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#3 自分の人生は「自分で決める」。母の呪縛から逃れてやっと手にした、自由さ 〜池田愛花さんのケース〜

アート思考、システム思考、認知行動療法など、学術的アプローチで「本当のやりたいこと」「人生を通して追い続けたい問い」を見つけ、深め、広げるためのプログラム「NCS(Narrative Career School)」。NCSを卒業し、自分らしい人生を歩み始めた若者たちが語る過去の私、今の私。

■NCSが「意見を言えない私」を変えてくれた

私は火力発電を中心とした総合エネルギーインフラ事業を行う企業で、技術営業職に従事しています。勤続5年目を迎え、仕事にも慣れてきました。

でも、3~4年目はとにかくつらくて…。約30人いる部署で、女性のエンジニアは私ひとりです。当時、「プロセスを大事にする」「共感する」といったいわゆる“女性的な特徴”が理解されず、先輩や上司とうまくコミュニケーションが取れなくなっていました。ギスギスするので、自分の意見を言えなくなる。だから、「何を考えているか分からない」と不信感が増す。ときには、上司と1対1にもかかわらず数分間沈黙したこともあります。周りの同僚たちは見ていてハラハラだったそうです(笑)。

NCSに入ったのはちょうどこの状態のとき、2019年8月でした。思っていること、考えていることが言えなくて縮こまってしまう。それがとにかくつらくて、いよいよ本気で転職しようかと思っていた頃でした。

NCSのプログラムを体験して思ったのは、「嫌だと感じたことを素直に伝えよう」「やりたいことは正直に伝えよう」ということ。相手の気持ちや考えていることだけに囚われる必要なんてなくて、ときには自分が感じていることを尊重してあげる。それ自体が素晴らしいことだと思ったのです。プログラムの中で、自分の気持ち、相手の気持ち、尊敬している人の気持ち、この三者の気持ちで物事を捉えてみる、というワークがありました。それまでの私は自分と相手の二者視点しか持てていなかったのですが、そこに「尊敬する人の気持ち」という第三者の視点を入れることで、新しい考え方を持てるようになりました。それも大きな発見だったと思います。

NCSに参加して大きな気付きを得た結果、それが仕事にも生きました。自分の意見をはっきりと表明するようになったので、上司や先輩とも良好な関係を築くことができるようになり、逆に私を重宝してくれるようにもなりました。部署では一番年下ですが、いまはひとつのプロジェクトでリーダーもやらせてもらっていて、働くことがとても楽しい。状況が好転して、本当にホッとしています。

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■母の呪縛から解き放たれた日

それ以上に変わったものがありました。それは母との関係です。

私はひとりっこで、幼い頃から大人に媚びるのが上手な子どもでした。エリート志向な母のもとで、どうすれば可愛がられるのか、褒められるのかばかり気にしていたように思います。

母とは異なり、父は根っからの自由人でした。普段から家に居て、仕事をしているのかもよく分からない人で、そんな父に代わって家庭を支えていたのは母です。物心ついた頃からふたりの仲はあまり良くなくて、私が中学2年生の時にふたりは別居しました。母に引き取られた私は、より一層、母に愛されたいと思うようになっていきました。

母は教育熱心だったので、「一番になりなさい」というのが口癖でした。正直、それをプレッシャーだと感じた瞬間は多々あります。でも、母の期待に応えなければ愛されないのではないか、愛されなければ生きていられないのではないか。そう思えば思うほど、私は母に媚びるように勉強に専念するようになっていきました。

社会人になって社内で自分の意志を伝えることができなかったのも、そうやって母に抑圧されるように生きてきたことの弊害ではないかと思います。いま思えば、母には毒親の気質があったのかもしれません。

そんな母との関係を変えるため、私は手紙を書くことにしました。きっかけはNCSで出会った仲間が、同じように家族に手紙を書いていたこと。それを知り、私も正直な気持ちを伝えなければいけない、と思ったのです。

これまでずっと苦しかったこと。もっと私の話に耳を傾けてほしかったこと。そして同時に、母からの愛情も理解していること。手紙にはそういったことを綴りました。ふたりで旅行する機会があったので、旅先でそっと渡しました。

返事が来たのは、後日。「手紙、ありがとう。そんな風に感じていたのは理解できたけど、まだ受け止めきれない」というメッセージが届きました。そこには「これからどんな関係を築いていけば良いのか、お母さんなりに考えてみるよ」とも書いてありました。

それが2019年の冬のことです。それ以来、少しだけ距離ができたように感じています。でもそれは哀しいことではなく、これまで過干渉気味だった母との間に適切な距離が生まれたということ。いまはとても仲が良く、ようやく正しい親子関係ができたと思っています。

そして次は父と向き合う番。先日、5年ぶりに連絡を取り合い、久しぶりに会いました。父との関係はまだ構築中ですが、母との関係も修復できたので、きっと大丈夫だと信じています。


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■自分の人生は「自分で決められる」

もしもいま、「自分らしく生きること」で悩んでいる人がいるのなら、「悩むよりも、考えてみようよ」と声をかけてあげたい。堂々巡りのように同じことを繰り返していても、それは悩むだけ。そうではなく、小さなことでも良いから何かひとつ変えてみる。すると、堂々巡りのループから外れることができて、悩むのではなく、考えることにつながっていくのだと思います。

そして、最終的には自分を変える。それはもちろん、簡単なことではありません。そのために私が普段から取り入れているのは、自分自身を一コマひとコマ観察することです。どんなときに自分の感情が動いたのか、「いま、心が動いた!」と思うシーンを切り取って、頭の中で何度もリピートする。例えば、不安になった瞬間があったとします。そのシーンを何度も思い浮かべていくと、理由が明確になっていくのです。そうしたら、それを文字で書き記す。文字にすることで、自分の弱点や変えるべきポイントが再認識できて、まるで第三者のように受け止められるようになります。そこまで見えて、やっと少しだけ自分を変えることができるのかなと思っています。

その最終地点には、「自分で決める」という選択肢が待っています。NCSに入るまでの私は、いつも「人のせい」にばかりしてきました。でも、人生って、本当はすべて自分で決められるものだと思うのです。母の期待に応え続けるかどうかも、父を許すかどうかも、すべては私が決めること。そう考えられるようになると、人生がより豊かになっていくのではないかと思います。

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