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キャノン全社員25,000人がDX教育―AIが実用化レベルになって、業務、雇用制度がどのように変わるのか

おはようございます。
4月14日(金)は、
国際会議G20で共同声明して閉幕、政府・企業の大きな計画発表、
そして経済動向・経営見通しなどが重なったため、
15日(土)は、重要な記事が目白押しです。

社会的課題別に、今日の主な記事を整理してみましょう。
我が国の最大の課題は、
●人口減少問題(物流の共同輸送、女性の働き方 正規へ)
●景気浮揚(大阪IR構想、高島屋16年ぶり最高益、バイト時給2.1%高)
です。

さらに、世界の共通課題では、
●環境・脱炭素化問題(日本の洋上風力30年で7倍、ラオス脱水力依存へ
三菱商事が洋上風力建設、ホンダ本社建て替えCO2排出ゼロ)
●安全保障(台湾有事、ロシア原油高)
●世界景気(4つの逆風(インフレ・金融不安・投資停滞・途上国債務)で
成長 2%割れか)
●デジタル(クラウド3強 生成AIで火花、キャノン全社員DX教育)
といったところでしょうか。

また、土曜日独自の読みものとして「読書」欄が充実しています。
なかでも、歴史上の人物の「言葉のちから」と政財界、
公的機関の「リーダー本棚」の読書志向・経験をも参考になります。

どの記事も取り上げたいところですが、
私が注目したいのは「マーケット総合」欄の小さな特集記事『大機小機』の「AIが変える業務と成果評価」です。
記事の要旨は、つぎのとおりです。

◎過去を振り返れば、
①この100年の工場の変化
(大量生産、オートメーション、ネットワークなど)は著しい。
②日本のオフィス業務は変化が乏しく生産性が低い。
その理由は
日本はインターネットによる業務システム化はしたが、
同時に組織・制度改革をしなかったためだ。

◎将来を見通すと、
③対話型人工知能(AI)を活用して、高度な知識や経験を必要とするマネジメントや知識専門職などは、専門性関連業務の大半をAIに対応させるので、生産性改善の伸びしろは、高い。

新技術の登場と活用は、技術革新による高成長への期待と仕事がなくなるという恐怖との葛藤だった。ただ歴史を振り返れば社会が変化を受容したことで、高い成長と新しい仕事を創出してきた。
④日本がインターネット同様な対応をとれば、生産性は一層劣後するだろう。デジタル化に加え、対話型AIの登場に伴うさらなる組織運営と業務分担の見直しが必要だ。

●私の見方
確かに、「デジタル技術を用いてITによる業務改革、やり抜こうとする意識改革、さらに、同時に適切な制度改革、組織改革を断行することで生産性向上、競争優位、働き方などを実現すること」がDX(デジタルトランスフォーメーション)の定義ということになります。
ここまでは、記者の考えに賛同しますが、
以下の予測記事は、疑問に感じました。

⑤「人が担う業務はよりクリエーティブさが必要なものとなり、失敗する可能性は高くなるだろう。」

●私の見方
DXとは、通常、試行錯誤を繰り返しながら、成果を生み出していくと考えるので、関係者のクリエーティブさ(=洞察力、構想力)が必要なのはわかります。

ただし、何で「失敗する可能性が高くなる」のか?不明ですね。
例えば、別紙8項の「キヤノン、全社員DX教育」では「キヤノンは国内全社員2万5000人を対象にデジタルトランスフォーメーション(DX)教育を行う。人工知能(AI)によるビッグデータ分析など、デジタル技術に関する
基礎的な知識を身に付けさせる。

現場社員が高度な知見を持つ専門人材とデジタル技術の活用について話し合えるようにして、工場の自動化など生産性向上への弾みをつける。」としています。
また、雇用制度にも言及しています。

⑥「業務の評価や報酬制度は、年功序列や終身雇用の人事体系下で長年にわたり実績を積み上げ、あるいは減点されるものから、より短期の成果を評価し報いるものに変化するだろう。」

●私の見方
日本の企業の雇用形態は、長年、わが国独自の「メンバーシップ型」雇用を行なってきました。
最近、日系グローバル企業や海外法人を持つ企業では、
欧米の主流である「ジョブ型」雇用と統一化を図る動きが強まっています。

さらに、2000年から日本企業の賃金が上がらず、米国、アジアの国々の賃金が上昇して、管理職の平均賃金では、台湾、韓国、タイ、シンガポールにも抜かれて、優良な人材を確保しづらくなっている背景もあります。

◎欧米流ジョブ型雇用の特徴

●日本で行われている新卒一括採用の「メンバーシップ型」雇用(主な特色:終身雇用、年功序列、同一労働同一賃金)と異なり、

必要とされるスキル・資格、さらに求められる経験・責任・権限、支給される給与を公表して、その能力・キャリアにマッチする人材を採用する。

したがって新卒採用という考え方がない。
すべて経験・実績ベースで評価・採用する。

●ジョブディスクリプション(職務記述書)
… 業務内容や目標、成果、責任、権限、必要な知識・スキル・経験・資格など、職務に関わる幅広い情報と自己申告(要望)を会社に提出して、
上司・人事担当者・会社役員が採用契約、契約更新時に業務評価、給与査定が決定される重要な書類である。

●ジョブディスクリプションにより、
採用時の要件が明確になる点がメリットです。

要件を明確化しておけば、求職者があらかじめ業務をイメージしやすくなるため、入社後に「こういう業務をするとは思わなかった」と後悔して
モチベーションが低下することを防いでいる。

●公平な評価が求められるなかで、企業は、
KGI(Key Goal Indicator)と呼ばれる「重要目標達成指標」、
KPI(Key Performance Indicator)と呼ばれる「重要業績評価指標」を
策定して明確化しようとしている。

●メンバーシップ型採用は、
原則、終身雇用制度であるので、会社から一方的な解雇通告は受けることはありません。
しかし、欧米流ジョブ型雇用は、
契約の契約は評価した結果、満たされずに解雇を申し受けたることがある。
企業の業績が悪化した場合、解雇またはレイオフ(従業員を一時的に解雇)することがある。

●私の考え方:
ジョブ型採用に移行する日本企業のなかには、
2000年頃に成果主義を導入して、うまくいかなかった経験がありますので、欧米流ジョブ型雇用をそのまま受け入れることなく、
メンバーシップ型雇用制度との折衷、
あるいは、どちらか選択してもらうなど、弾力的に対応しながら、
グローバル企業として欧米・アジア企業と競い合い、
ある時は提携しながら勝ち残りを果たしていくことでしょう。

本日は「AIが実用化レベルになって、業務、雇用制度がどのように変わるのか」について述べました。

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1.『大機小機』―AIが変える業務と成果評価

2023/4/15付日本経済新聞 朝刊

想像してみよう。
仕事の風景を100年前からタイムラプス撮影すると、
どんな映像になるだろうか。工場の姿は目を見張る変化だ。

大量生産やオートメーション、ネットワークの登場など、
常に変化していることが確認できる。
一方、オフィスでは変化に乏しい映像になるだろう。
日本はオフィス業務での生産性の低さが指摘される。

米国は1990年代半ばからインターネットの特性を最大限活用するため、
フラットな組織運営や情報のデジタル化を進め生産性を向上させた。

日本は既存組織や業務の運営方法に合わせてシステム導入を進めたため、
生産性向上の恩恵は比較的小さかった。

対話型人工知能(AI)が、次の大きな波を生み出す技術として注目を集めている。この技術の活用により高度な知識や経験を必要とするマネジメントや知識専門職などの関連業務の大半は、AIが担うようになる。
この変化により、多くの組織や業務のあり方が岐路に立つ。
組織内の役割(ポジション)がすべて消えるわけではないが、
業務の多くはAIが担う。

マネジメントや知識専門職は長年の経験や難関資格の取得など高い専門性が必要で、評価も高いがコストも高い。

AIの導入に対する抵抗は強いだろうが、生産性改善の伸びしろは高い。
日本がインターネット導入期と同様な対応を取れば、
生産性は一層劣後するだろう。新技術の登場と活用は、
技術革新による高成長への期待と仕事がなくなるという恐怖との葛藤だった。ただ歴史を振り返れば社会が変化を受容したことで、高い成長と新しい仕事を創出してきた。

日本に求められる変化は、ネット導入期にやり残した宿題である組織運営の変革やデジタル化に加え、対話型AIの登場に伴うさらなる組織運営と業務分担の見直しだ。

人が担う業務はよりクリエーティブさが必要なものとなり、失敗する可能性は高くなるだろう。

業務の評価や報酬制度は、年功序列や終身雇用の人事体系下で長年にわたり実績を積み上げ、あるいは減点されるものから、より短期の成果を評価し報いるものに変化するだろう。

また、支援業務の多くをAIが担当できるため、
体系化された業務知識を定期的に学び直す仕組みも求められる。
(波士敦)

2.朝刊1面トップ 大阪IR、シンガポール流
政府認定、観光消費誘う カジノに収益依存の懸念も

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

日本初のカジノを含む統合型リゾート(IR)が実現に向けて動き出した。
政府は14日、2029年の開業を目指す大阪府と大阪市の整備計画を認定した。
10年開業のシンガポールをモデルに観光消費や民間投資を取り込む。
IRを巡る国際競争は激しく、ギャンブル依存症の問題が指摘されるカジノに収益の大半を依存するリスクもある。

政府は14日、IR推進本部(本部長・岸田文雄首相)を開き、
大阪府・市が22年4月に提出した整備計画を了承した。
「日本が観光立国を推進する上で重要な取り組みだ。
我が国の成長に寄与する」。首相はこう強調した。

IRは「Integrated Resort」の略だ。
大阪では大阪湾の人工島・夢洲(ゆめしま)にカジノや国際会議場、
高級ホテルなどをつくる。29年秋~冬の開業を目指している。来訪者は年2000万人、年5200億円の売上高を見込む。

運営は米MGMリゾーツ・インターナショナル日本法人やオリックスなどで構成する「大阪IR株式会社」が担う。パナソニックホールディングスやダイキン工業など20社が出資企業となっている。

年9.3万人の雇用

「2025年国際博覧会(大阪・関西万博)、IRで地盤沈下してきた関西がやっと上向く」。関西経済界の幹部はこう漏らす。
関西圏に福井県を加えたエリアの経済効果は年1.1兆円、雇用創出は年9.3万人を想定する。

大阪府・市には事業者からの納付金などが年1060億円入り、
収入面でも大きい。

大阪IRは成功例とされるシンガポールを参考にする。
10年開業の「マリーナベイ・サンズ」と「リゾート・ワールド・セントーサ」はテーマパークや水族館、劇場などを併設。
同国の19年の外国人客は約1900万人と10年比で6割程度増えた。
IRを軸に国際観光都市の地位を確立した。

大阪府・市も「世界中の人が訪れたくなる都市型リゾート」を目指すが
実現への課題は多い。

1つは収益構造だ。
IRは施設全体の収益の柱にカジノを据えるケースが一般的で、
大阪も売上高の8割をカジノで稼ぐ戦略を描く。

政府はカジノができる区域の床面積をIR全体の建物床面積の「3%以内」と
定めている。収容人数は1万1500人となる。
大阪府・市はカジノ施設への来場者数を年1610万人と予想する。
単純計算で1日あたり約4万4000人。満員の客が毎日4回総入れ替えする計算になる。
安田女子大学の大谷咲太准教授は「施設の収容力が不足している」と話す。「カジノに依存した運営では成長を持続するのは困難だ」と語る。

シンガポールも新型コロナウイルス流行前はカジノが収益の7割を占める構造だったが、脱・カジノ依存に取り組む。

28年までに総額9000億円規模を投じ、新たなアトラクションや水族館の拡張、ホテル棟の建設を計画する。

国際競争が激化

課題の2つ目はギャンブル依存症への対策だ
シンガポールでは国内客に1日150シンガポールドル(約1万5000円)の
入場税を課す。
国民が頻繁に来場するのを防ぐ狙いで、国民のギャンブル中毒は大きな社会問題になっていない。
日本は国内客の入場回数は週3回、28日間で10回までに制限する。
外国人は入場無料で、日本人からは1回6000円を徴収するが、
負担はシンガポールよりも軽い。

3つ目はIRの国際競争の激化だ。
カジノの知名度は米ラスベガスが高いが、アジアでもシンガポール、
マカオ、韓国などが先行する。
タイもIR施設の整備に向けカジノ合法化への検討に入った。

コロナ禍から観光客が回復するなか、各国はIRなどでの誘客に力を入れる。日本のIRが競争力を持てるかは見通しにくい。
地域の理解も大切になる。

政府が21年10月~22年4月にIRの候補地を募ったところ、整備計画を提出したのは大阪と長崎県だけだった。

横浜市や札幌市なども誘致を目指したが住民らの反対もあり断念した。
大阪はIR推進を掲げる地域政党・大阪維新の会が9日投開票の大阪府知事・市長の「ダブル選」を制し、経済界も後押しする。

長崎の計画は今回、認定を見送った。

継続する審査は長期化も予想され、国内の「第2のIR」は見通せない。
政府はIRに関し当面は最大3カ所を認める方針だが、
2次募集は「現状ではまったくの未定」(観光庁担当者)だ。

政府は30年に訪日客数を過去最高だった19年の約2倍の6000万人に増やす
目標を掲げる。観光立国の中核に据えるIR政策を軌道に乗せられるかが
重要になる。
(金子冴月、掛川悠矢、河野祥平)

3.1面 日清製粉系、海で共同輸送 陸上を代替 運転手不足補う

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

海上輸送での連携が進む(名古屋港で貨物を積み込むトラック)

日清製粉グループ本社は海上での食品の共同輸送に乗り出す。
ハウス食品やカゴメと連携し、中部・北陸地方と北海道の間を同じコンテナに貨物を混載して運ぶ。
物流業界では2024年4月にトラック運転手の時間外労働時間の規制が強化され、慢性的な人手不足に拍車がかかるとみられている。
輸送時間はかかるものの海上で安定供給できる物流体制を整える。

24年4月からトラック運転手の時間外労働が年間960時間までに規制され、
運転手が不足する「物流業界の2024年問題」(総合2面きょうのことば)が懸念される。同じ量の貨物を運ぶには運転手を増やす必要があるが、
鉄道貨物協会は28年度に運転手が27万人不足すると試算する。

カゴメと子会社の日清製粉ウェルナがこのほど、敦賀港と苫小牧港の間で荷台だけ積めるRORO船での共同輸送を実施した。輸送手段の一部を船に置き換えることでトラック運転手の労働時間を削減できる。

日清製粉ウェルナは従来、ほぼ毎日鉄道で中継地点まで貨物を運び、
最終的にトラックで倉庫まで届けていた。
共同輸送により鉄道輸送の頻度は2週に1回になった。

鉄道で2日かかっていた物量を3日かけて運ぶことになるが、
トラックを通じた配送頻度を減らせる効果がある。
ハウス食品とも今後、共同で海上輸送する。
両社の貨物をコンテナに混載し、中部地方から北海道まで船で運ぶ。

日清製粉ウェルナは、ハウス食品やカゴメなどと共同出資する物流会社
F-LINE(東京・中央)を通じてトラックや鉄道での共同輸送を実施してきた。新たに海上輸送も物流効率化の有力な選択肢に育てる。

4.1面 洋上風力、30年に7倍 G7環境相会合調整 太陽光は3倍強

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

主要7カ国(G7)は気候・エネルギー・環境相会合の共同声明に再生可能エネルギーの導入目標を明記する方向で調整に入った。

洋上風力発電は2030年までに7カ国合計で1.5億キロワットに引き上げる。
21年実績の約7倍で、ウクライナ危機を受けて導入スピードを加速する。

太陽光は10億キロワットと、3倍強にする。
曲げられるため建物の壁面にも貼れる「ペロブスカイト太陽電池」や、
浮体式の洋上風力発電などの開発・実用化を進めるといった具体策も
声明に記す。

争点となっている石炭火力発電所を巡っては欧州が廃止時期の明記を求めている。共同声明案では「1.5度目標に整合する」と記述する方向で調整を進めている。15日から札幌市で開く閣僚級会合で詰めの議論に入る。

議長国の日本は30年時点で発電量の19%を石炭火力に頼る計画を持ち、
年限の明示には難色を示している。
温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」で掲げる産業革命前からの気温上昇を1.5度以内にする目標と整合性をとるとの表現で妥協案を示した形だ。

天然ガスの生産設備への投資を許容する考え方を共同声明に盛り込むことでも合意する見通しだ。

22年までの声明では一致できず、明記していなかった。
石炭火力よりは少ないがガス火力も二酸化炭素(CO2)を排出するため
ガス生産に慎重な見方があったためだ。

ウクライナ危機による資源価格の高騰などでG7がまとまった格好だ。
今後も新興国は経済成長に伴いエネルギー需要が拡大するとみられる。
ガス投資が乏しいと供給不足となる懸念がある。

ガスを安定供給することが、南半球を中心とした新興・途上国「グローバルサウス」の成長と脱炭素化の両立につながると判断した。

天然ガスへの投資は国際的な気候変動目標の達成を遅らせるとの指摘もある。電気自動車(EV)の電池などに欠かせない重要鉱物の安定供給に向けた行動計画もまとめる。

G7として1兆円超を財政支出し、鉱山の共同開発や使用済み製品から鉱物を回収・再利用する取り組みなどを推進することを確認する。

5.世界景気、4つの逆風 インフレや金融不安今年「成長2%割れも」 G20閉幕、結束示せず

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

【ワシントン=三島大地】世界景気の不確実性が高まっている。
インフレと金融不安による信用収縮が実体経済の下押し圧力となり、
途上国の過剰債務問題も火種としてくすぶる。

国際通貨基金(IMF)は2023年の世界成長率の2%割れも視野に入れる。
景気後退懸念を前に、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議は結束を示せずに閉幕した。

「今年の世界成長率が1%に減速する確率は15%」――。
IMFは23年の世界の成長率見通しを1月時点の2.9%から2.8%に小幅修正した11日、別の下振れシナリオをまとめた。

金融不安の影響で強い信用収縮や株安、ドル高、消費者心理の悪化が重なれば、世界の成長率を1.8%、下押しすると試算した。
2%割れは25%の確率と、より現実味を帯びる。

1970年以降、世界の成長率が2%を下回ったのは5回しかない。
IMFチーフエコノミストのピエール・オリビエ・グランシャ氏は「経済成長が低迷したまま、金融リスクが高まる中でも、インフレがまだピークに達していない厄介な時期に突入している」と指摘する。

世界景気の不安は相互に絡み合っている。
根底にあるのは長くつづいた金融緩和からの転換だ。
米連邦準備理事会(FRB)をはじめ世界の中央銀行は未曽有のインフレを
抑え込むため急ピッチに利上げを進めてきた。

厄介なのは、
急速な利上げにもかかわらずインフレ率が高止まりしていることだ。
IMFはエネルギー価格の下落を背景に、世界のインフレ率は22年の8.7%から7%に減速するとみるが、中央銀行が重視する基調的なインフレ率は
「もっと遅いペースで鈍化する」とみる。

急速な利上げは金融不安を増幅しかねない難しさもはらむ。
米地銀シリコンバレーバンク(SVB)は、保有する米国債の価格が急速に下落(金利は上昇)したことで財務が悪化し、3月10日に経営破綻に追い込まれた。大口預金に偏っていたSVB特有の問題だと強調するが、
利上げで保有債券に含み損を抱える構図は他の銀行にも共通する。

信用収縮はすでにデータにあらわれている。
FRBによると、3月29日時点の米小規模銀の企業向け貸し出しは7575億ドルと2週間で4%減った。
融資態度の厳格化や貸出金利の上昇が企業活動に影を落としはじめている。

商業用不動産向け貸し出しは2%減少。
アメリカン・バンクラプシー・インスティチュートによると、
米倒産も21年4月以来の水準に増えている。IMF幹部は「インフレ下で金融リスクが高まる非常に危険な段階」と指摘する。 

米利上げは財政余力の乏しい低所得国も揺さぶっている。
利上げに伴って利払い負担が増え、ドル高でドル建て債務が膨らむ二重苦に陥っている。コロナ禍以降、ガーナ、ザンビアなど多くの最貧国がデフォルト(債務不履行)に追い込まれた。

最貧国の債務返済額は22年に前年比3割増の620億ドルと、
過去最多のペースで膨張している。

IMFのゲオルギエバ専務理事は「非常に留意しなければならないのは、
低所得国が特に脆弱(ぜいじゃく)であるということだ」と警鐘を鳴らす。

金融不安下で途上国債務問題が再燃すれば、信用収縮が一気に進みかねないリスクをはらむ。

複合的な不安が世界を覆うなか、13日に閉幕したG20は5会合連続で共同声明を見送った。議長国インドのシタラマン財務相は議長総括を含め、
とりまとめに向けた調整をしなかったと明らかにした。

日本が議長国を務めた主要7カ国(G7)会議では、危機時に協調して対応することを盛り込んだ共同声明を採択した。
ただウクライナ侵攻を続け、長期化するインフレの原因をつくったロシア抜きの枠組みに実効性があるかは疑問符がつく。

6.クラウド3強、生成AIで火花 アマゾン参入発表新興勢にも覇権の芽

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

【シリコンバレー=奥平和行】IT(情報技術)市場をけん引してきたクラウドコンピューティングの分野で、文章や画像などを自動的に作る生成人工知能(AI)が新たな競争軸として浮上してきた。

最大手の米アマゾン・ドット・コムが13日に参入を発表し、
「3強」の戦略が出そろった。

ただ、新興勢の伸長も目立ち、
意外な企業が覇権を握る下克上の可能性もある。

「大規模言語モデルや生成AIは当社が今後何十年にもわたって『発明』を続けていくための中核をなす分野であり、重点的に投資していく」
アマゾンのアンディ・ジャシー最高経営責任者(CEO)は13日に公開した
株主に宛てた年次書簡でこう強調した。

同日には
傘下の米アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)が生成AIを利用したソフトを開発するための基盤サービス「アマゾン・ベッドロック」の提供を始めると発表。

AWSの法人顧客が自社のサービスに文章や画像の自動生成といった機能を組み込みやすくする。

ジャシー氏は長年にわたってAWSのトップを務め、
2019年のインタビューで
20年代をけん引する技術について尋ねると
「事実上すべてのソフトが何らかの形でAIや機械学習の機能を内蔵するだろう」と語っていた。

幅広い業種や規模の企業を対象としたベッドロックの提供により、
有言実行を果たす格好になる。

だが、外部環境の変化が背中を押した側面もある。

生成AIは22年に米オープンAIが「Chat(チャット)GPT」を公開したことで注目が一気に高まった。

クラウドでアマゾンを追い上げる米マイクロソフトが1月にオープンAIと資本・業務提携を強化することで合意。
米グーグルも2月、独自開発した生成AIの外部提供を発表している。

アマゾンの新サービスの発表によりクラウド3強の生成AIの領域における
戦略がひとまずは出そろった格好だが、違いも浮かび上がっている。
ひとつは各社が法人顧客に提供する生成AIの「中身」だ。

先行したマイクロソフトが急成長するオープンAIを前面に押し出す傾向が強いのに対し、グーグルは現時点では自社開発した技術を優先する姿勢が目立つ。一方、AWSは「ひとつの技術では多様な顧客のニーズに応えきれない」(バイスプレジデントのバシー・フィロミン氏)として、
自社開発と外部から供給を受ける技術を並走させる。

具体的には自然言語処理に強みを持つイスラエルのAI21ラボや、
簡単な言葉を入力するだけで画像を生み出すことができる
「ステーブル・ディフュージョン」を22年に公開して注目を浴びた
英スタビリティーAIと協力する。

さらに米アンソロピックとも組んだ。


アンソロピックはグーグルやオープンAIで経験を積んだ技術者が21年に
設立し、2月にはグーグルから出資を受けたことも明らかになっている。

グーグルの出資先になったアンソロピックがAWSとも組んだことは、
この分野がまだ流動的で、競争の行方が見通しづらいことを物語る。

クラウドは現在、
多くの企業が製品やサービスを提供するためのプラットフォーム(基盤)となっているが、ITの歴史を振り返ると、古いプラットフォームは定期的に
大きな技術革新により無効化されてきた。

グーグルの検索サービスや米メタのSNS(交流サイト)が様々な機器を通じて使えるのが好例だ。

ブームの感もある生成AIに対してはクラウド大手の幹部から
「過去最大級の技術革新」といった賛辞が相次ぐ。

各社は新興勢への出資や提携を通じてその果実の取り込みを急ぐが、
新興勢の側には大手の軍門にやすやすとくだる気はない。
クラウド3強の生成AI戦略の背景からは次の覇権争いの芽が見え隠れする。

7.Deep Insight台湾有事、語られぬ結末

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

中国軍は4月8~10日、台湾を取り囲むように演習した。
ペロシ米下院議長(当時)が訪台した2022年8月の演習よりも、
規模を抑えた。24年1月の台湾総統選を控え、台湾世論の強い反発を招くのを避けようとしたようだ。

もっとも、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席は台湾統一の野心を
鮮明にしており、長い目でみれば、緊張は高まらざるを得ない。
ところが後にふれるように、この問題をめぐる日米の議論には深刻な盲点がある。

中国による台湾侵攻リスクについてワシントンの当局者や識者にたずねると、相反する2つの説が聞かれる。
ひとつは27年までにも侵攻しかねないとの悲観論だ。

中国軍が増強され、侵攻能力を同年までに持つとみられることが根拠だ。
いったん能力を手に入れれば、いつ侵攻があってもおかしくないという
発想である。

これと対極なのが、習氏は非軍事手段による統一をあきらめたわけではないとの見方だ。軍事圧力や情報工作、経済交流などで台湾世論を揺さぶり、
じわりと統一にもっていく。
そんな選択肢を完全に捨てたわけではなく、
侵攻は不可避だと決めつけるのは誤りだという主張である。

前者の「27年説」は、軍事力を重んじる米軍の現役・元幹部に多い。
習氏の意図に注目する後者は、中国の専門家などが説く。

最終的に決めるのは習氏であり、後者の分析は理にかなっている。
ただ、リーダーの計算はすぐに変わりうる。米軍や自衛隊は万が一、
早期侵攻があっても対処できるよう備えるのが賢明だ。

こうしたなか、中国の台湾侵攻を想定したシミュレーションや机上演習が
22年以降、日米のシンクタンクなどで相次いでいる。

米軍が参戦し、日本も攻撃を受けて最終的に介入するシナリオが多い。
それらの結果をおおまかにまとめれば、中国軍は台湾を占領できず、
大打撃をこうむる。
だが、米軍と自衛隊にも甚大な被害が生じるというものだ。

米戦略国際問題研究所(CSIS)が1月に公表した24通りの机上演習の結果も、似たような内容になった。
大半のケースで中国軍は台湾を制圧できない。
このうち基本シナリオに基づく平均値によると、
中国は航空機155機、艦船138隻を失う。

米軍も空母2隻を含めた艦船十数隻、航空機270機、自衛隊は航空機112機、艦船26隻を破壊された。
公表されていないものの、同じようなシミュレーションは米軍や自衛隊内でも重ねられている。
台湾有事にどう対応するか、日米両政府内でも協議が進む。

目の前にくすぶる危機から目をそらさず、対応を検討するのは大切だ。
しかし、いまの議論には、決定的に欠けている重要な視点がある。

中国の侵攻に伴う台湾有事は、
長い危機のごく始まりにすぎないという点である。

仮に、台湾を制圧できなくても、中国があっさりあきらめることは考えづらい。何年もかけて軍事力を回復させ、再び統一を試みると想定すべきだろう。

だとすれば、1941~45年の日米戦争に例えれば、
台湾有事は真珠湾攻撃のような始まりにすぎないということになる。

侵攻の行方がどうなろうとも、中国と日米などは少なくとも数年以上、
戦時ないしは準戦時状態に置かれてしまう恐れがある。

台湾有事(フェーズ1)への対応を練る際には、
フェーズ2以降のシナリオも予測し、備える必要がある。

だが、日米両政府や米軍、
自衛隊内でそうした議論が深まっている形跡はない。

では、フェーズ2以降はどうなるのか。

中国が台湾占領に失敗する場合と、
成功するケースに分かれる。

多くの変数があるが、日米両政府内外の識者らの見立てをまとめると
次のようになる。

占領に失敗しても中国が統一を断念することはなく、軍の立て直しを図りながら、別の手段で台湾に圧力をかけ続ける可能性がある。

「サイバー攻撃やテロ、要人暗殺、情報戦……。
中国はさまざまな工作を仕掛け、台湾との緊張が和らぐことはないだろう」(元米国防総省幹部)

中国政治の専門家には、別の筋書きを指摘する向きもある。
侵攻が大失敗に終わり、多くの戦死者が出れば、中国内で共産党への批判や不満が噴出。共産党体制の安定が脅かされ、揺らぎかねないという説だ。

これに対し、中国に米軍が敗れ、台湾占領を阻めなかった場合、
アジアには極めて厳しい現実が待っている。

中国は台湾支配を確実に固めるため、周辺にも一段と軍事勢力圏を
広げようとするだろう。
日本の南西諸島に揺さぶりを強め、米軍駐留を終わらせようとしたり、
米軍に基地使用を認めないよう、フィリピンに圧力をかけたりすることもあり得る。

米軍が退き、中国の軍事優位が強まれば、東南アジアや南太平洋でも中国の影響力はより深まる。
世界の先端半導体の約9割を生産する台湾を支配すれば、
中国はハイテク競争でも有利になる。

これらは、台湾有事がもたらす変化の一部にすぎず、世界には予測できない影響がおよぶ。
だからこそ、侵攻を防ぐことに全力を尽くさなければならない。

米国と同盟国は結束し、中国への抑止力を高める。
台湾も自衛力を格段に強める。それにより、侵攻は極めて難しいと中国に
思わせ続けることが、唯一の最善策だ。

8.キヤノン、全社員DX教育
AIの基礎、本社や工場2.5万人に 現場の提案力を底上げ

2023/4/15付 日本経済新聞 朝刊

キヤノンは工場設備の自動化など生産性向上を進めている
キヤノンは国内全社員2万5000人を対象にデジタルトランスフォーメーション(DX)教育を行う。

人工知能(AI)によるビッグデータ分析など、デジタル技術に関する基礎的な知識を身に付けさせる。

現場社員が高度な知見を持つ専門人材とデジタル技術の活用について
話し合えるようにして、工場の自動化など生産性向上への弾みをつける。

まず年内に4000人を対象に教育し、徐々に受講人数を増やす。
オンライン教育のアイデミー(東京・千代田)が手掛ける
「DXリテラシー研修」を就業時間内に受講させる。

解説動画が中心の10時間程度のeラーニング方式で、デジタル活用の方法といったDXの基礎を学ぶ。
本社勤務の総務や経理といった間接部門、生産現場の全社員が対象になる。

キヤノンが目指すのは、現場主体のDXを進めて生産性向上につなげることだ。工場で働く社員もデジタル化についての理解を深めることで、製造工程や装置にどういった技術を使えばいいか、現場目線から改善案や課題を挙げやすくなる。

データサイエンティストなど専門人材と現場社員が話し合える土壌を整え、デジタル技術の具体策を協議できるようにする。

生産ラインの遠隔監視用にセンサーやカメラをどう配置するか、
AIで解析したデータをどう読み解くかなどが候補として考えられる。

目視で行っていた製品の傷やほつれ、印字不良などもAI技術で見分けられるため、検査や点検の業務を省人化できる。
MR(複合現実)技術を使った遠隔支援も導入し始めた。

これまでデータ解析やソフトウエア開発などの人材育成を先行させ、
AI人材については早期に1500人育成することとしてきた。

上流の専門家だけでデジタル技術の利用法を検討しても、
現場が抱える問題の解決策につながらないこともある。
専門家から一般社員へとDX教育の対象を広げて対応する。

背景にはグローバル競争下の強い危機感がある。
同社は大分県など国内工場を主力拠点としている。
コロナ禍でサプライチェーン(供給網)が分断されたことの教訓や経済安全保障の観点から、将来的にさらなる国内生産回帰も視野に入れる。

ただ、ドイツのシーメンスや韓国サムスン電子など競合に勝つには、
人手不足や物価高の中でも国内工場の生産性をさらに高め、
コスト競争力を引き上げる必要がある。

会社の隅々までデジタル化の波を行き渡らせ、DXを一気に進めることが実現への布石となる。
キヤノンは生産効率を磨き上げてきた。御手洗冨士夫会長兼社長最高経営責任者(CEO)は、1990年代に作業員が複数の組み立て工程を受け持つ「セル生産」方式を導入。2010年代には、人と機械が協働する「マンマシンセル」方式に進化させた。部品や製造設備も内製化するなど自動化技術を強化する。

ただ、既存の延長線上では、生産合理化が難しくなってきた。
DX導入を核にして、強みである生産効率を次の段階に引き上げる。


現場力の底上げに向けて、DX教育を取り入れる企業の動きは広がりつつある。東芝は国内のグループ従業員約5万7000人が対象となるDXの研修プログラムを設ける。

国内全従業員数の約85%に当たり、DXへの知見を底上げする。
東芝もデジタル技術の活用を軸とする成長戦略を掲げている。

日立製作所は23年度に約3万人の従業員が高度なDX関連の技術研修を受ける見通し。130の研修コースのうち、約半数が製造現場の従業員向けのコースだ。画像解析AIや自動化技術などを学び、製造現場の効率化につなげてもらう。
(為広剛)

ご精読、どうもありがとうございます。
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就活モチスキゼミコーチ 山内康義


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