予算のないRPGの結末
ついにここまで来たとケンタロウは今までの冒険の日々を思い出し感慨に耽った。後倒すべき相手は魔王グリゴリアヌスと闇大将軍バーゲングロースと暗黒法務大臣エルキメデスの三人である。ケンタロウは仲間とダンボールみたいなもので作られた伝説の船カロンに乗りとうとう魔王が住む暗黒島にたどり着いた。ケンタロウはカロンの前に乗っていた豪華客船ヘリオスを思い出し、なんで伝説の船カロンがこんな貧乏くさいのかと訝しんだ。しかしケンタロウは今は魔王を倒す時、島では魔王の部下のバーゲングロースとエルキメデスが至る所に罠を仕掛けていると身を引き締めて中へと入っていった。
しかし何ということか。魔王が住む暗黒島はカロンと同じように全部ダンボールで出来ているではないか。と驚いていたら目の前にこれまたダンボールを身体中につけたバーゲングロースが現れた。
「ハハハハ!ワシ自ら出迎えてやったわ。さぁ覚悟しろ。ウルトラゼスチョンビーム!」
戦いはあっという間に終わってしまった。勝利のファンファーレが鳴り響くダンボールの森のなかで、ケンタロウの足元にこれまたダンボールに身を包んだバーゲングロースが倒れていた。ケンタロウはあまりにあっけなすぎる結末に驚いたが、これはあくまで序盤戦、次は油断できないぞと身を引き締めて先へと進んだ。
その時彼の前に法務大臣エルキメデスが現れた。エルキメデスもやっぱりダンボールに体を包んでいるが、彼はバーゲングロースとは違いダンボールが金色であった。ケンタロウは慌てて塗りたくったようなその金色のダンボールを見て何故か悲しくなった。エルキメデスは彼に向かって人類への憎悪を熱く語ったが、ケンタロウは彼の金色のダンボールに気を取られて話が耳に入らなかった。
「ハハハハ!貴様なんぞこのヘーゲルフィロソフィで殺してくれるわ!」
だがケンタロウはまたあっさり勝ってしまった。エルキメデスは断末魔の叫びを上げて死んだが、ダンボール姿で必死に断末魔をあげるエルキメデス見てケンタロウは泣きたくなった。
しかしないている場合ではない。いよいよ魔王と対決するのだ。魔王はきっと場内にあらゆる罠を仕掛けているに違いない。ケンタロウははぐっと唾を飲み込んだ。いよいよ俺は魔王と対決する。そして彼は城の前に着いた。
ケンタロウの目の前にあったのはまたダンボールで作られた城だった。彼はこの有様にとうとう舐めてんのかとブチ切れてダンボールの城をブチ壊して無理矢理中に入った。そこには四畳半の部屋だった。魔王はちゃぶ台のそばに座っていた。ああ!彼もまたダンボールだった。魔王は動けないほどダンボールを貼り付けて威厳を示そうとしていた。ケンタロウは魔王を見てこんなやつを今まで倒そうとしていたのかという呆れと、貧乏なくせにダンボールでいきがっている同情で胸がいっぱいになり思わず魔王に向かって尋ねた。
「あの魔王さん。なんでそんなに貧乏なんですか?これじゃ倒しがいないじゃないですか?」
それを聞いた魔王は激しく怒ってケンタロウを怒鳴りつけた。
「テメエ!どの口でそれ言うんだ!テメエがサブクエを充実させろとか、もっと街の人々と交流したいとか我儘抜かしやがるから俺たち魔族の予算が減らされたんだろうが!馬鹿野郎が!俺たちの予算は前作の百分の一だぞ!それでどうやって城とかつくんだよ!どうやって鎧とか買うんだよ!全部テメエのせいじゃねえか!テメエに無駄に殺されたバーゲングロースとエルキメデスの恨み今こそ晴らしてやる!」
「やかましい!人は限られた予算でやりくりできるもの。それができぬ魔族に生きる価値なし!覚悟しろ魔王!」
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