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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 7月18日~7月24日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。梅雨明け、しましたね! 内側から輝く女性になるために、読書の時間や自分の作品をもっとよくするために、時間と労力を惜しまないようにしようと思っています。

7月18日

ごはん、や盛り付けの器にこだわりだしたのはここ最近。暮らしの中の心地よさを日々追求しています。扇子を買っておいて正解でした。午後は新作を詩作。最近日々穏やかで、感情の両極端にふれる条件反射が遅くなったように感じます。

・津田晴美『気持ちよく暮らす100の方法』筑摩書房

短いエッセイのような詩のようなものと、暮らしのヒントになるエッセイ。気持ちよく暮らしたり、歌うように暮らすにはちょっと手間がかかります。今のうちにそういった「コツ」をつかんでおくと、もっと暮らしは豊かに楽しむものになるのかもしれないなと思います。歌うように暮らすのが理想で、自分の中に確固とした「答え」を持っている人は男女問わず美しいと思います。

・与謝野晶子(鳳晶子)『みだれ髪』大空社

これはちょっと書影から自慢したいので写真を。

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復刻版を購入しました。インクのかすれ具合なんかも最高に素敵な一冊です。もちろん与謝野晶子のことは大学の授業で教えていただいたのだけど、初版を読むと「作品群」として読めるのもあり、当時の与謝野晶子がどれだけ前衛的だったのかわかるような気がしています。大学生だった頃は「そういう恋愛は当然!」と思っていたのだけど、大人になってみると「あの時代にこんな恋ができていて、それをストレートに発表していたのか……」といささかびっくりします。これもきっとわたしが大人になって恋をしたせいなのでしょうか。いい恋愛をわたしも、きっと晶子もしたのだと思います。照れますね(笑)

・高橋新吉『ダダイスト新吉の詩』日本図書センター

中原中也のことを個人的に調べていて、彼がこの詩集に感銘を受けて詩作をし、ついに「ダダさん」と呼ばれるようになったきっかけの詩集の愛蔵版です。ダダイズムは芸術運動の活動の一つで、脈々と現在も芸術家や詩人たちに影響を与えている思想ですが、やはり前衛的な詩は興味深く、そして刺激的に迫ってきますね。今軽やかにことばや芸術が発信できる世代と、ダダ。なかなか面白いような気がしています。軽やかに言葉と向き合う彼らの詩を読みたいと思うし、そういう時代に読まれて愛されるもの、そして後世まで残るものとは何なのか。そういったことを考えました。

・秋山駿『小林秀雄と中原中也』講談社

個人的な関係や愛憎の問題がこの2人にはあって、長谷川泰子を取り合ったことでも知られていますが、彼らの「思想」や「生き方」に著作の「読み」からアプローチしていると考えられる本です。どちらももうとても有名な著作家ですが、その前にひとりの男性とひとりの男性であり、ひとりのにんげんとひとりのにんげんでした。もしかしたら2人ともある種「野蛮」なところはあったのかもしれません。ですが、そうであるからこそ後世まで残るものを書けたのではないかと思っています。作家が抱える苦悩と名声はたいてい反比例するものですし、そんな時代でした。それだけ、原点となった「戦争」「戦後」というものを考えてしまうし、社会、孤独といったものは普遍であると思っています。

7月19日

昨日作った新作もろもろ推敲。創作と作業時間、仕事に就いて考えた1日。黒田三郎『小さなユリと』瀬尾まいこ『僕の明日を照らして』を予約。

7月20日

やってきました火曜日! 移動図書館に向けて朝の作業からわくわく。今日は2か所に行きました。暑かったので帰って休み。ラジオを聞いていて、体を休ませました。黒田三郎『小さなユリと』回送中。

7月21日

・小川糸『つばさのおくりもの』ポプラ社

語り手の「ぼく」はオカメインコの男の子。彼が出会う様々な生き物は、みんな悲しみや幸福を持ち、そして親身に彼に寄り添っていきます。「おっかさん」との愛、思い出すと胸が苦しくなる切なさ、戦争・震災。2013年の発行ということもあり、震災のことは胸がしんとしました。最後にはふるさとに誰しもが帰っていく。日々変わっていく価値観の中で、こういった子どもも読める本は真実を描いていると教わった一冊でした。

・森沢明夫『ぷくぷく』小学館

ペットだって、飼い主に伝えたいこと、たくさんあるんだろうなあ。わたしも以前実家で犬を飼っていました。元気かな。この小説の「ボク」は魚。恋に臆病な「イズミ」のペットで、よき話し相手でもあります。ボクはイズミにたくさん伝えたいことがあって、でもボクのことばはイズミには届かない。そういったすれ違いの中で、イズミもだんだん変化していきますし、ボクもただ背中を押す姿勢を取り続けていくしかない、というのには心がきゅっとなりました。誰でも、もうがんばらなくていいよ、となぐさめてもらいたいときはあります。そして、無言で聞いてくれる誰か、何かが必要なのかもしれないですね。

・越谷オサム『空色メモリ』東京創元社

弱小文芸部に春が来た。可愛らしい不思議な新入生の女の子。ハカセと俺はときめきますが、俺は文芸部に所属しているわけではありません。面白おかしく空色のUSBメモリに日々綴っていたのですが、そのメモリが大騒動を引き起こし……。どの時代であっても、スクールカーストというものは存在しますし、そこでふんばってがんばっている学生には頭が下がります。彼らは彼らなりに自分を追い詰めているし、そんな大変な中で勉強も恋もがんばらなくてはならない。それだけ体力も気力も若さも、あるんでしょうね。わたしの高校はどちらかというと文化部と運動部が対等な学校でしたが、そういうのも珍しいと言われました。特殊な学校だったのでしょう。そんな中でも、地道に何かを続けていたり、何かに打ち込む姿をこの一冊を通して教えてもらいました。

・赤川次郎『ヴィーナスは天使にあらず 天使と悪魔9』角川書店

地上に派遣された天使、マリは少女の姿。成績不良で地獄からたたき出された悪魔、ポチは犬の姿。そんな2人(?)が巻き込まれるいくつもの事件。切り込み口って、ミステリー作家の方はすごいなあと思いますね。赤川次郎さんの作品はよく昔は読んでいましたが、やっぱり年月を重ねると違う思いにとらわれます。マリとポチが巻き込まれる事件が最後、よい出会いにつながっていくのは面白いですね。

・群ようこ『母のはなし』集英社

母になること。母とのこと、娘ということの一代記です。今わたしも30の声を聞く頃になって、母との関係や、自分が娘であることの何か、葛藤というものを覚えたりします。母との関係はどんな家でも違うと思いますが、自分が母になるとき、そしてどうしても助けてほしい時、自分の生まれたという状態に戻ることがあるんですね。そういう時に子どもの頃は「お母さん」と叫んでいて、たぶんそれは母親がいる娘たち、愛された娘たちにすごく当てはまるのではないでしょうか。でも、そんな「娘たち」も愛する人と共に生き、恋をし、母になっていく、家族になっていくというものはすごく重大なことなのかもしれないと思います。

7月22日

今日は映画デー。少しずつ読み進めていきます。

・カレン・ジョイ・ファウラー 矢倉尚子訳『私たちが姉妹だったころ』白水社

家族の愛、崩壊、再生。野生児でモンキー・ガールと呼ばれていた私と、私が大人の女性になっていくまでの成長の記録とも呼べるものですが、古き良き「家族」の物語だと思います。どんな家族にもその家族なりの「物語」があります。最初にワンピース一枚で裸足で世界と向き合ってきた少女がドレスを着て化粧をするような女性になり、そして家族も再生していく。大作でしたが、改めて「家族とはなんだろう」と問いかけられているような一冊でした。

・月村了衛『コルトM1847羽衣』文藝春秋

自立した女性と、恋を知った女性は強くて美しいと思っています。江戸時代、このお炎は佐渡島へ流れた恋人を探しにコルトというごつい銃を抱えていくのですが、佐渡島では「オドロ様」と呼ばれる教祖の邪教が流行っており、その宗教団体とお炎は闘うことになります。恋人を取り戻すこと。宗教と人を信じさせてやまなかったもの。そして戦闘といのち。女性の本当の意味での「強さ」。そんなものを思いました。

7月23日

今日は思い立って朝の散歩を4時頃。暑くなってきましたね。帰ってきて集中して5000字ほどの散文詩の新作を作りました。大学を卒業する時に書いたわたしの前のペンネーム、猫野エミリー名義で書いた最後の短編小説、「ばんそうこう」(文芸創作ほしのたね7号収録)を朗読し、朗読ラジオを作ってみました。なかなか充実した一日だったような気がしています。

7月24日

わたしのルーツはラジオにあって、ラジオ朗読とか落語とか、語学などはすべてラジオで学んでいました。今、いろんなラジオアプリがある中で、聞き比べていくのにハマっています。読書やおすすめの本のラジオはいいですね。司書時代のことなんか思い出したりして、こういう本をこういうふうに紹介したいなと思いました。

・黒田三郎『小さなユリと』昭森社

時々、どうしようにもできないやるせなさで自分が弱ってしまう時って、ありませんか? わたしは結構あって、そのたびにしんみりしてしまうのですが、そういう時は必ず体が弱っているので、お風呂に長くつかったり、おいしいものをたくさん作って食べて話して笑って寝たりすると治ってしまいます。この黒田三郎さんは詩人なのですが、この詩集を出した当初、娘のユリさんのワンオペ育児をしていました。ユリさんはまだ幼稚園生で、黒田さんはサラリーマン。お母さんの方は病気で入院しています。会社に遅刻していくのも、ユリさんを幼稚園に送ってから行くから。でもそういうものがあまり一般的ではなかった社会なので、彼をどこかで苛んでいたんでしょうね。ちょっとした詩人のお父さんの愚痴というか、ひとりごとというか。そういうものを読んでいると、どこかで「わたしも弱ってるけど、黒田さんもそんな弱気な気持ちでいたんだな」と逆に励まされるというか。お父さんお母さんはみんな子育て初心者です。子どもは一人一人違うので、子育てのプロなんていません。わたしは子どもを育てたことがないので、友人からの情報から考えると、みんな違う悩みをどこかしら抱えているんですよね。そういうちょっと自分が弱った時に、読んでほしい詩集です。

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