連載小説『ネアンデルタールの朝』⑨(第一部第2章‐3)
3、
いわき市の実家に戻ったのは、夕方の5時頃だった。
「ずいぶん早かったわね」
台所から母が顔を出す。民喜は頷きながら、車のキーを返した。咲喜は遊びに出かけているのか、いなかった。
「駿ちゃんと将人ちゃん元気だった?」
母の言葉に民喜は、
「うん……」
とだけ答えた。母は一瞬何かを言いたそうな表情を浮かべたが、それ以上何も言わなかった。
「駿と将人と会ってくる」――母にはそう伝えて今朝、民喜は家を出た。駿と将人と会うというのはもちろん嘘だった。二人と会う約束しているのは実際