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僕たちはみんな人間っていう箱に入った宇宙人なんだ

1か月ほど前、有村架純主演の『ちひろさん』という映画を観た。
1か月前というと、私たち夫婦はちょうど新居に引っ越したて、新しい仕事も始めたての頃。
慣れないことだらけの日々だった。
不自由な環境に苛立ったり、力不足の自分に落ち込んだり、毎日無意識に力んでは自分を追い詰めていた私に、

「完璧なんてない、あなたはあなたで良いじゃない」

と、言ってくれたような、とても優しくて穏やかな映画だった。

この記事のタイトルにもした、

「僕たちはみんな人間っていう箱に入った宇宙人なんだ」
「一人ひとり みんなやってきた星がバラバラなんだから 分かり合えないのが当然なんだよ」

映画『ちひろさん』

という言葉は特に、海外移住1年生の私に深く染み入った。

日本人同士でも分かり合えない人は五万といるのに、フランスという異国の地で、義理の家族みんなと良い関係を築きたい、接客するお客さん全員に喜んでもらいたいなんて、私はどんだけ貪欲で無理な努力をしていたのだろうと、気付かされた。
義理の家族も所詮は他人。無理して作った自分で気に入られるより、少々嫌われても良いじゃない。
私の接客がはまるお客さんもいれば、そうじゃないお客さんもいて当然。

「みんな私とは違う星の人なんだから」
そう思うと心が軽くなって、何事もいい意味で適当にできるようになった。

そしてもう一つ気に入った言葉がこれ。

「みんなで食べた方が美味しいってよく言うけど、みんなで食べても美味しくないものもあるし、1人で食べても美味しいもんは美味しいよ」

映画『ちひろさん』

私は高校の時から友達と机をくっつけてお弁当を食べるのが苦手だった。その時間は嫌でも人と輪になって談笑しなきゃいけない。孤食は友達がいない証拠で寂しいことなんだ。そんな暗黙の了解のもと、いつも無理して誰かとお弁当を食べていた。友達が嫌いだったわけではない。でも、一人の時間が最大の休息である私にとっては、みんなとワイワイ食べるより一人で黙々と味わうお弁当の方が美味しく感じるし、気持ちも落ち着く、ただそれだけだった。

孤独を受け入れることで孤立するのは大人になった今でも怖い。けれど、ちひろさんがサラッとそれを肯定してくれたことで、私はとても救われた。
自分にとっての幸せや当たり前は自分で決めればいいのだと。

私だけでなく、この映画を観る多くの人が、彼女の不思議な包容力に癒され、元気をもらえることだろう。

寂しい時、疲れた時、自分の在り方に迷った時、私はきっとまた、ちひろさんに会いたくなる。

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