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一万年の孤独

 人間は孤独だ。どうせ他人とはわかり合えない。これはもう客観的な事実でしかない。ここに一万年生きてきた人間がいる。彼は原始時代からずっと孤独を噛み締めて生きてきた。周りの人間が家族を持ち、そして子供にすべてを託して死んでゆくのを横目に見ながら静かに暮らしていた。人間は孤独だ。それが死んでゆく仲間たちを見た彼の率直な感想であった。おそらく彼が文章を書けたら人類史上最初に哲学者になれたかもしれない。人間は孤独だ。彼はその思いを胸に秘めウホウホと森を散策していた。そしてその彼をとうとう現代人が捕獲した。彼はいきなり上野動物園に連れていかれ見世物にされた。そしてチンパンジーにしてはやたら物覚えがいいと人気者になってしまった。彼は見物人を目の前にして本当に人間はわかり合えないと実感した。彼がウホウホとシリアスなことを行っても見物人は笑うだけなのだ。人間は孤独だ。そして人間はわかり合えない。彼は一万年を生きてきてこの事実を改めて思いしれされた。彼は見物人の笑いに耐えられずウホウホと泣いたが、見物人はその彼を見て猿のくせに泣いてやがると大笑いした。


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