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おじいさんとボインの姉ちゃん

3年前の話。

彼氏の浮気を知り、傷心モードに入っていた私は、家にいるのも嫌になり、
思い立ったように外に出た。

最初はアテもなく歩いてたんやけど
「とりあえずつぎの駅を目指そう」と
歩き出した。

こんな感じで、川沿いを。

最初は傷心モードで、綺麗な景色をみながら
「私可哀想、でも大自然の中ではちっぽけな悩み」って浸ってたけど
中間過ぎたぐらいから、もう浸る余裕もない。暑いし、同じ景色だし、引き返したくて仕方がない。

とりあえず休憩できるベンチみたいなところを探していると、あるじゃないですか、
さすが川沿い。

ベンチが何個か並んでいて1つにおじいさんが座ってた。
私は隣のベンチに座り、ふーーー、とため息。
お互いの存在に気がついていて
いつでも話せる雰囲気、そんな雰囲気がある。
え?話しかけてくれないの?
え?話しかけるよ?って
言葉にしなくても伝わってくるあの雰囲気が
私は好きだ。
先に口を開いたのはおじいさんだった。
「わし、そこの施設におんねん」
急に彼は自分のことを話し出した。

私は人の人生を聞くのが好きだから、耳を傾け続けた。
名も聞かずやけど、戦後1人でずーーと
生きてきたらしい。
「先のことは考えるな なるようになる そんなもんや」
そうやって、名言もポツリポツリと私にくれた。
話している時彼は寂しそうで、基本話しかけてくれる人って明る人が多かったりするんやけど
笑っていてもどこか寂しそうやった。

でな、目の前にボロボロの成人誌が落ちとってん。それがまたおじいさんの寂しそうな姿に重なって、気になり過ぎて、気になり過ぎて
って記憶が本当は1番濃ゆい。おじいさんの顔は忘れたのにボインの姉ちゃんの顔が忘れられん。

最後に
「久しぶりに若い人と話せて良かった」
またここで、とお別れをした。

やっとの思いで駅に到着。
ご褒美はもちろんお酒やろ?

画質悪くてごめんやで、前の携帯。笑

帰りはもちろん電車を使う。

行きは
歩いて、おじいさんと話して、歩いて2時間。帰りはたったの3分。
電車の窓からさっきまでおじいさんといた河川敷が見える。
おじいさんがまだいるのか探したけど
遠くてわからなかった。

「またここで」と言って3年が経った。
おじいさんは元気だろうか。私はというと、冒頭で登場した彼氏と別れている。
人の集まりが嫌いと言っていた彼は
今日もあのベンチで1人座っているのだろうか。
たぶん、2度と会えないと思うけど
私はいつまでも、あのおじいさんのことを覚えている。

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