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大人のための少年漫画

 第7ゲーム。もはや鹿島勇気は絶対絶命だった。あと一つポイントを取られたらそこで終了だった。誰もが最初から鹿島が負けると思っていた。大体はなから無謀な挑戦だったのだ。いくら鹿島が強くてもこれじゃ勝てるわけがない……

「あきらめろ鹿島。大体シングルでペアに勝つなんて無理なんだよ。シングルでペアになってくれる奴がいないお前とペアの俺たちとじゃ勝負にはならねえんだよ。素直に負けを認めてこっから出ていけよ。ここはダブルス専門のテニスコート。お前みたいなペア作れねえやつの入って来るところじゃねえんだよ」

 セクシーギャルのペアを腰に抱いた高島登が膝をつく鹿島を見下ろして勝利宣言をした。それを聞いた野次馬は一人シングルで来た鹿島を一斉に嘲笑する。しかし鹿島はそれでも立ち上がりラケットを握る。

「俺は一人じゃない!俺には恋人がいるんだ!お前たちより遥かに強い愛で結ばれたたった一人の恋人が!」

「ば〜かどこにそんな恋人いるんだよ。妄想も大概にしとけよ!いっぺん頭にボール当てられてまともになれ!」

 コートには鹿島に対するヤジが飛ひまくった。野次馬は高島に向かってさっさとこのバカとの試合を終わらせろと煽り立てた。高島はそれに対してセクシーギャルの肩を抱いて今すぐ終わらせてやるぜと宣言した。

 しかし野次馬たちのそばで試合を見ていた一人の男だけは鹿島の異変に気づいていた。おかしい、あの不細工な男はだんだんシングルじゃなくなりつつある。見ると確かに鹿島は二重にぼやけていた。これはまさか……

 鹿島は突然絶叫した。そして突然しゃがみ込むとその中から一人の可愛い女の子が現れたのだ。その場にいた者たちは突然現れた鹿島と同じユニフォームを着た美少女の登場に驚愕した。高島は鹿島が自分のペアの女より遥かに可愛い美少女の登場に激しく動揺した。どよめきの中鹿島は立ち上がった。そして美少女の肩を抱きながら力強く言いこう言い放った。

「ずっとこの時を待っていたんだ!果てしなく打ちこまれながら俺はずっと妄想パワーを高めて彼女を生み出そうとしていたんだ!高島もうこれで俺もペアになったぜ!さぁこれで俺とお前は五分さぁ行くぜ!」

「クソォ!クソォ!そんな事が、そんな事があり得るはずがない!男が分身して可愛い子とペアになるなんて!ああ!やめろぉ〜!」

「うるさ~い!これは今まで俺を散々馬鹿にした報いだ!おりゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」

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