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独りで活きると書く「三島独活(みしまうど)」が教えてくれる、独りじゃ活きられへんことの愛おしさ/中井優紀さんインタビュー

4/23(土)新・朝市チケットはこちら

こんにちは!新・夜市朝市編集スタッフの小玉です。
今回の新・夜市朝市出店者インタビューは中井優紀さんです。
全国で最後の1軒となった「三島独活(みしまうど)」農家の中井さん。三島独活栽培を始めた背景、喜びも痛みもシェアする「株主制度」、そこから伝えたい想いを伺いました。

左:中井優紀さん

ー中井さんのプロフィールを教えて下さい。

現在は「三島独活農家」と「地域コミュニティでの活動」の大きく2つを行っています。三島独活とは伝統野菜で、夫と2人で栽培しています。江戸時代から続く伝統農法で栽培していて、恐らく日本最古の促成栽培(季節を早く栽培する農法)を使っています。全国でうちが最後の1件です。
もう1つは一般社団法人みずとわでの地域コミュニティ活動です。地域のいろんなメンバーがコアとなって、その中でエネルギーや食べ物といったライフラインを作る活動をしています。コミュニティの人数は大体30人ぐらい、緩やかな人を含めるともう少しいますね。

ーなぜ農家を始めようと思われたんですか?

今住んでいる家が夫の実家で、戻ってきたのがきっかけですね。最初は週末だけ農業をしていたんですよ。その頃に高速道路のインターが近くにできて、その影響からか、収穫直前に行き場を失った動物に荒らされてほぼ収穫ができませんでした。そして行政や企業からの補償もなく、泣き寝入り。そのとき腹が立つとかよりも、「こういうことって今までずっとあって、どっかの誰かや何かが皺寄せを受けていたんだろうな、それを知らないで過ごすのって気持ち悪いな」って思って。良くも悪くも自分達のしたことが自分に返ってくる生き方の方が気楽かなって思ったんです。それで地域に密着した仕事やろうって思っていたところに、村で最後の1件だった独活農家さんが辞めるって言ったから、じゃあやるかって言って、ノリで(笑)。夫も会社辞めてたからノリで始めたけど、めっちゃ手間はかかるし全然食えへんやんって、始めてから知りました。みんなめっちゃ応援してくれてるし引くに引けへんなって感じで今に至ってます。

今回出店される商品についても詳しく教えてください。

三島独活を応援する株主の会の権利を販売します。
具体的にどんなものかというと、株主さんには1株の独活を5,000円で保有してもらい、収穫できた独活をお渡しするんです。ただそれだけではなくて、実際に生産のお手伝いに来てもらったり、株主さん向けのコミュニティで交流したり、イベントとかをしてみんなで集まったりしています。その年の収穫量に応じて1株当たりお渡しできる独活の量は変わって、今年のように不作の場合は、少ない量になったり、B級品も含めたお渡しになる場合もあります。そういった、採れる喜びも採れない痛みもみんなでシェアすることが特徴です。

三島うど

ーなぜそれを始めようと思われたんですか?

伝統農法はとても魅力的だけど、金銭的な面でいうとハイリスクローリターンなので、失敗して続けられなくなることを避けるために(株主の会を)始めました。
2017年から5年間株主制度をやってみて思ったのは、収入面ももちろんですけど、それ以上にチャレンジできる土壌が最低限保証されるのと、チャレンジすることを応援してくれる人がいることがかなり大きいなという感覚です。
とにかく株主さんは三島独活への愛着がものすごく生まれるんです。その年の収穫量でリターンが変わってくるんですけど、初収穫の時とか株主さんたちと一緒に、めっちゃ泣く、みたいな。独活って死ぬほど美味しいかって言われると、まぁちょっと個性ありよね、って感じなんですけど、みんなの思い入れがやばすぎてうまー!ってなるんですよ。そんな感じでかわいがっていただいてます。

ー株主になられる方ってどんな特徴があるんですか?

地域としては茨木市周辺の方が多いけれど遠方の方もおられます。農作業のお手伝いに来てくれる人も多いです。宣伝はしていないので、株主さんの紹介で広がっています。
あとは防災の観点で来ていただいてる方も多くて。基本今の日本の農業って化学肥料とか農薬とか、海外からくるものに依存していることが多い。ところが今、気候変動の影響で作物がなかなか安定的に育たない上に、肥料や資材の原材料が輸出制限などで、来年からの肥料と資材の価格高騰と不足が問題になっています。そうなると、地域の資源だけで農産物を作れる技術もかなり重要になります。これから激変する環境の中でも、自分達の食を守るって言う意味でも、うちに限らず農家と繋がり、気候変動や資源枯渇に適応する技術を応援することはとても重要だと思います。 

ーこれまでの話を聞くと、農作物が届かなかったとしても批判を受けない、稀有なコミュニティですね。なぜそのようなコミュニティになっているのでしょうか?

ひとつは私たちが全力を尽くしているっていうのを見ていただいてるのが大きいと思います。日々考えていることや、取り組んでいることをこまめに発信しているので、ベストを尽くしての結果だと受け入れて下さっています。
あとは、独活をたくさん食べることが目的でなく、私たちのチャレンジを応援する目的で株主になっていただいている方が多いので、失敗も含めて温かく見守ってもらっています。あとは単純にみんな仲がいいですよね。友達でもある、って感じかな。
けっこう面白いんですけど、独活をお客さんのとこに配達したら、今年もありがとうってみなさん色々くれます(笑)。今年は不作なので、お届けができないと飲食店さんに言ったら、うどがなくても例年と同じ金額払うから頑張って、値上げしてほしいと言われました。全部さらけ出してるので、みなさん親身になってくれています。

ー確かに面白い関係性ですね。お客様に、この商品にはどんな価値があると伝えたいですか?

今の株主さんに「しんどいことも一緒に背負うことが嬉しい」って言われたんです。商品っていいところの側面だけ見る、見せようとすることが普通だけど、しんどい、苦しい、もうあかんって時を一緒に共有できることに喜びを感じるって言ってくれています。
うどって「独」りで「活」きると書いて「うど(独活)」って読むんですけど、私は独りじゃ活きられへんってすごい愛おしいことだって伝えたくて三島独活を作ってるんです。独りじゃ活きられへん独活を、みんなで応援することに価値を感じてもらえたらいいかな。なので一人一人の繋がりが強くて、株主さん同士も仲良かったりするんですよ。私がコミュニティ作ってきて思うのは、一緒に働いて一緒にご飯食べたら大抵誰とでも仲良くなれるんですよ。それを何回するかってだけの話かなと。私は別に人付き合いがうまいわけでもないし、うちの夫とかもめっちゃ人見知りでコミュニケーション能力に欠けるんですけど仲良くなれてます。
不安定で作るのも難しくてめっちゃ手間がかかって、みんなの応援がないとどうにも続けられない、だからみんなで応援して痛みも喜びも分かち合うんだ、っていうのが三島独活の価値だと思ってます。

ー三島独活を通して仲間になるんですね。素敵なお話ありがとうございました!

インタビュアーあとがき

最初はノリで始めたという中井さん。周りの応援があって今に至っていると笑いながら話す姿こそ、「独りじゃ活きられへんことは愛おしいこと」というメッセージを伝えてくれているように感じました。


中井さんは4/23開催の『新・夜市朝市』に出店します。皆さんも直接中井さんに想いを聞いてみませんか。


新・夜市朝市とは?

新・夜市朝市(オンラインマーケット)の流れ

次回は4/23(土)9:00より開催!

入場(無料)のお申し込みはこちら
新・夜市朝市について詳しくはこちら

三島独活株主の会
facebok:https://www.facebook.com/sendaijifarm.380
新・夜市朝市で販売するもの:江戸時代から継承する伝統農法で栽培する三島独活(みしまうど)を応援する株主になる権利

<NPO法人ETIC.とは>
ETIC.は、社会の未来をつくる⼈を育むNPO法⼈です。1993年の創業以来、私たちの⼿がける実践型インターン シップ や起業⽀援プログラムへの参加を通して、1600⼈以上が起業しました。これからも企業・⾏政・NPOといった多様なセクターを巻き込みながら、挑戦したい⼈を⽀える仕組みづくりを続けていきます。

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