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忘れもしない、地獄の待ち合わせ。女子中学生12人名古屋駅円陣事件
私が経験した、忘れもしない
名古屋駅で起きた、円陣事件。
先にお伝えしておくと、一見大ごとに見えて、全くたいした話ではありません。
暇で暇で、へそがひっくり返りそうなくらい暇なとき(どんなとき)に読んでいただけたら嬉しいです。
──中学3年の頃。
当時、ニコニコ動画で活動していた"しゃむおん”という歌い手の大ファンだった私。
アルバム発売を記念して名古屋で行われた、握手サイン会に参加しました。
芸能人に会うことはおろか、ライブにも行ったことのなかった田舎者の私にとって、それは人生初めてのビッグイベント。
一人で参加する勇気はない。けれど不登校で学校の友達がいない。
そこで事前にアメブロ内の掲示板で、同じ会の参加者を集うページを見つけ、彼女らと一緒に会場へ向かうことにしました。
当日の待ち合わせ場所は、JR名古屋駅構内の銀時計前。
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時間より少し早く到着すると、6、7人それらしき女の子達がいます。
「初めまして、しゃむくんの握手会の…?」
声をかけながらその輪に近づいて行くと、それぞれが静かにこくんと頷くだけ。
絶妙に気まずくなり、「今日はよろしくお願いします」とみんなの顔色を窺うも、蚊の鳴くような声で繰り返される、「よろしくお願いします」と会釈。
…どうしよう、気まづい。非常に気まづい。
何なんだこのお通夜のような空気は。
そこに集まったのは、全員が初対面の中学1〜3年生くらいの女子たち。
思春期真っ只中、人見知り全開のお年頃です。
どうやら全員が極度に緊張しており、手持ち無沙汰になっていたようでした。
掲示板での盛り上がりがまるで嘘のよう。
それ以上会話は弾むことなく、10人弱の女子たちが無言で、凍りつくように直立不動に。
その異様な空気に戸惑いながらも、ひとり、またひとりと参加者は加わり、気がつけばわたしたちは綺麗な円形になっていました。
![](https://assets.st-note.com/img/1675966367199-7XoURjMkJS.jpg?width=1200)
ハタから見ればそれは完全に、何かに取り憑かれた闇の儀式のよう。
多くの人が行き交う、午前中の名古屋駅。
通行人は見てはいけないものを見るような、ピンクのきりんを見た時のような目でジロジロと、綺麗な円を作った私たちを見ていきます。
誰ひとり円陣を作りたいなんて思っていないんです。迷惑行為でも目立ちたいわけでもないんです、すみません…助けてください……。
もはや何かのパフォーマンスであってほしい。
隣の子に話しかけることならできそうだけれど、この状況で一人にだけ話しかけるのはおかしい。
喋ったら銀時計が爆発するんじゃないか。
たぶん、集まる人が3、4人なら、「どこから来たんですか?」とラフな感じで話しかけられたのだとイメージします。あくまでイメージですけど。
人数が若干多かった…と、心の中で、誰に対してなのかわからない言い訳を繰り返します。
さまざまな思考が脳内を駆けめぐるも、悲しきかな私も人見知りの一味。
お願い、誰か話を切り出して!と、そこに居た全員が、切に願っていたのではないでしょうか。
呆然と立ち尽くすこと15分。体感的には1時間。
円陣の中で一番活発そうな女の子が、「そろそろ行きましょうか」と発してくれた一言で、マネキンと化していたみんなの動きは自由に。
ぶじ、無言の待ち合わせ地獄から解放されたのでした。
その日がほとんど初めてだった名古屋。
田舎から着いてきてくれた母が、私と別れて少しして銀時計前を通り、その光景を目にしたようでした。
イベント後再会すると、「見たよ。みんなで円陣組んでて、怪しすぎたよ」と大笑いされました。
こちらは真剣そのものでした。
あんなに真剣に無言だったことは、後にも先にもありません。
その後、会場に向かう道中は、歩きながら自然と隣になった子と話をし、整理券番号順で列の前後になった人とのほうが仲良くなったり。まあそんなものですよね。
イベントではお目当てのご本人を目の前に、生でも変わらない透き通る、けれどその中に芯のある声に痺れあがりました。
少しお話をし、手紙を渡し、サインをもらう手が震えるくらいに感動したことを覚えています。
今思うと、普通に声をかければよかった。
でもかけられなかった。若かった。
あのとき一緒に黒魔術した皆さん、お元気でしょうか。
わたしはこれをひとり、名古屋駅円陣事件と呼んでいます。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
へそがひっくり返っている方もひっくり返っていない方も、ありがとうございました。
2023.2/5
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