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八月になったのでうどんの美味しい食べ方を教えます!

 夏の麺ものといえばやっぱりそうめんか冷麦か冷やしラーメンが代表格なんでしょうか。私もこのクソ暑い日を乗り切るためにこれらの麺ものをよく食べます。最近はうどんまで冷やしで食べる人が多いみたいで、はなまるうどんとか丸亀製麺に行くとぶっかけうどんを注文する方が多く見られます。しかしですねぇ、私は他の麺ものはともかくうどんでそれやっちゃあいけないって思うんですよ。うどんってのはあったかくなかったらうどんじゃないんです。大体何が悲しくて冷えたうどんなんて食べなくちゃいけないんですか。いくら夏だからと言って冷えたものばかり食べていては心の冷えた貧しい人間になって財布の中身も貧しくなってしまいます。そうならないためには普段からおいしいうどんを食べなければいけないのです。

 というわけで一生豊かな生活を送りたいあなたにおススメのおいしいうどんの食べ方をお教えします。まず最初にはなまるうどんでかけうどんを注文してください。店員さんからかけうどんを受け取ったらそのまま薬味コーナーに行きましょう。薬味コーナーには皆さんおなじみの天かすと生姜と醤油が置かれています。この三つの薬味なんですが、実は薬味界の三種の神器と呼ばれている凄いものなんです。天かすは天女の衣と呼ばれていました。この天かすは古代の日本では皇族や貴族だけに大変好まれ、あの有名な藤原道長も、平清盛、源頼朝もまぁ天下人はすべてこの天かすを食していたといいます。天かすを手に入れし者は日本を制すと天下人はよく口にしていたそうです。まぁ天下人になりたくて内裏の貯蔵庫から盗んで食べた不届き物が中にはいたようですが、みんな呪われて死んでしまったそうです。次に生姜です。生姜は植物界の琥珀と呼ばれて古代よりうどんの薬味として珍重されてきました。奈良時代の律令には特別に生姜に関する令が定められていて、生姜は朝廷人のみがうどんに入れられるもの。朝廷の許可を得ることなく、生姜をうどんに入れたものは死罪だと書かれています。それぐらい貴重なものだったんですね。醤油は逆に古代では化け物を呼び出す悪魔の薬と呼ばれて恐れられていたんです。醤油を五回まわしでかけて食べると竜の化け物になってしまった話が弥生時代の故事にあります。かの聖徳太子はあの有名な十七条憲法で醤油を五回まわしでうどんにかけて食したものは打ち首獄門と定めています。

 さて薬味界の三種の神器にまつわる少し恐ろしい話を紹介しましたが、ありがたいことに現代では自由にこの薬味界三種の神器を好きなだけうどんにかけることができます。それではいよいよ美味しいうどんの作り方を実演してみましょう。まず天かすを富士山みたいに山盛りにかけましょう。高尾山ぐらいじゃ全然だめです。次に生姜を大さじ一般分かけましょう。水を含んだ生姜は美しくてまるで琥珀そのものに見えるでしょう。最後に醤油です。醤油は五回まわしでかけましょう。なぜ五回まわしでかけるのかと言いますと、さっき紹介した故事で五回まわしで醤油をかけると化け物になるとありましたが、現代の研究ではそれは竜そのものになると言う事ではなく、竜のように猛烈に元気になることを表現しているんじゃないかって話でした。

 というわけでこれでうどんは完成です。このうどんは天かす生姜醤油全部入りうどんと言いまして、昔から天下人たちが食べまくっていたものです。かの明治の頃、三条実美と岩倉具視は天下を取るために自分たちと薩長に武士たちにこの天かす生姜醤油全部入りうどんをふるまったそうです。しかしなんと美味しいうどんなのでしょうか。天かすはうどんの麺に絡みついて口に入れたそばから私たちを実際に天に連れて行ってくれるし、生姜は実物の琥珀を食べて喉が詰まりそうなほどの渋みを与えてくれます。最後に醤油です。五回まわしの醤油は血液を沸騰させて熱で人を天に浮かせます。なんと美味しいうどんなのでしょうか。もう食べたら確実に語彙力が喪失するほどおいしいうどんですが、なんとこのうどん安いものだとワンコインで食べられるのです。明治以来の西洋崇拝は二百年以上たってもいまだに我々日本人からは抜けません。人はキャビアやフォアグラみたいな高いだけのゴム以下の代物を高級料理だと崇め、この天かす生姜醤油うどんのような真の偉大なる料理に一瞥もくれません。だけどもうそんなくだらない西洋崇拝はもう卒業するべきでしょう。虚心坦懐に物事を見つめて真の偉大なる料理とは何かを見定めましょう。きっとあなたの心にはこの天かす生姜醤油全部入りうどんが浮かんでいるはずです。

 これで今回のうどん講義は終わりです。じゃあまた来月ね。ちゃお!

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