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THE令和な小説 児玉雨子「##NAME##」

今回は、児玉雨子「##NAME##」について、感想を書きたいと思います!芥川賞候補作・ジュニアアイドル・二次創作という、なんとも今らしく魅力的な言葉に惹かれて手に取りました。


あらすじ
主人公の雪那は、ジュニアアイドル。同じくジュニアアイドルの美砂乃と、仲良くしながらも、美砂乃に比べて売れないことを自覚し、母からのプレッシャーと板挟みになっていた。
そんな彼女の息抜きは、ある少年漫画。のちにその漫画の二次創作を見つけ、##NAME##(二次創作を読む際に主人公の名前を空欄にすること)のまま読んでいた……。


以前、海外の番組で、日本のジュニアアイドルの存在を取り上げているものを見たことがあったので、この話題については、気になっていました。(かなり、ブラックな部分もあるとのことだったので……。)

本作でも、そうした負の側面が描かれていました。ただ、その暴力性を批判するのではなくて、なぜ彼女たちが水着や露出の高い服を着ていたのか、どう思っていたのか、そしてどう思われ何を苦しんだのか。将来にどう影響するのか。そうした思考をたどっていくことができます。
自分と離れた人の心を少し垣間見ることができて、想像できて、考えさせられる。まさに、本の良いところだなと思いました。

そして、ジュニアイドルとして一度名前を売ってしまったからこそ、やめた後も、影響が残り続ける。タイトルのとおり、名前がキーワードになっていきます。

名前ってなんだろう、被害を語るってなんだろう、なぜ被害者が苦しむんだろう…。彼女が唯一、息つくことのできた二次創作の世界。フィクションの暴力性についても考えさせられました。

読み終わった時は、主人公の行く末に息苦しさを覚えつつも、少しの光を感じました。

名前・二次創作・ジュニアアイドル・被害、これらのワードいずれかにピンとくる方には、おすすめの作品です。
テーマも含めて、THE現代・令和の小説だなと思いました!


ここまでお読みいただきありがとうございました!


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