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現代日本の預言書『楢山節考』を読む!

 深沢七郎『楢山節考』をこの間間久しぶりに読んだ。昔さらっと読んでただ暗い話だとすっかり忘れていたが、昨今高齢化による社会保険の若者への負担増が騒がれるようになったのを見て、深沢七郎のこの棄老伝説を扱ったという小説を思い出して改めて読んだのである。読み終えた瞬間私はこの小説が山村を舞台にした陰気な話ではなく、今の日本の現状を完璧に預言した内容である事に気づいて深い衝撃を受けた。

 この小説には高齢化社会の現在の日本の状況が山村というアレゴリーの形で描かれている。この村は今の日本のように高齢者のせいで貧しいままだったら、いずれ廃村になってしまうだろうという状況が冷徹に描かれる。しかし『楢山節考』預言書たらしめているのは単に今の日本の姿がリアルに描かれているからだけではない。本小説はこの未来なき日本を改善し、次世代へと繋ぐ方法が、完璧なプランで提示されている事なのだ。

 主人公は老いた母を棄てるために山へと登ってゆく。だが母は泣いて嫌がるどころか自ら率先して山へと行こうとせがむ。作者は母が山へ登るまでの経緯を詳しく書いていないが、恐らく息子はデータを並べて母のために使わなければいけない費用。また老い召した彼女の介護のための精神的負担。最後にボケ切って皆に嫌われて死ぬよりも愛情が残っているうちに最期を迎えさせたい。そんな事を母にわかるように噛み砕いて説得したのだろう。母もまた息子の考えを深く理解したが故に受け入れたからこそ、息子たちの負担、そして山村の若返りのために自ら死におも向こうと決めたのだろう。

『楢山節考』は多くの教訓を我々に教えてくれる。これはきっと深沢七郎が現代の若者たちに老人を生かしておいたらどうなるかという陰惨な未来と、そしてそのための解決方法としてどう計画的に確実に老人を減らしてゆくかについて小説の形を借りて書いたメッセージなのだ。私はこの小説を読み、恐ろしさと怒りで体が震えるのを感じた。このままいいのだろうか。このまま現状を放置していたら若者の未来は老人たちによって完全に殺されてしまう。その前に我々が早急になすべき事は何か。その答えは全てこの小説に書かれている。

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 っていう事そのうち誰かが書きそうで嫌ですねぇ〜。こんな事書いちゃいましたが、勿論ネタで深沢七郎の『楢山節考』はやっぱり名作なんでみんな読んであげてくださいね。

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