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初めての観能では、あえてわからないことを見つけにいこう #和文化部イベントのためのプチ情報①

マガジン「等身大の能楽入門」初のエントリーです。

突然ですが、来年1月5日にDRESS和文化部のキックオフイベントを開催します。

すでに受付は締め切っているのですが、「一年のはじめに能楽堂でおめでたい能をみて、新しい年を言祝ぎましょう!」という内容のイベントです。

参加者さんのなかに能楽を初めて見る方もいらっしゃるようなので、このnoteでは、当日上演される曲(演目)に焦点をあてて、事前に知っておくとよりイベントを楽しめる情報をお伝えしていきたいと思います。

イベントの参加者さん向けではありますが、初めて能楽を鑑賞するにあたってのポイントにも触れていきますので、能楽や舞台芸術に関心がある方は、よかったら読んでみてくださいませ。

もくじ
・演劇的展開を期待しない
・神様をえがく「脇能」のこと
・無理にわかろうとしなくていい

演劇的展開を期待しない

どんな曲でも、初めて能楽をご覧になる方にお伝えしたいこと──それは、能を演劇だと思って見ないこと、です。

現代は映画や演劇、たくさんの娯楽が溢れていて、私たちは写実的な表現やわかりやすい見せ場というものに慣れきってしまっています。しかし、いざ能を見るときに同じようなことを期待してみると、肩透かしを食らってしまうので注意が必要です。

もちろん、能楽にまったく盛り上がりがないわけではありません……!

能の演出理論のなかに「序破急」というものがあります。その説明は詳しく書かれたリンク先のサイトにお任せしますが、脚本などで場面を「起承転結」に分けるのとはまた別物だと思ってください。

演者は、舞や謡(セリフやナレーション部分のこと)のなかで、この序破急というものを繰り返しているのですが、それを感じとるにはある程度の慣れと経験が必要ではないかと思います。

能は曲によってもまた趣が異なり、なかには劇的な場面展開をするものもあります。さまざまな曲を見比べていくことで、曲を構成する要素や型の様式などが徐々に見えてくるもの。最初は「現代における演劇とは異なるもの」として、能楽の世界を自由な感性で受け取ってみてください。

神様をえがく「脇能」のこと

今回のイベントで上演される能『高砂』は「脇能(わきのう)」といって、神様をシテ(主役)にする曲です。この脇能というジャンルでは、ある人間の前に神が仮の姿で現れ、やがて真の姿を現し、その土地の縁起を語ったり、祝福したりするという内容で、物語性はほとんどないものです。

物語性はないですが、人も神も混在する能楽の世界観を味わえますし、神々の扮装が華やかで目にも楽しいです。明るくおめでたい曲ばかりで、観るだけで清々しい心持ちになれるので、私は大好きです!

無理にわかろうとしなくてもいい

能楽にハマってから、所かまわずいろいろな方に能楽鑑賞をおすすめしてきたわけですが、そのとき高確率で言われるのが、

「よくわからないから、寝ちゃわないか心配……」ということ。

しかし、私は声を大にして言いたい。

「わからなくってもいいんです!」と。

能楽は、いわば総合芸術です。

能面や装束といった視覚的な要素や、謡や囃子などの聴覚的な要素など、自分が気になった要素のどこから楽しんでも良いのです。
登場人物のシチュエーションや感情の動きを克明に語るわけでもないので、そこに描かれたストーリーの行間も、観た人の好きなように想像を広げることができます。

だから「わかるのかな……」と構えすぎないで、総合芸術の利点を活かし、自分は一体どの要素に惹かれるのか、関心や嗜好を探しにいく……という感覚でいいのだと私は思っています。

もし直接的に「ここが好き」というものがなかったとしても、「これってどうして〇〇なんだろう?」という疑問が、関心を育てていくこともあるのではないでしょうか!

とはいえ、最初から最後までチンプンカンプンだと、舞台から受信できることが少なくなるのも事実です。
なので、自分が集中するためにも、ストーリーの流れなど最低限の情報は把握しておくのが良いかと思います。「上演する曲名+能」のキーワードで検索すれば、親切に解説してくれるサイトがたくさんあります。

キックオフイベントにご参加される方は、当日資料を配布しますのでご安心くださいね。(もちろん気になったら調べてみてくださいませ ^^ )

ちなみに…
能楽師さんのなかには、「寝てしまってもいいんですよ」とおっしゃる方もいらっしゃいます。その昔「能を見ながら寝るのは無上の贅沢だ」と言った方もいるとかいないとか……。それくらい能楽鑑賞は脳や身体にとって心地よいものなのだと思います。
もちろん、いびきをかいたり隣の人に寄りかかったりするのはNG。
周りの方への配慮は必要ですが、無理してまで起きようとすると、寝ないように必死だったという記憶が勝ってしまうので、ときには身体の自由にしてあげてください(筆者体験談)。


さて、これまで長々と「わからなくても大丈夫」とお伝えしてきましたが、どうせ観るならわかるようにしたいというお気持ちもよくわかります。

事実、わかると能はもっと楽しい!

ので、次回は能楽を初めて見る人にとって最大の(?)障壁、何を言っているのかわからない問題に触れてみたいと思います。

よかったら次回もご覧くださいね。

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