歴史の真実：紫式部

　昔は国文学者の中に紫式部は男だったという主張をする人がいましたが、現代においてはそのような主張をする人はほとんどいません。昔の国文学者が何故紫式部を男だと主張したのかと言いますと、多分儒教的な偏見に縛られて、女如きに日本文学の最高峰たる源氏物語が書けるはずがないと決めつけていたのだと思います。こんな偏見は現代においてはナンセンス極まりないものです。やはり現代の我々はあらゆる偏見を捨てて事実のみを見つめて判断すべきでしょう。さて、皆さんは紫式部は男女どちらだと思いますか？

　いきなり結論から申し上げますと、やっぱり紫式部は男でした。この結論を読んだ方たちは。上に書いた事はなんだったのか。偏見を排して虚心坦懐に事実だけを見つめて判断しろだなんて書いといて出した結論がこれかよ、と思われるかもしれません。しかしです。紫式部を男性だと決めつけるのは確かに偏見ですが、女だと決めつけるのもまた偏見なのです。紫式部はおんにゃの子だったの？ローラースケート履いた光GENJIを推していたの？なんて紫式部だって自分のことをろくに知らない人間から勝手に断じられたくないでしょう。私は生前本人を知っているからあえてここに事実を書くことができるのです。だからもうハッキリと書いてしまいます。というか思いっきり暴露してやります。

　何度もしつこいですが紫式部は男でした。いや、性格に言えば確かに紫式部は女でしたが、『源氏物語』を書いた人間は男だったのです。というか私が源氏物語書いたんです。当時は平安時代で貴族たちはみんな平安のまったりしまくった日常を送っていました。そんなある日の事です。あのルックスしか取り柄のないビッチの紫式部がゴーストライターの私にいきなり物語書けとか命令したのは。その時私はまたかよと思いましたね。紫式部に会うまでの私はその日暮らしで貴族の和歌の代筆なんかして日銭を稼いでいたんです。それをどっかから聞きつけたらしい紫式部が私のボロ屋に来てゴーストライターとして雇いたいとか誘ったんです。その誘いは貧乏人であった私にとってはまさに救いでした。あの皇女の家庭教師を務めている紫式部に雇われるんですからね。だから私は何も疑問を持たず喜んで彼女のゴーストライターになったんです。だけどそれが間違っていました。彼女はビッチがそのまま動いているような人間で、私にやたら和歌やらエッセイやらを書かせたのですが、報酬はアワヒエだけだったんです。私は怒ってふざけんな！もう何もかもバラしてやるぞと脅したのですが、彼女は眉一つ変えずにお前の代わりなんかいくらでもいるんだから、って言うか、お前みたいな髭黒で不細工な男があれは僕ちんが書いたんです。とか言っても誰も信じないよ。とのたまったんです。確かにそうでした。私は生まれながらに毛が濃くて髭黒とか言ってバカにされていたんです。だから私は観念してそのまま紫式部のゴーストを続けることにしました。そして紫式部のやつがとうとうあれを書いてくれと言ってきたんです。それはもう皆さんご存知の『源氏物語』です。紫式部の奴はこう言いました。あのさ、皇女様がさ、長い物語書いてくれって言ってんの。アンタ書いてくんない？私、長いもの書くのマジだりいし、大体字なんかもう書きたくねえって感じだし、だからお願い。玄米やるからチャチャっと書いて。その頃の私は今までの彼女の仕打ちに慣れてしまったのか、玄米さえもご馳走に思えてきて、涙を流して紫式部の頼みを受け入れました。それからはもう地獄でした。私の書いた源氏物語が皇族や貴族にバカ受けしたので、紫式部は私に早く続きを書けと脅すようになりました。私が続きなんてそんなに簡単に書けないと言うと紫式部は怒って私に刃先を突きつけて書かなかったら今すぐ殺すとか言って来たんです。それにビビった私はもう無理矢理頭の中か自分のハーレム願望を絞って書き続けました。しかしそうして書き続けても報酬は一日一杯の玄米だけです。だから私はブチ切れました。全部俺が書いているのになんで報酬が一日一杯の玄米なんだよ。普通だったら屋敷ぐらい寄越すだろうが、それをこんな二畳しかない物置小屋に閉じ込めやがって！テメエは男遊びにかまけてなんもしねえくせによ！よしこうなったら源氏物語の作者は俺だってバラしてやる！今度からは俺の名前で源氏物語売ってやる！そしたらお前は人生終了！俺は源氏物語の本当の作者としてベストセラー作家の仲間入りだ！と私は紫式部に捲し立ててやりました。しかしそれでも、アワヒエの時と同じように、彼女は眉一つ動かしませんでした。紫式部は表情を変えずに私の言う事を黙って聞いていましたが、しばらくして無表情のままでこう言いました。

「あなた、バカじゃないの。源氏物語を今度から自分の名前で書く？あのさ、源氏物語は私みたいな美人でセレブでインテリな女が書いてるからウケてるわけ。アンタみたいな髭黒で非モテで身長170cm以下の人権がない男が書いたってバレたらみんな読まないどころか、騙されたって言って炎上するだけじゃない。もっと冷静になって考えたら？また書く気になったら毎日チーズの一切れぐらいあげるからさ」