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別れのシーン

「じゃあこれで永遠にお別れだな。もう二度とここには戻ってくる事はないけど達者でな。まぁ。安心しろ。俺はいつまでもお前のことなんか引きずらないから。どうせそのうちにお前のことなんて記憶の彼方から消えてしまうんだから」

「ねぇ、忘れもの大丈夫?私もいつまでもあなたのこと引きずるのイヤだら、出来るだけあなたのこと思い出したくないの。だから出来るだけあなたに痕跡を残して欲しくないの。ワガママだと思うけど私の気持ちわかってね」

「わかっているさ。でも安心しろ。もうお前の部屋に俺のもんはねえよ」

 彼はそう言うと私の部屋からスーツケース片手に外へと出ていった。さよなら今まで楽しい思い出ありがとう。絶対にあなたを忘れてみせるから心配しないで、と涙を流して彼を見送っていたら、なぜか彼が振り返って私を見て慌ててこちらに駆けてきた。

「ゴメンよ。さっき忘れもんなんかねえって言ってだけど大事なもん忘れていたよ。ギターのピックだよ。あのピックがなきゃ俺ダメなんだよ。おい、悪いけど一緒にピック探してくれよ」

 私はそれは大変と彼と一緒にピックを探してやっと見つけた。そして再び別れのシーンだ。おっちょこちょいで物忘れの激しすぎる彼。そんな彼と別れるなんて切なすぎるけどこれも私たちのデスティニー。さよならダーリン。きっと誰かと幸せになってね。私、絶対あなたを忘れてみせるから。彼はさっきと同じように日のさす街へと去ってゆく。私には見送ることしかできないだけど……。と思っていたらまた彼が駆け足で戻ってきた。

「あの、オアシスのCD忘れてたんだ。ほら、ノエルとリアムのサイン入りのCDあっただろ?あれは俺の一生の宝物なんだ。お願いだから一緒に探してくれ!」

 彼はオアシスファンでずっとギャラガー兄弟をリスペクトしていた。そんな大事なCDをずっとどっかに置きっぱにするとはどういう神経してるんだと思ったけどそんな大雑把すぎるところも私は好きだった。だけどもうそんな彼に会えないなんて。さよなら今度こそお別れだね。私は三度目のさよならをする二度あることは三度あるというけど三度ある事は四度もない。だからさよならと光の街に飛び出す彼を見送っていたら、なんとまた彼が慌てて戻ってきたのだ。彼は息急き切って私に言った。

「一番大事なもん忘れていた。金だよ。この間貸した五千円早く返してくれ。利子付きでもう二万になってるから早く二万耳揃えて返してくれ。でなきゃ俺一生お前に付き纏うぞ。早く俺のこと忘れたいんだろ?だからさっさと二万耳揃えて出せよ!」

 私は彼の持っているスーツケースをひったくって外に放り投げて叫んだ。

「さっさと出て行け!このクズが!」


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