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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 6月12日~6月18日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。やっといつもの日常が戻ってきました。今週は水曜日からプライベート・仕事と忙しくなりますので、それまで作業をがんばります!

6月12日 sun

昨日まで少し体調を崩していたのだけど、なんとか持ち直して、近場に吟行に行きました。
以前ゆかりがあった場所の近くにあって、いつか行ってみたかったJAXAに行きました。

駅前!松本零士さん。
これは……なんぞ……
宇宙トマトのソースがついたカレーに舌鼓。

わたし自身はいつか行きたいと思っていた宇宙研究所だったのだけど、趣味で出先では必ずスタンプラリーのスタンプを押していて……。
いつもは子どもたちに一緒くたになってしまうから手帳に押していたのですが、今回は教えてくれる子どもさんに助けられながらスタンプラリーをしていました。
ロケットの発射・はやぶさ・隕石など、気になる展示が多々ありました。帰り道に上野でのこと、前橋でのことなどを詩にしていました。新作三編。すっきりとしました。
帰ってきてから新たに詩の企画を始めました。また詩のオンライン合評会の主催・司会をさせていただきます。
オンラインでお会いできる皆さま、楽しみにしております!

・雪柳あうこ『追伸、この先の地平より』土曜美術出版社出版販売

静かに強く燃える焔があるとすれば、それが雪柳さんの詩かもしれないなと思います。語り手の「あなた」に対するあたたかなまなざし、愛するということ・愛されるということ・愛し合うということ。
それは普遍的に書き手が持っている、詩のことばになる前のことばのふくいくさだとわたしは思います。
初読の時に震えてしまった。こんなにすごい書き手がいるんだということに衝撃を受けました。まどろんでいるようで、強く光を放つ言葉たち。
雪柳さんとはインターネットでの付き合いがあるものの、先日の文学フリマでお会いできなかったことが心残りです。
また絶対にお会いしましょう!

6月13日 mon

今日は久々にラウンジで作業。ラウンジ近くの病院にて診察。苦しんでいたことがあっけなく先生の一言で済んでしまった。ありがたいことです。
でも、もがき続けなければならないことも多くて。また一週間後に電話することになりました。
体というものは不思議なものだと思います。そして心もね。
仲間と連句を巻きつつ、他の詩人さんのツイッターで、思いや日記を視点を変えていくつもの現代詩にしている詩の先輩方を発見しました。(というより、以前から見ていたけど、すごすぎてまねできなかった……)
わたしもこういうもがきを、詩にしていけたらと思い、他にも書いているのだけど、直截的なことばや音にならないように、詩の日記のようなもの・メモ書きのようなものを書いていくことにしました。色々な考え方があると思うのだけど、わたしはわたしなりの日々の書き方があります。自分の感じたままに生きていきたい。新作一編。
夕方、大幅に体調を崩して、パートナーと一緒に考えつつ、心配されながら眠りました。そのことを今朝病院の先生に診てもらっていたのだけど、まあ世界というものはうまくまわるようにできていないものなのかもしれません。

・ほしおさなえ『空にかける橋』

詩人が詩を書くとき、ある時ふとやってきたことばたちを拾い集めるものだと思っていまして、そして脳だってこころだって体なのだと。
そういうことすべてを、ほしおさなえ先生ご自身の作品から学んできたようにも思います。
いきなり詩人の前に現れた100の短い詩群を詩人はことばにしなければならず、それは相当の体力が必要です。そしてそれと同時に、体に迫る危機もあって。
妊娠・出産・手術は女性にとってものすごく大変というものもわかりますし、詩群を詩集にするとき、ある種詩人はそこで思い切りというか、何かを決断して詩集にまとめていきます。
自分の生き方をはだかにして見せるような心持です。それでも、詩群と詩人とはまた別物で、それも厄介なところでもあります。
この詩集もお気に入りの一冊です。読み返してよかった。

・川口晴美『やがて魔女の森になる』思潮社

川口晴美さんも今回の文学フリマ東京でお会いできませんでしたが、2013年以来ゆかりのある方でもあります。お元気かな。
初めて女性の詩人の大先輩として、北爪満喜さんの著書と共に読んだのが最初でした。わたしたちの文藝同人誌、『ほしのたね』にも寄稿していただいたりしました。
川口さんが深夜アニメを好きになった理由、そして社会の事象と共に移ろっていくことばたちを掬い取るように編まれた詩編で、とてもよいです。
川口さんもよく森へ出かけているという詩を読んだことがあるのですが、今も森散歩を続けていらっしゃるのかななんて思いを馳せたり。
インカレポエトリで大学生を教えていらっしゃったり、活動も幅広くされていてすごいなあと思ったりしてしまいます。
「シン・ゴジラ」をイメージした詩が印象的でした。春への絶望と希望、すべての全肯定が現れているようにも思います。

・夏野雨『明け方の狙撃手』思潮社

現代詩というものについて、夏野さんの詩を読むともう一度深くその世界について考えてしまいます。
すべての詩行は意味というものを成していないのだけど、そこには音楽が流れていて、意味というものを越えています。そしてそれが
「It's fine day」という詩語に集約されている気がする。
夏野さんのツイッターもよく見ていますが、本当にその「良い日」を送られている日々がいとおしくてよいなあと思ったりします。
色々あるよ、みんな。でも、その「良い日」のありふれた幸せや喜びを見つめていると、自分の心のなかのきらめきや音楽に、もう一度触れられることができるようにも思います。

・古溝真一郎『きらきらいし』七月堂

古溝さんとは一緒にオンライン合評をしている山口勲さん経由でもご縁があったりしたのだけど、今わたしがシェアオフィスに通勤するようになって、もっとこの詩集もわかるような気がしました。
もちろんわたしには子どもがいないし、父親というプレッシャーと大変さ、そして仕事をするということと、家庭とのこと。そういうこととはちょっと違う家族形態の中にいます。
仕事をするときは家庭のことを全部忘れるし、家庭に帰ってきた時は家庭のことで頭がわんさかになってしまって、仕事のことは嫌だったことしか思い出せなくなる。
それでも、娘さんに「きらきらいしを二つもらう」ということ。
誰かに認められたい、という望みをわたしたちはいつだって抱いています。そしてそれがいとおしい人であればなおさらのことで、それだから日記のようなありふれた事象を詩人は詩にするのかななんて思います。

6月14日 tue

昨日のことがあったので、パートナーに心配されつつ家で過ごしました。久しぶりに母とインターネット上での会話。低血糖体質は遺伝性と言われました。わたしが小さなころにうしなった祖父が低血糖だったらしく、全然覚えていなかったけれど、小さな頃によくわたしのような生活を祖父も送っていたことを思い出して少し安心しました。父に早めの父の日ギフトが届いたみたい。はまぐりの夢も送るわよ。
詩人は孤独を感じやすいと聞いたことがあります。
理不尽にさみしくなったら何かを作ることにしているのだけど、そういう創作物(わたしにとっては料理・詩歌・雑記・日記)のすぐれたものは理不尽にさみしい時にできるのかもしれない。

6月15日 wed

3度目の結婚記念日でした。わたしたちを応援してくださったみなさま、本当にありがとうございました。うちうちの結婚式だったのに、式を挙げる教会にたくさんの、わたしを小さなころから知っていてくださった教会のみなさまがきてくれてとてもうれしかったのを覚えています。
あの頃は祖母も生きていて、結婚式を見届けたかのようにお別れしました。
あれから、わたしもわたしのパートナーもご縁が重なり、色々な活動をするようになったため、なかなかプライベートの時間をとれないでいたけれど、感謝です。
彼が大切にしているものや事象、そしてルーツ、わたしが大切にしているものや事象、そしてルーツを分かち合う貴重な時間となりました。

最初に行ったのは映画。テラスモール湘南で見ていました。
ぶれてますが……and us nails!買いたかったけど買う機会がなかった~!!ありがとう。
小雨の七里ガ浜。何度でも来た。何度でも来る。
え~っと驚いたのですが、江ノ電乗り放題でした。
マンナにて。
シェフの所作がかっこよかった!
映画の中にアイスが出てきていたので、
アフォガートを。
人があんまりいなくてよかったな。
紫陽花と海の見えるお寺から。
ポタティスの双子娘さんたちも
元気そうでよかった!
海の近くの人々にもあたたかさと
エネルギーがあふれている気がする。

6月16日 thu

今日は東かほり監督の映画の試写会。よいご縁があって、お母さまで歌人の東直子さんから連句会でお誘いをいただいたので行ってきました。とっても良い映画! 場所と人、帰るところと音。そんなことを考えながら見ていました。
今日は作業を朝早くからしないと間に合わず……資料の読み込みや明日の打ち合わせの確認をしていました。
よくわたしのような職業の方が仰っているのだけど、体調と裁量でこの仕事はされている方が多いので、本当にそうだよなあと思います。
せっかく渋谷に来たので、寄り道、寄り道をして西荻窪のFALLさんで三品輝起さんにお会いして、『荒地』を買ったり、赤坂の双子のライオン堂さんで『百年の孤独』を買ったりしました。帰って友達と仕事ベースの電話。役に立てばいいのだけど……またランチしようね。彼女とももう20年の付き合いです。よい日でした。

とってもいい映画でした。
ほとぼりメルトサウンズ。
西荻窪のFALLさん。
詩人全員に自慢したい~(笑)
エリオットの『荒地』、西脇順三郎訳!
土曜社フェアに伺いました。
赤坂の双子のライオン堂さん。
以前来た時より蔵書がさらに増えていて、
『百年の孤独』を買うんだ!
と思っていたのに他の本に目がうろうろ。
今度はくれよんカンパニーさんの
漫画を買いにこよう!

6月17日 fri 百年の孤独をゆっくり読む暮らし day1

今日は都内で打ち合わせ。いつも出版社さんに行く時はわくわくします。
メールでしか編集の方と話していなかったので、積もり積もる話が……今日は本文の紙の質感・表紙や帯の色や紙・見返しの紙を確かめに行きました。でかける前はアウトドアな気持ちが朝から続き、少し不安定な気持ちになって外出を抑えていたのだけど、出かけて他の人のざわめきや環境音を聴くととても安心しました。また、家にいたときはヒスイドロップさんの朗読を聞いていました。いつもの先輩の安定感。落ち着いて行けて、とっても楽しかった! 本文用紙の選定なんてプロのデザイナーさんとするの初めてでした。

・高細玄一『声をあげずに泣く人よ』コールサック社

オンライン合評にも出してくれた詩、noteで読んでいた詩をまとめていて、「げんさん節」がきいていました。わたしたちの合評会では、高細玄一さんのことを親しみを込めて「げんさん」と呼んでいます。
時事問題に個人のことを絡め、その当事者に寄り添い、また共に怒って書かれた詩群。
それもすごく好きですが、げんさんがげんさんであるという確かなルーツや日常を描いた詩もとても好きでした。
書かなくてはならないという使命を第一詩集の場合多くの詩人が持ちます。
そういった意味でも、紙媒体にまとめられて本当によかったなと思います。

・T.S.エリオット 西脇順三郎訳『荒地』土曜社

詩人全員に自慢したい!! ちょうどFALLさんに伺った時に、おお! と声をあげてしまいました。だってエリオットだよ!? 西脇順三郎だよ!? と思い、三品さんにアツく魅力を語り、購入しました。ほくほく。
日本語訳のふくいくさ、そして漂う詩的言語の薫り高き誇り。
何度でも再読したいと思い購入しました。
翻訳文学に特に憧れがあるように思います。そしてそれを日本語話者の詩人が訳していることにも。

※これから、

G・ガルシア=マルケス 鼓直訳『百年の孤独』新潮社

をゆっくりと読みますので、あんまり他の本を読めないかも。。でも、よい体験です。

百年の孤独day1

朝から読み始め、まず一回読破する。
梨木香歩さんの解説にうっとりする。余韻が残るまま午後になり、電車に乗って打ち合わせ場所に行く。その間にもう一度読み始める。
相関図を見ないと誰が誰だかわからない仕組み。本文に使われている紙が少しクリーム色で読みつかれなかった。いつでも読めそう。
愛や家族、それにまつわる血についての物語の精読は何度もした方がいい。
それは、わたしの結論かもしれない。


6月18日 sat 百年の孤独をゆっくり読む暮らし day2

明日が父の日ということをすっかり失念しており、パートナーに知恵を仰いではまぐりの夢をレターパックライトプラスで贈りました。
今日は土曜日、なのだけど、パートナーのオンライン会議もあるためわたしは午後からラウンジにて作業。朝からブランチの時間まではしんどかったけれど、軽食を取ってわりと動けました。昼食はパートナーと一緒にとりました。作り置きおかずが少なくなっている~!!
人がざわめくところ、そしてゆったりとしたBGMがかかっているところが好きです。とても安心する。
家だと逆に静かなので、イヤホンでカフェのジャズを聴いているのだけど、やっぱり人のいるところはいいな。今日は週末と言うのもあり、少しテンポの速めのラテン系のBGMがかかっていました。ミーティングをしているチームも後ろにいたりして、作業自体を楽しめました。
昨日、第二詩集のデザイン最終決定の案をいただいて、時折ファイルから出してはにまにまする、など。わたしの新しい本が、できるんだ。新作二編。夕方から夜にかけて、湿度にやられたり、過労気味で倒れたり寝込んだりする。オンライン会議を終えたパートナーに助けてもらったりしました。明日はゆっくりと休みます。

・峯澤典子『ひかりの途上で』七月堂

そうか……どこかで読んだことがあると思ったら、わたし、峯澤さんのH氏賞授賞式に詩の同人を組んでいた先生と一緒に行っていました。2013年、懐かしいです。その時にわたしの恩師の一人でもある吉田文憲先生が「はつ、ゆき」に対してよい意味で言及されていたように思います。
読点にも詩人の思いがあること。詩には余白の美しさがあると思いました。

百年の孤独day2

蒸し蒸しとした梅雨の曇りの週末のラウンジには、
ラテン系のBGMが流れていた。
作者自身が熱帯地方出身ということで、2回目の読破。
なぜか現代にもこの暑さや湿度、リズムが伝わっているようにも思う。
いくつかのテーマで俯瞰することができると思った。
人間・戦争・家族・女性・結婚・出産。
一番に焦点をあてたいのが今回の読書では「女性」だった。
彼女たちのうちにはどんな音楽が流れ、どんな物語を紡いできたのかは彼女たちが男たちに教えている。
しかし、人が生きていくことにおいて、みな「母」から生まれたという概念が強くこの小説には残っている。
夏、という季節、高い湿度、太陽のような熱気を持った女たち。彼女たちはいつだって強い。
この日本で、生きているということ。女性であること。
太陽を欲しているということ。


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