なつめ

現在は年間300冊ほど読んでいます。無類の本好き。読んでよかった本の紹介をしていきます…

なつめ

現在は年間300冊ほど読んでいます。無類の本好き。読んでよかった本の紹介をしていきます。内向型です。

最近の記事

〈読書記録〉照子と瑠衣

〈ネタバレあり〉 70歳からの女二人の逃避行 今までの鬱屈された人生をやり直すかのように、2人で今いる生活を飛び出していくシスターフッド小説。 客観的に、2人のやってることはハチャメチャだ。 人の別荘に忍び込み、自分たちのアジトにしてしまう。 夫の口座から「分けてもらう」と称してお金を引き出してしまう。 でもね。きっと読者は爽快だ。自分にはできない逃避行を照子と瑠衣が代わりにやってくれている。 理不尽な要求をする若者や客にスパッと言い返したり、自分たちの気の赴くまま

    • 〈読書記録〉八秒で跳べ

      なんと瑞々しい物語なのだろう。 遥か昔の高校時代を思い出させてくれた。 確かにそこにあった部活への情熱と淡い恋愛感情のようなもの。そして友情。 主人公の宮下景は淡々とどこか冷めた調子で部活をし、バレー部のレギュラーだが情熱らしきものは感じない。 ある日、漫画を描くという真島綾との出会いをきっかけにケガをしてしまい、1か月、まともに練習できなくなる。 その間に、補欠の北村がみるみるうちにうまくなっていく。 逆に、久々の試合でうまくプレーできない景。部活仲間の 梅太郎とも

      • 〈読書記録〉じい散歩 

        夫婦合わせて180歳。散歩が趣味の新平と妻の英子。 息子は、3人。借金まみれの3男。次男は、自称「長女」、長男は、引きこもり。 そんな明石家の日常が綴られる本書。毒づく新平が甲斐甲斐しく妻の世話をし、息子たちを甘やかす姿がなんとも言えず胸にぐっときてしまう。 妻の英子は、少しぼけてきていて散歩にいく夫の浮気を疑っている。その姿がかわいく描かれているのがいい。新平を慕っているのが伝わってくる。 90を超えて妻の面倒をみる新平にとって散歩は重要な息抜きである。好きなコーヒー

        • 〈読書記録〉となりのナースエイド 知念実希人著 ドラマもいいよ

          ドラマ『となりのナースエイド』が面白いので原作も読んでみた。 原作はどちらかというと「竜崎大河」の物語色が強いような気がした。彼の生い立ちから手術にかける思い、その原動力などが細かに描写されていて、頭の中で高杉さんのイメージで読み進めた。 印象に残ったエピソードは、『二人三手の旋律』結合双生児のピアニストの物語。これも澪が、患者の本当の想いに気が付くのだけれど、いつも一心同体の彼女らの一人とだけ話すというシチュエーションを作り、話す場面がよかった。 原作の桜庭澪は、ドラ

        〈読書記録〉照子と瑠衣

          〈読書記録〉2月新刊『推しの殺人』このミス大賞・文庫グランプリ受賞作を読んだ

          大阪発のアイドルグループ『ベイビー★スターライト』は、 初期メンバーのルイと元センターのテルマ、現センターのイズミの3人組。 元センターのテルマは、お嬢様で何の苦労もせず、順調にセンターで売り上げを伸ばすイズミが気に食わない。 通称『ベビスタ』は、グループ内に格差がある上、グループ全体の売り上げは落ち続けるなど危機的な状況にある。初期メンバーのルイは、23歳になりアイドル卒業を考えている。 そんな中、メンバーのひとりが、殺人という罪をおかしてしまう。その現場に集まったメ

          〈読書記録〉2月新刊『推しの殺人』このミス大賞・文庫グランプリ受賞作を読んだ

          〈読書記録〉宙わたる教室 藤竹先生が魅力的 最高の1冊

          最初の章で、定時制高校で今にも学びをやめてしまいそうな生徒・岳人の内なる想いと才能を見出し、彼の弱点であったある障害を見抜き、それを補う方法を教え、科学への興味を誘う藤竹という教師にまず魅力を感じる。 藤竹の授業は、まるで理系ができない私にも興味を持たせてくれるものばかり。「みそ汁で積乱雲」「タバコで青空」「お酢のマグマ」こんな実験を見せられたら、科学を好きにならずにはいられない。 そして、ことあるごとに彼が話す「なんとか手を動かす大切さ」が刺さって仕方ない。どんな環境で

          〈読書記録〉宙わたる教室 藤竹先生が魅力的 最高の1冊

          〈読書記録〉祖母姫、ロンドンへ行く 軽快で楽しいエッセイ

          「一生に一度でいいからイギリスに行きたい。お姫様のような旅がしてみたいわ。」 この一言から、実際に旅行に行くことになる祖母と孫。 祖母は、人生最後の海外旅行。「できるだけの贅沢を」という叔父たちの支援を受けて、5泊7日のプランは贅沢三昧のプラン。 昼間は、足元がおぼつかない英語のできない祖母をつれて秘書のごとく甲斐甲斐しく世話をする。 夜は、祖母の就寝後、バッドガールとなり夜遊びをする。在英時代の友だちと会うなど満喫。 そんな筆者の軽妙な語り口。テンポの良さ。時々出

          〈読書記録〉祖母姫、ロンドンへ行く 軽快で楽しいエッセイ

          映画 『夜明けのすべて』

          原作が大好きなので、映画を見に行った。 一番の理由は、藤沢さんと山添君のイメージに主演の二人が重なったからだ。 上白石さんの演技は素晴らしかったし、松村さんの山添君感は間違いない。 見終わって思ったことは、 「よかった」 小説『夜明けのすべて』の「夜明け前が一番暗い」のメッセージも伝わってきたし栗田化学のみなさんと主演の二人から、支え合いのよさや優しくもあたたかいお節介の大切さが、あふれ出ていた。 人々の生きづらさを少し軽くしてくれる珠玉の物語。 いい映画だと思う。

          映画 『夜明けのすべて』

          表紙買いすることありますか?

          最近、表紙の人物が気になることがある。 イラストに力がありすぎるのだ。 内容は、ともかくその表紙が魅力で本を購入してしまうのだ。似たような経験をお持ちの方がいると嬉しい。 昔は、表紙に重きを置いていなかった。購入の決め手は主に筆者や内容。 これを言うと怒られるかもしれないけれど、最近、表紙が気に入って買った作品が、自分にまったく合わなかったということもある。 もうイラストを愛でるために購入しているようなものである。まあ、いいか。 ちなみに、私が一番気になる表紙は、雪

          表紙買いすることありますか?

          芥川賞候補 アイスネルワイゼン

          おかしさに彩られた悲しみのノクターン ちょっとした悪意のある言葉が琴音を追い詰めていく。そして、彼女自身も悪意のある言葉を出し続けるのだ。 その言葉の循環が切れることなく、うわすべりしながら心を蝕んでいく。 こんなクリスマスイブがあっていいのだろうか。 お節介で心配性なピアノ教室の生徒の母親は、琴音が恋人とうまくいっていないことも知らず、「プロポーズされるかも」と言う。 予定があると言っているのに、クリスマスイブにピアノの伴奏をするよう押し付けてくる小林。 自己中

          芥川賞候補 アイスネルワイゼン

          竜泉家一族シリーズがおすすめ

          特殊設定×本格ミステリの「竜泉家の一族」シリーズが面白かったのでおすすめします。 読む順番 このシリーズには、加茂冬馬、竜泉佑樹など共通する人物が出てくるので、刊行順に読むのがおすすめです。 1.時空旅行者の砂時計 2.孤島の来訪者 3.名探偵に甘美なる死を 異なる特殊設定 どの作品も特殊設定があります。 好みのものがあれば、その作品から読んでも内容的には十分楽しめます。 1.タイムトラベル 2.人ではない何かのいる島 3.VR空間と現実での殺人 内容紹介 シ

          竜泉家一族シリーズがおすすめ

          置かれた場所であばれたい

          エムコさんのエッセイ本を読んだ。 驚いた。彼女は、なんと強く生きているのだろう。 エムコはゴリラ クラスで大ヒットとなるこのナンバー。 いやいや懐が深すぎである。私なら、自分がゴリラなどという歌を歌われたら落ち込んでしまう。でもエムコさんは楽しんでしまう。これが彼女の強さだ。 学生結婚と子育て このエピソードは最高である。 もちろん家庭科の先生は素晴らしい。 それをエムコさんの文章にすると、また心に沁みる。 このエピソードはぜひ本書でご覧いただきたい。 一見の価値あり

          置かれた場所であばれたい

          小説の中の行ってみたいお店

          お疲れ様です。 今日は、私が読んだ小説の中で、ぜひ行ってみたいと思ったお店をご紹介します。 1.マカンマラン 一件目は『マカン・マラン』二十三時の夜食カフェです。 自分と同じような悩みをもったお客さんが、このお店で、シャールさんの優しい料理と言葉に癒される様子を見て不思議に読んでいる私の心も癒されます。 出てくるメニューは「春のキャセロール」「金のお米パン」「世界で一番女王なサラダ」「大晦日のアドベントスープ」 どれも栄養たっぷり。 シリーズ4冊ともおすすめです。

          小説の中の行ってみたいお店

          夜明けのすべて

          瀬尾まいこ先生の『夜明けのすべて』の読書記録です。 一部、内容に触れている部分があります。 PMSの美沙とパニック障害の山添君の物語 月経前症候群(PMS)でイライラが抑えられない時期がある美沙とパニック障害を持つ山添君の物語。 人に気付かれにくい病気は、厄介だ。 本人の意思に関わらず、苛立ちが止まらなかったりパニックになったりすることはつらい。 山添君は、パニック障害を人に知られたくない。ストレスに弱い人がなると思っていたのにまさか自分が、という思いがある。親にも

          夜明けのすべて

          本屋大賞2024おすすめは②

          前記事「本屋大賞2024おすすめは…①」に引き続き、本屋大賞にノミネートされた5作品をご紹介します。 この中で私のおすすめを最後に発表します。どうぞ最後までご覧ください。 今回は、児童書がノミネートされて驚きました。知念先生の本からミステリの世界に入る子どもたちはうらやましいです! そして、そして‥‥この5冊から私のおすすめは、『星を編む』です。正直、前回大賞をとった『汝、星のごとく』の続編にあたる本書は、ノミネートされるとは思わなかったので嬉しいです。 ちなみに、私

          本屋大賞2024おすすめは②

          本屋大賞2024おすすめは…①

          本屋大賞2024ノミネート作品が発表されましたね。 全国の書店員さんが選んだいちばん!売りたい本です。 ノミネートされた作品を紹介します。今日は前半5冊。 すべて読了済みです。この中で私のおすすめは・・・ (最後にお知らせしますね) どの作品も本当に素晴らしかった! この中で内向型の私が一番心に残った作品は 『スピノザの診察室』です。 現役医師の夏川先生ならではの、人の最期に寄り添う物語。 しみじみ考えさせられる「幸せとは」 おすすめです! 次回は、後半5冊をご紹介します。

          本屋大賞2024おすすめは…①