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夏目ジウ 掌編・短編小説集

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これまでnoteに掲載した小説をまとめてみました。
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#恋人

ありえない星の群たち【掌編小説】

ありえない星の群たち【掌編小説】

 「やっぱり、別れようと思うんだ」
 日付けが変わるか変わらないかぐらいのタイミングで裕樹は恋人のエミーにそう告げた。

 8月、真夜中の公園。
 周りは蝉が激しく鳴いていたにも関わらず、彼女は耳を塞いだようにその鳴き音は一切聴こえなかった。エミーは追いたてられるように声を出さずに静謐に涕泣した。
 時が一瞬止まったように、息を一つ吐いたエミーは声を絞り出すように言った。何となくそんな気がしていた

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オリジナルの中のオリジナルの男【掌編小説】

オリジナルの中のオリジナルの男【掌編小説】

 ※本作品2,519字数。

 勇侍(ゆうじ)は極度に女性に弱い。
 なぜか。
 赤面症で、あがり症で、緊張しいだ。 
 一見すると、好青年風なのに非常にもったいないこと他ならない。もっとグイグイ積極的に行けば、運命が変わるし、毎日が楽しくなるはず。同じバイト仲間の爽介(そうすけ)はイケメンでモテる。自分から何のアクションが無くても、女性が声を掛けてくる。勇侍は素直に羨ましいと思っている。

 勇

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地球最後の日は きっと燃えている【掌編小説】

地球最後の日は きっと燃えている【掌編小説】

※本文2,857字。

 今日が地球最後の日らしい。ウストラダムスという昔の偉い人が予言した。地球が無くなる、人類が滅亡する。考えただけで何も身動き出来なくなるほどの地獄絵図だ。そう予想を全世界に発表したウストラさんは最初に何を思ったのだろうか。
 僕は、朝3時に目が覚めた。目が覚めた瞬間、バチっと衝撃音が耳に聞こえて身体全体が激しく震えた。鼓膜が破れた音では無く、昨夜から付けっぱなしだったテレビ

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