微生物の力でカーボンニュートラルを実現! 栗田工業株式会社【NEXCHAINコーポレートピッチ】
こんにちは、NEXCHAINです。
NEXCHAINでは会員向けイベントとしてコーポレートピッチや情報共有会を定期的に行っています。
今回は、栗田工業株式会社 木澤岳人氏にカーボンニュートラル実現に向けた「微生物燃料電池」実装の取組みについてご紹介頂いた内容をかいつまんでお届けいたします。
<木澤岳人氏プロフィール>
木澤岳人(きざわ がくと)
栗田工業株式会社(2018年入社)
所属:イノベーション本部 IC部門 カーボンニュートラルプロジェクトグループ 事業企画チーム
カーボンニュートラルに資するビジネス企画担当 2022年4月より現職
世界のカーボンニュートラルへの取り組み
上の図にある通り、世界のCO2排出量は年々増加しています。CO2の平均濃度は、産業革命前の1750年が約278ppmであったのに対し、2020年は50%ほど増加し約413ppm ※1 になっています。よって世界の平均気温は年々上昇し、異常気象や、水不足、洪水といったものから、生物多様性の減少を引き起こしているといわれています。
世界各国はカーボンニュートラルを宣言しています。日本は2050 年までにカーボンニュートラルを目指すことを2020年に菅総理大臣(当時)が表明し話題になりました。
カーボンニュートラルの達成に向けて、さまざまな技術開発が進められています。もともとあった風力、地熱、太陽光による自然エネルギー発電に加え、新しい水素技術や、二酸化炭素を回収して貯留して利用するCCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)、空気から二酸化炭素を取るDAC(Direct Air Capture)などが挙げられます。
※1 出典 気象庁ホームページ
栗田工業のすごい技術~微生物燃料電池~
栗田工業もカーボンニュートラルに貢献するすごい技術を開発しています。それが微生物燃料電池です。
ある有名なSF映画のワンシーンに、車型タイムマシンの燃料タンクに飲み残しのビールやバナナの皮を入れ、そこからエネルギーを取り出して走り出すシーンがあります。私はこれを観た時はこれまでの車との違いに衝撃を受けるとともに、これが実現すると資源を有効活用できる世界になるとワクワクしたものです。
映画の公開から30年以上経ち、実際に実現したことも、まだ実現していないこともあります。栗田工業では、2022年についに飲み残しのビールからエネルギーを取り出すことに成功しました。
どうしてビールから電気を取り出せるか?というと発電微生物の力です。1988年にアメリカのある湖の底から珍しい特性を持つ微生物が発見されました。この微生物は有機物を分解して電気を作り出す特性を持っています。
電力を何らかのエネルギーに変換して貯蔵・利用する技術としてPower-to-Xが話題になっています。排水からエネルギーを取り出す技術を生み出した栗田工業ではWater-to-Xではないかと思っています。飲み残しの飲料を1リットル処理すると25〜50 Wh程度の発電量となります。これはスマホの2~5台のフル充電が可能な発電量です。
装置の販売はまだ先の話ですが、エネルギーの消費やCO2の発生を抑えなければならないと考えられていた未来が、こういった微生物の力を借りて発電することで持続可能な資源循環が可能となり、あのSF映画のようなワクワクする未来を作りたいと考えています。例えば、工場排水からも発電できますので、工場のカーボンニュートラルに貢献できます。
他の分野では、家庭やビルにおけるZEH(Net Zero Energy House)、ZEB(Net Zero Energy Building)への適用や、教育分野で子ども向けの学習ツールとしても利用できると考えています。
微生物燃料電池の今後の社会実装について
最後に、今後の微生物燃料電池の社会実装についてご紹介します。
消費の場でのフードロス問題の啓蒙、レジャー施設内トイレでの発電を検討しています。
一つ目のフードロス問題に対しては、コーヒーチェーン店やファミリーレストラン、リゾートホテルなどを対象に外食産業の店舗ごとの飲み残しドリンクを原料とした発電を考えています。例えばリゾートホテルではおもてなしのために準備する飲み物が余ることがあります。余った飲み物を再エネ電源として活用して廃棄物を削減することで、環境改善対応が難しい外食産業に対する省エネとフードロス削減、ブランディングといった価値を提供します。
もう一つのレジャー施設内トイレでの発電では、キャンプ場や遊園地を対象に、トイレ排水からの発電でエネルギー循環や再エネ電源の活用を支援します。電源の確保が難しいところでの電気提供や、今までにない発電方法による社会的PRとなります。
最後に
講演後にはこの取組みの内容を深堀し、会員企業間で議論を行いました。一例として、防災分野やさまざまなロケーションでの活用イメージや新ビジネス創生に向けた意見が出ました。
NEXCHAINの会員企業は、今回紹介した社外の人と意見を交わすコーポレートピッチや情報共有会の仕組みを活用して新規事業アイデアをブラッシュアップすることができます。
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