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【詩人の読書記録日記】栞の代わりに 12月19日~12月25日

はじめに

こんにちは。長尾早苗です。ついに年末も近づいて、クリスマスまで一週間という日。変わらずわたしは本を読んでいます。

12月19日
満月。何かが変わる契機としての周期だと思っています。

和合亮一さんと平川綾万智さん、ikomaさんのスぺラジを聞いていました。スペースはリアルタイムだとスマホを常に見ていなければいけなかったので目が疲れてしまい、ちょっと苦手意識を持っていたのですが、録音されていてほっとしました。ラジオ感覚で聞けます。

今日は配信が忙しい日でした。ラジオを3本聞き、ウォーキングで頭を整理。そうだよなあ、もはやわたしのしている散歩はスポーツです。どんどん体脂肪率が落ちていき、筋肉質になっています。

午後はfika(北欧のことばで「一緒にお茶をすること」)のあと、いつも(クリスチャンではないですが……)通っていた教会のクリスマスコンサートを配信で聞いていました。夕ご飯は約束していたチーズとベーコン入りパンケーキ。おかずケーキです。サクレの方が近いかな。わたしがハガキ職人っぽくなっている今を考えるなど。新作一編。

炊飯器で炊けたところ。
ホットケーキミックス、牛乳、卵、チーズ、ベーコン。
悪魔な食べ物が出来上がってしまいました…

12月20日
午前中に聞いていたラジオで気になる本があったので予約しに行きました。午後から吟行も兼ねて家族のクリスマスプレゼントを買うのと、カフェでスイーツ。贅沢な時間でした。そこで少し執筆したりなど。

自分の冷えに気がつくことができました!そして、のんびりあたたかに冬至を迎えるということも。

カフェにて。プリンと黒糖チャイをいただきました。
家でもやってみたよ、しょうが紅茶。冬至まであったまろう。

12月21日

深夜から早朝にかけて新作一編。時には自分から殻を破らないと。

朝早くの小高い丘の上から。月と山が見えます。
こんなにくっきり山が見えたんですよー
半年かけて使い切ったやることリスト。
結構分厚くて大変でした。

・宮下奈都『緑の庭で寝ころんで』実業之日本社

この時に読めてよかったです!!わたしも気がつくのが遅くて……自分が詩人になれたということも、今忙しいということも、主婦であるということも、何かが変わらなくて怒っているということも、何かすべてに気がつくのが遅くて、そして家族になんらかの影響を与えてしまったり、自分で何か変わるべきことが変えられなくてイライラしたり。でも、同じような何でもない日常をしっかりしっかり送っている宮下さん。時に作詞をして、時に子どもたちと笑い、日々を過ごしていく。そんな彼女が憧れでもあり、やっぱり気がつくのが遅い同士、いま、いまということに身を置いていたいと思いました。

・乃南アサ『犬棒日記』双葉社

犬も歩けば棒にあたる。略して犬棒。日々の暮らしを送っていく中で、何かのアンテナを張っていると思わぬ犬棒に出くわすわけです。わたしも日々そうなのでわかります。わたしは他の人の日記や記録、エッセイを読むのが好きです。その人の頭の中、わたしとは違う人生を歩んでいる人々がどんな暮らしを送っているのか、何が今日同じ時間を過ごしている中で起こっていたのか、何を思っていたのか。だからこそ、わたし自身の日記も常に犬も歩けば……になってしまう。思わぬ事件に出くわすことが多いです。うるさかったりしたらごめんね笑 でも、そんな人がわたしだけじゃないんだと思ってちょっと安心しました。

・川上未映子『世界クッキー』文藝春秋

書くもの、として本当に身が引き締まりました。最近冬至をいいことに眠くて眠くて全然言葉がでてこなくて、それでも何かを書かなければいけないし、やらなくてはいけないことがどんどんやってきて、もうあたしやだ!という気分になって家族に当たったり、涙してしまうことも……それでも、いつも世界の何かに一対一で真剣に向き合っている川上未映子さん。そこに対して彼女は妥協がありません。あえていうならば、小学生だったころの子どもみたいに。すっごくあの頃って、言葉に対しても、そして家族に対しても、世界に対しても、真っ直ぐじゃありませんでしたか?なんというか、その時のことを色々思い出して、頑張ろうと思えました。

・正木ゆう子『羽羽』春秋社

あとがきにも書かれていますが、春から冬へ、その中での被災ということもあって、被災地でのうたは鳥の句が多くなっています。書き手の中で、多分どこかへ飛び立ちたい思いが一心にそのモチーフを引き受けていると思いました。口を噤んでしまう。確かにそうかもしれません。わたしたちは何かが起こり、何かで世界がリセットされてしまうような危機が起こる時、ことばの小ささを感じてしまう生き物です。しかしうたには、その語り手であったり書き手がどうやら救いを求める効果があるらしく、ある種書き手の羽でもあるように感じます。最近わたしもようやっと歳時記の勉強をラジオなどでしていますが、俳句の季語は人も四季も世界のすべてが生き、動いている。死んでいたものも、命を持っているものとして扱われています。そのことを深く感じ取った句集でした。

・ほしおさなえ『ものだま探偵団 ふしぎな声のする町で』徳間書店

七子は、引っ越してきた先の町で、鳥羽という不思議な少女と出会います。鳥羽は物についた魂、ものだまと話ができて、なんと七子もものだまと話ができてしまうのでした!ものが捨てられない、とか、日記や本が捨てられない、など、すごくよくわかるんです。それに魂がついている、と思ってしまう時もあったなあ。ずーっと捨てられないでいる、今使わないもの、いつか使うはずのもの。そしてその「いつか」って、やってこないんですよね、なかなか。でも、わたしの場合ですが日記や母の母子手帳はこの流行病のご時世で、自分のことを知るためによく使っていました。こんなものをとっておいてくれたんだ!と感謝の念もわきました。

12月22日

ずーっと眠っていた日。睡眠不足と頑張りすぎかなぁ、と思います。毎日書いてたし、たまにはこういうオフもいいよね。冬至。季節と共に生きる。新作一編。落ち込みやすく、疲れやすくなっているので気をつけよう。それでも、夕方のラジオでお便りが読まれて、そして憧れの詩の先輩とメッセージできて勇気が湧きました。明日からもがんばろう。

柚子湯に使う実の半分をジャムに。
くりカボチャは冷凍もの。出汁で煮込むと美味しいです。
柚子ジャムをのせたまるでチーズケーキと、
毎年楽しみにしているクリスマスブレンド。飲めてよかった。

・アリス・フェルネ デュランテクスト冽子訳『本を読むひと』新潮社

フランスのジプシーの大家族のところにやってきた図書館員の女性。ジプシーは社会保障も、住むところも追われてただ彼らには自尊心があります。そして、週に一度やってくる図書館員の女性をいつしか心待ちにする、文字が読めない子どもたち。そして、若い青年の恋心。物語というものは、いつでも、いくつでも心を養い、とらえつづけます。それは、人が生きていくということと密接に結びついているようにも思うのです。

・ジュリアン・バーンズ 土屋政雄訳『終わりの感覚』新潮社

穏やかに、老いたその後を生きる男性。そんな中で、ある日日記と遺産が届きます。学生時代の女性の恋人の母親から……最初はびっくりしていましたが、なんとその日記はかつての友人の男性のものでした。老いるということ、少しずつ興味関心が穏やかになっていくこと。そして、人と人が出会い、その中で何か事件が起きてしまうこと。日記に紡がれた日々をたどるうち、自分や恋人の過去が明らかになっていきます。ミステリーをはらんだ静かな物語です。

・ザカリーヤ・ターミル 柳谷あゆみ訳『酸っぱいブドウ/はりねずみ』白水社

シリアの小説家、ザカリーヤ・ターミル。彼の短編小説集です。ショートショートと言ってもいいかな。イスラム教の文化、そして今まで読んできた文化の中で、一番「その街」「その国」を描いていると思いました。作者は子どもたちを唯一希望が持てる存在として書いていて、その中で大人たちの汚さや愚かさ、そして人と人との群像劇がもたらされます。本当に、シリアの穏やかな旧市街を歩いていて、その人々が語るほんの少しの物語に耳をすましている気分になりました。

・ほしおさなえ『ものだま探偵団 駅のふしぎな伝言板』徳間書店

不思議な事件の発生から、この物語は始まります。駅に行くと、みんな何かをわすれてしまう。それは荒ぶったものだまの仕業だと鳥羽。そして、律くんというチェスの駒のルークを持っているものだまの声が聞こえる少年が出てきて、鳥羽と七子は荒ぶるものだまの暗号を解読し始めます。ここにあって、いつか「古いもの」としてなくなってしまうもの。でも、みんなの思いを伝えられる場所。なんだかほんのり、今までお世話になってきたものに対して優しい気持ちになれたし、自分が大切にしていきたいものはずっとずっと大切にしようと思えました。

12月23日

行きたかった思い出の所に一人吟行。共に暮らすひとがリモートワーク中だったので、詩を作りに歩きに行きました。新作一編。

小田急線!
レストランもすっかりクリスマス仕様。

・エイミー・ブルーム 小竹由美子訳『リリアン』新潮社

1920年代のロシアからアメリカに渡ってきたリリアンという女性。お針子として彼女は新天地アメリカで過ごしていきますが、そんな中で喪ったと思っていた娘がまだ生きているということを知り、愛する男たちも何もかも投げ打って、娘を探す旅に出ます。本当にその様子が大冒険でした。母にとって、やっぱりこどもって自分の人生よりも大切にしたい存在だったのだなあと同時に、母になったとしても、誰かを次々喪ったとしても、何かしらの力を得て誰かと恋をしたり、仕事をしたり、そういったことができるんだと勇気が湧きました。

・ジュリアン・サンドレル 高橋啓訳『ルーム・オブ・ワンダー』NHK出版

キャリアを積んで行って、そして愛する一人息子がいるシングルマザーの女性。バリバリと働けるのは息子の成長を見守ってきたから。しかし、息子がある日交通事故にあって意識不明になってしまいます。この小説は、母親の目線で語られる形式と、息子が心に思った独白で綴られていきます。意識不明になってしまった、生きがいであった息子を失いそうになる不安。それでも息子は生きていて、現代っ子として考えることもできる。それでも、彼の気持ちが母親に伝わらないもどかしさ。わたしはこどもを持つという経験はしたことがないけれど、本当に大きなパワーになっていくんだなと思います。わたしがわたしであるために、愛する人を守り抜くという心意気を感じました。

・エリーサベト・ノウレベック 奥村章子訳『私のイサベル』早川書房

母と娘の問題ってすごく難しいんですよね。きっと、娘としてはそこから立ち直って、自分の道を生きると決めたことからまた「わたしの」人生がはじまっていくというか。それでも、母親のきもちもわかるようになりました。やっぱり同性ということもあり、かわいいし干渉してしまうし、いくつになっても娘は娘なんでしょうね……。
この物語では三人の女性が語り手となります。小さかった娘を失ったと思っていた心理カウンセラー、彼女のところに母親から自立したいと思って通う女子大学生、そして大学生の母親。心理カウンセラーはどこかで、あの時生きていればわたしの娘は何歳で、きっとこの子は……と揺らいで行き、ホラーのようなサスペンスにまで発展していきます。どきどきもの、どろどろものやミステリー好きの方におすすめです。

・ほしおさなえ『ものだま探偵団 ルークとふしぎな歌』徳間書店

そうか、ものだまにも記憶喪失があるんですね。今回は律のルークが重要な役目を果たします。英語教室に通い出した七子は、気づかないうちに不思議なうたを口ずさんでしまうようになりました。しかし、それはマザーグースの歌で、チェス盤と関係があって……という物語。律も大変だし、親子とか家族ってとても難しいけれど、そしてそれを子どものうちから抱えてしまうのは大変だけど、自分の大切なものや大切な人を守り抜くことが大事なんだなと思いました。

12月24日

昨日の一人吟行の時に、歩きながら時々立ち止まって、スマホのメモにことばを書いていました。今朝といっても深夜3時ごろからことばを本当に紡いでいく作業。わたしはスマホのメモを一回紙媒体に写して、それをもとに別のノートに詩作しています。だから眠るのがめちゃくちゃ早いです……スミマセン、でも、今日は今日らしい詩ができてよかったなあと思いました。リモートワークをしている家族とのこれまでを思い出し、「きっとあなたの鳥になる」という詩を書きました。

朝の散歩で、不思議な雲の列を見かけました。
ケーキは大人2人なので、贅沢を少しずつ。
クリスマスプレゼント(その2?)としていただきました
アンジェ神田店さんで買っていただいたガラスペン。
インクは時間が経つと緑色から茶色に変化します。

・ほしおさなえ『ものだま探偵団 わたしが、もうひとり?』徳間書店

これはミステリー好きにも楽しめるし、そして小学生におすすめしたいなあ。シリーズ通して語られるものだまは、人に語り掛けられることを長年繰り返して魂がやどったもの。タマじい、フクサ、ランドセル、ルーク。しかし今度の荒ぶるものだまは結構難解!ものだまが荒ぶることにより人の世界にも異変が起こるのです。引っ越してきて、そして引っ越す友達がいて。小学生の頃はそんなワクワクと寂しさに溢れていた頃のように思いますね。あの子今どうしてるんだろう、と突然思い出したり、あの子達としたごっこ遊びが楽しかったことなど、急に思い出したりしちゃいました。

12月25日
今日はひょんなことから、家族と櫻木みわさんと三崎でミネシンゴさんとかよこさんの夫妻、そしてアタシ社の皆さんにお会いしてきました。あまり詩の世界とは違うパワフルな女性たちとなんてことないお喋りをすると楽しくて、三浦海岸から鎌倉へ向かう車の中でiPhoneのメモにことばを採集していました。ハプニング、とってもよいお店でした!これからもかよこさんやミネさんたちの活動を応援していきたいなと思います。新作一編。

ハプニングのロゴ。「ん」が気になる。
愉快な店内でした。

かよこさんのこれからも応援していきたいし、アタシ社のこれからも、ミネさん夫妻のことも、そしてたくさん話したみわさんも。色んな女性の生き方があって、考え方があって、それぞれに自分を持っている。これからもわたしたちは、どこかで芯を持って生きていきます。

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