずに海外旅行することが当たり前になっている、私たち恵まれた日本人は、こう思うのが普通なのかもしれませんね。私も以前まで疑問に思っていました。オランダの大学に行き始めて色々な国籍の人と関わる機会が増え、旅行の話題も頻出するようになり、ようやく日本国籍のありがたみが分かってきました。走ることが趣味のイラン国籍の友人は、ロンドンで行われるマラソン大会に参加するため、イギリスのビザを申請しました。しかし、オランダでデータアナリストという安定した職に就いていて、経済的に余裕があるのにもかかわらず、却下されてしまったのです。「発展途上国の人間が、我々イギリス国民の仕事を奪いに来る」「イギリスはイランなんかより賃金が高いので、こちらに来て不正に働こうとしている」というよくある右翼的な思想がバックにあるのではないかと複数の人が言っていました。彼女がビザの申請で支払った約400ユーロ(約6万3000円)も、もちろん戻ってくることはありません。

「強い」の定義

ビザなしでたくさんの国に行けることは、はたして「パスポートが”強い”」と言えるのでしょうか。それは人によると思います。ここで「強い」を「めんどうなビザ申請をせずに気軽に旅行できること」と定義づける人であれば「日本のパスポートは強い」と言えるでしょう。しかし、メディアや他人から「日本のパスポートは強い」と聞くことによってそれを鵜呑みにしてしまうのはよくないと感じます。「強い」の定義は他にもあると私は考えます。例えば「旅行などどうでもいいので、とにかく海外で仕事をゲットして海外生活をしたい」という日本人からすると、「強い」の定義は「海外で働く際に規制がかかりにくい国籍」ということになるでしょう。どういう意味なのか、私が実際に経験したことを例にして見ていきましょう。

海外就職や進学では日本のパスポートはハズレ。

オランダのアムステルダム大学で1年生だったころ、両親にすべてお金を払ってもらうのは申し訳ないと思ったため、好きだったケーキ屋さんでのアルバイトに応募したことがありました。EU圏外の国籍の学生(日本人含む)は働くのに週16時間までという制限があり、"work permit"という労働許可を政府から得なければなりません。労働許可は学生自身が申請することはできないため、会社側が政府に申請しなければならないのです。面接で「私はEU圏外の国籍なので、労働許可を申請していただかなければならない」と伝えました。すると面接官であったケーキ屋の店長はめんどくさそうな顔をして、それが何なのかを聞いてきました。無事面接を終えたのですが、その後返信は来ませんでした。「めんどうな労働許可とやらを申請しなければならないくらいなら、オランダ人やEU圏内の人を雇うよ。なぜわざわざ手間をかけてまでEU圏外の人を雇う必要がある?」という会社側のスタンスですね。そうなると、EU圏外の学生にとって、ヨーロッパの質のいい教育を受けることは更にハードルが高くなるということです(アルバイトとして採用されにくいので、裕福な家庭出身の方が有利)。

例はまだまだあります。インターンシップを探している際に、アメリカのインターンシップの募集もついでにネットで調べてみました。アメリカは大企業が集まているし、世界中から人が集まります。英語で働く機会を得られるため、世界で活躍できるチャンスも増えるかもしれない。しかし、ナショナルジオグラフィックなど大企業含むほとんどの募集要項に”Candidates must be authorized to work in the United States(参加はアメリカで働く法的な権利がある者に限る)”と書かれていました。チャンスが転がっているアメリカでは、日本人は簡単に働くことができないし、日本人はEU国籍保持者のように自由にEU圏内で仕事ができるというわけでもないようです。日本人は、日本で日本語を使って働くということは簡単ですが、世界で活躍したいとなると、欧米の国籍の人々ほど恵まれてはいません。残念。

教育に関しても同じことが言えます。オランダの大学は、EU圏内の学生は1年間の学費が約30万円。一方EU圏外の学生は約170万円払うことが普通とされています(大学や年による)。オランダ国籍の学生は平日の交通費(公共交通機関)が無料で、EU圏内の学生にかんしては割り引きがあります。私たちEU圏外の学生はフルプライスを払う。スウェーデンでは、大学も大学院もEU圏内の学生は完全に学費が無料。一方、EU圏外の学生は数百万円支払わなければならない。日本のパスポート保持者は、質の高い教育、そして世界で活躍しやすくするための英語での教育に、残念ながらいいアクセスを持っていないということが言えます。

日本のパスポートは観光目的の旅行にかんしては「強い」のかもしれませんが、「教育」や「就職」という観点から見ると日本のパスポートは、実は「強く」ないのではないでしょうか。色々な「強い」の定義があるので、「日本のパスポートは強い」と言うことは間違ってはいませんが、あまりにこの考えが主流になってきていて、何も考えずに鵜呑みにしている人が多いと感じたため、この記事で問題提起してみました。

オランダの大学で社会学を勉強し、2024年8月に卒業しました。オランダの大学で培ったクリティカル・シンキングで、これからも私なりの社会問題に対しての視点を記事で表していこうと思います。フォローといいねで応援してくださると励みになりますのでよろしくお願いします!

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