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心を奪い続ける、ただそれだけ。〜学びnote14〜

「本を出すことで、事業にどういうインパクトがあったか」

今日一番伝えたいポイントは「本を出したことが事業・アプリ・サービスに多大な好影響を与えている」ということ。

もう1つが「本の売り方というマーケティングの話を抽象化すれば、アプリとマーケティングは同じ文脈で語れることが多い」ということです。

これは編集者の中でも箕輪さんが図抜けて上手いと思いますが、コミュニティを持っていて、それを毎度きちんと盛り上げて本というプロダクトをしっかり届けていく。

SHOEROOMのエンゲージメントは、いわゆる横の幅ではなくて、見ている人の深さを考える概念。これがすごく深いんです。具体的に言うと、1ユーザーあたりのコメントの数や滞在時間、ギフトを投げる数など。ただ見ているだけでなく、コンテンツに深く入り込んでいるユーザーがすごく多いんです。

CVR(Conversion Rate:コンバージョンレート)がすごく高くてびっくりしているんですけど、エンゲージメント、視聴者を単なるビューワーとせずに「その場に存在している」と感じてもらえるような、アイデンティティをしっかり感じられるUIを大事にしています。

最近、SHOWROOMにおける匿名性を、「匿名2.0」「半匿名」と言っていて。匿名な場所なんですけど、名前があり、姿があり、そこに関係性がある。いわゆるセカンドアイデンティティをネット上にしっかり作って、そのセカンドアイデンティティを承認してもらいたい、という目線でユーザーが場に参加してくるので、エンゲージメントが高いんです。

匿名上の実名みたいになっています。そこのエンゲージメントを高める設計によって、高さを保ちます。モバイルアプリ動画の中ではありますが、Netflixを超えて収益トップになっていて、なんとか成長してきているような状況です。

「ロジカルに考えすぎないことが余白を生む」

前田さんはそこらの天然でやっている素人とは違います。天然性までも余白として計算をしないという計算をしています。「あえて計算しない」というバッファーも残すということ。
でも、ちゃんと自分の中から余白が出るように設計しているので、その余白は嘘ではないです。
決めすぎないよね。ロジカルに考えすぎないところがある。勝手な感想だけど、前田さんはとくに、この1年間はそうしているような気がする。

スケジュールの中にあえて無駄を入れる

結果に直結することだけをやるんじゃなくて、あえて雑味というかノイズを入れていますよね。あえてノイズを入れることを意識していないと、その無駄は生活のスケジュールに入れようがない。

そう。本当に逆算で目標達成に向けて走るなら、1~2時間あれば「それ、やってもいいよね」みたいな企画なんて、100個ぐらい考えられる。でも、それをやらずに、あえて外れすぎない範囲でのノイズを取りに行くのは大事だなと思うんです。

「なんでもOK」という向き合い方が、周りの力を引き出す

箕輪さんはあえて「自分はもうなんでもOKと言う」というスタイルで生きているから、周りが「ちゃんとしなきゃ」となる。その結果、「箕輪さん、ちゃんとマーケティングのこと考えているのかな?」「自分が全部やらなきゃ」みたいな気持ちになって、僕の力が引き出されるんです(笑)。編集者としてすごいと思う。

「メモ」の本質は思考のフレームワーク
「競合と承認の天秤」のせめぎ合い

人には、「しゃべりたい欲求」があるんだなと思いました。
自分もそうだけど、自分の本の売り方とか、前田さんだったらアプリのヒットのさせ方とか、それをしゃべりたいという思いは、人間の欲望のどこかにあります。自分がやってきたことを教えたり言ったりしたいという。

「人の役に立ちたい」というようなこと人の役に立ちたいこともあるし、「自分でちゃんと言語化したい」とか、人によっては「やってきたことを認めてもらいたい」とか。「この世界でちゃんと自分を自覚している」とか、承認要求があるということです。

「競合と承認の天秤」とよく言っているんですけど、この2つはすごく違う。競合だと思っても、「とはいえ承認欲求を満たしたい」と思うことがビジネス界では常にせめぎ合っているんだと思います。だから、箕輪さんみたいにブルーオーシャンで「競争とか関係ないや」みたいなことを思っていたら、「競争」という天秤がぱっと外れますよね。すると、なんらかの自分の心を満たしたい、という欲求だけがむき出しになって残るので、どんどん人に伝え始める行動を起こすんですよね。

「具体・抽象・転用」という思考のフォーマットが、ヒットアプリを作る秘訣

今、僕らのことを遠くから客観的に見て書かれた記事を見ても「そこじゃないんだけどなあ」と思うほど、実は実態とは乖離があるものだと思います。毎日真剣勝負で戦っている本人が一番本質を理解しているので、そういう当事者たちと連携をしながら、データと解釈という、定量と定性を見ないといけない。定性も、ちゃんと本人が言っていることのほうが(外部の記事よりも)本質に近いと思います。

「メモというよりは、実はその裏側にある思考のフローこそ最重要です」と言ったのは、基本的に今具体的に起きているヒットの抽象化が必要だからです。つまり、「なぜそういうことが起きているんだろう」「裏側にはどんな洞察があるんだろう」「人の心がどういうふうに動いているのか」を分析して、その抽象レベルになったものを、自分の具体的なアプリの企画に落とし込むという転用作業をする。具体を抽象化して転用する、具体・抽象・転用という思考のフォーマットこそが、ヒットアプリを作る一番の秘訣だと思っています。

人々を楽しませているヒットをいかに見過ごさないか

TikTokがどうして上手くいったのかとか、メルカリがどうしてここまで市民権を得たのかということを分析する。これをいかに、見過ごさないでいられるか。

アプリでヒットしたものがあるなら、その成功を絶対に抽象化すべきだし、アプリ以外でも、何らか人を楽しませているヒットコンテンツを見かけたら、積極的に抽象化して、常に自分で転用できる状態にしておく意識がすごく大事だと思います。

ヒットに関心を持たない人の心理を深掘りする手法

まったく同じストーリーなんですけど、僕は本当に観たいと思わない限りあえて観ないようにしていて、逆に「なんで俺、こんなに売れているのに観たくないんだっけ?」ということを考える

それも大事ですね。逆の希少性。“こんなにヒットしても関心を持たない自分”という層も当然ある。世界を『ボヘミアン・ラプソディ』を観た人と観ていない人で2つに分けるなら、観ていない人のほうが多いわけです。「そっちの人のインサイトは何なんだろう」といことを深掘りして考えることも大事ですね。

「明日から17歳の女子高生になってください」と言われてなりきれるか

基本的にいきなりマスのために作るということはなくて、最初は1人のために作るというイメージでやっています。
そして、結果的にその「1人」がたくさんいて、マスになっていくというステップを踏んでいくので、「この1人のために作ろう」と思った時に、想像できる自分の能力というかプロトコルをたくさん持っておくというイメージですね。
「17歳、女子高校生、アニメが好き、男性アイドルもちょっと好き」みたいな子が触るものはなんだろう? と考える時、実際に「前田さん、明日からその17歳の女子高生になってください」と言われて僕がその子になっても、僕は普通に学校に行って、普通に友達と遊んで会話ができるレベルになりたいんですよ。それをあらゆるジャンルでやっておきたいという感じです。それをやっておくと、誰か1人をイメージして何かを作ってそれを売っていこうとする時に、その1人のペルソナがすごく具体的にイメージできるようになります。そのためにたくさん情報を取っている感じですね。
前田:そう。例えばTikTokみたいに「こんな感じで3Dキャラになれば、自分のアイデンティティを隠せるから発信できますよ」とか、ZEPETO(ゼペット)みたいにものすごくデフォルメされるというか、「本来の自分が見えなくなるぐらい加工されるようなものになっていけば、発信は怖くないんだよ」とか。要は「発信って怖くないんだよ」という文化を作ってもらうと、僕らとしてはすごくハードルが下がって、発信の素地ができていくんです。アマチュアが発信者になることがすごく大事なので、(そうなると)やりやすいなと思っています。渋谷:競合というよりは、参考にして一緒に盛り上げるみたいな。前田:そうですね。ライブ配信のサービスにおいて、SHOWROOMをベンチマークにしていただいているサービスもけっこうあるんですよ。それでコンテンツの取り合いとか、協業先の取り合いとかになるけど、僕らは基本的にそこであまり勝負する気はなくて、どちらかというと、どんどんこのマーケットに入ってきてほしいんです。動画やライブ配信もそうだし、Abemaも本当に心から伸びて欲しいと思っています。

箕輪:そう。それで、本当に前田さんにピッタリだと思ったんです。本はヒットしきってもニッチなので、僕は本当に現場に落ちていて、単純に「心が動かされる」とか「ムカつくな」とか「これ、やたら売れているな」というものを、ただ大事にしている感じですね。

前田:結論で言うと、ちゃんと語るべきストーリーがあるのであれば出したほうがいいなと思っているんですけど、別にそんなに売れなくてもいいと思うんですよ。1万冊とか2万冊とか売れればぜんぜんいいと思っていて。「分厚い名刺を持っておく」という感じでいいと思います。名刺1枚では(相手のことが)よくわからないじゃないですか。

田:僕は単純に優しくて頭のいい人と働きたいんですけど、頭の良さは最終面接までにはだいぶスクリーニングされているので、「この人は本当に優しいかな」とか「愛情深いんだな」とか、そういったところばかりを見ればいいようになりました。

売れなきゃいけない」と思った時に起こる変化箕輪厚介氏(以下、箕輪):僕は編集者として、起業家が本を書いたほうがいいなと思う理由が2つあって。1つは前田さんの場合はあまり必要ないですけど、やっぱり感性や勢いでやっている経営者が、「自分はなぜビジネスをやるのか」「なぜ起業したのか」「そもそも世の中にどういう影響を与えたいのか」ということを考えて、しかも人に伝える。しかも売れなきゃいけないと思うんですよ。ここが重要で、「売れなきゃいけない」と思った時に、初めて自分の考えすらもエッジを立てなければいけなくなるんです。要は「売れる」というのは明解なコンテンツなので、「チームも大事だし個人も大事な時代だ」みたいな本なんて絶対に売れないんです。そんなの当たり前だけど、こっち(編集者側)からしたら「どっちかにして!」という話なんですよ。

僕の『死ぬこと以外かすり傷』という本も、本当は「死ぬほど考えて死ぬほど動け」と言いたいんです。でも、そんなの言ってもしょうがないから「考えるな飛べ!」と言うって決めたんですよ。

本を出すときの言語化の過程が修業になるどっちかに寄らないと売れないじゃないですか。そういうふうに、「売れる」ということを編集者と一緒に考えると、自分の考え方・生き方・サービスが磨かれてくるんですよね。地球上でやるべきことはいっぱいあるけど、それが言語化されてくる過程で、「起業家自身が本当にやるべきこと」が削られて明解になってくる。よく本を出した人たちが、その後ガッと伸びてスターになることがあるんですけど、やっぱりその修業の時間が大事なんだなという感じですね。

それと同時に宗教の経典文みたいな力があって。そこまで研ぎ澄まされたものは、信者みたいな人を生み出す。前田さんがよく言いますけど、今あるものが可処分時間や可処分精神の奪い合いになったとしても、最初に精神を奪っていないものに(ユーザーは)時間なんてくれないんですよ。

要は本も、おもしろいだけの本なんて、本当に必要としていなかったら絶対に誰も買ってくれないんです。ただ、1回心を奪われていたら、それだけでペラいポエムでも買ってくれるんですよ。だから前田裕二という人に心を奪われていたら、前田さんが新しくやるサービスにそんなに興味がなくても、「ちょっと触ってみようかな」と思うみたいな。ある意味、本は心を奪うのに一番適しているツールなんですよね。この2つの理由で、起業家は本を出すとガッと伸びていきます。

「はじめに」が書けない起業家に足りないもの

あとは「はじめに」だけでも書いてみるといいと思って。「はじめに」は、「自分がなにをやってきたか」「これからなにを書くか」を書くんですけど、それが書けない起業家はそもそも弱い気がする。本を一冊書こうと思った時に「はじめに」だけを書いて詰まっちゃうと、そもそも詰まっちゃう人にファンは生まれない

とにかく自分の生い立ちと、この本で伝えたいことと、この本を読んでみなさんが明日からどうなってほしいかを書く。それが書けないと、そもそも自分の中のマグマみたいなものが弱い気がしますね。

レッドオーシャンでは、等身大の自分でサービスを考えることが大事

本当に自分の生き方として「これは作りたい」とか、目の前のたった一人のために「これがあったらこの人の人生が変わるはず」とか、ちょっと等身大の自分に戻ってサービスを考えることをやらないといけない。
本当にライバルがたくさんいるところなので、レッドオーシャンだからこそ、自分の心と向き合う・目の前の一人と向き合うことが大事な気がしますね。

プロダクトで差別化できなくなったときに、人で差別化する

僕は、アプリの作り方は2つしかないと思っているんですよ。外を見て作るか、内を見て作るか。外を見て作るというのは、まさにそのデータを見て、流行っているアプリがどうして流行っているかを分析して抽出し、それを自分の規格などに落とし込んで作るアプリです。「今は動画が伸びているね」とか「短尺の動画が伸びているね」とか。

今は中国だと、短いカラオケのアプリがすごく流行っているんです。カラオケバトルのアプリですね。そこで「じゃあカラオケバトルのアプリを出せばいいんじゃないか」というのが、外を見て作るやり方ですね。

内を見て作るやり方は、自分が世の中に対してずっと「これは違うよな、ここは絶対になんとかならなきゃだめだよね」と憤っているポイントとか、小さい時からずっとコンプレックスに思っていることとか、そういう自分の中を見つめて作ることです。「これは解決したいぞ」とか、そういう自分の中から出てくる思いに沿ったアプリやビジネスのほうが永続性は高くなります。

先ほどのコミュニティを作るという観点で、「プロダクトで差別化ができなくなった時に、人で差別化をする」と言いましたが、その裏側にちゃんと人のストーリーがないと、共感者は集まって来ない。サービスは結局プロダクトでは差別化ができないので、人で差別化をするんです。人でしか差別化ができない時代が来た時に、その人の裏側にあるストーリーがすごく重要で、外から作るとストーリーなんて作れないんですよね。

自分の過去の体験や、まったく動画と関係ない人を動画と紐付けてがんばるというのもあるかもしれないけど、どこかで辛くなってくると思います。僕の場合は小学校の時に駅前でずっと弾き語りをしてきて、その時になぜファンがついていたのか、というのが原体験になっていて、それが今に繋がっている。

中を見て作ったら、たまたま外側でも市場性が伸びていたのでラッキーということなんですけど、たぶんこのカンファレンスのほとんどのテーマが「外を見つめてみよう」ということだった思うんですよね。でも、このカンファレンスに来ている目的が「ヒットアプリを目指そう」ということだとすると、それでは必ずしも構成要件を全部満たしていない感じがするんですよ。

本当に目標達成することを考えた時に、こっちの内的動機のパートも持っていた方が有利だと思う。

フラーがプロダクト開発に入ってどんどん抽象化・転用を繰り返してほしいんですけど、もう1つすごく大事なピースが、自分の中を見て、それにストーリーをくっつけていくこと。箕輪さんが言っていた「自分を見つめよう」みたいな。例のヒット作じゃないですけど、『君たちはどう生きるか』ということが、これから、すごく大事なんだろうなと思っています。

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