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直木賞候補作 われは熊楠 岩井圭也著を読んで

上品かつ生々しさもある小説。
「奇人にして天才」生物学者の南方熊楠の物語である。
 
熊楠は、幼児の頃から頭の中で響くいくつもの自分の声「鬨の声」が聞こえていた。この声をかき消すには、物事に集中するよりほかない。

類まれなる記憶力の持ち主。そして癇癪もち。自分自身の頭の中と折り合いをつけていくためにもひたすら興味のある学問に没頭する。

座学が嫌いで、外へ出かけ生き物を採集したり観察したりするのが熊楠の学問。

父の死後は、幼い頃から天狗(てんぎゃん)と慕ってくれる弟からの仕送りのみが、熊楠の生活をつないでいた。

留学から戻ってから紆余曲折あるものの、研究を続け、妻子と暮らすようになる。妻や息子に対する情を大切に育む熊楠。平凡に成り下がっていくように見える熊楠を弟・常楠は気に入らない。

この兄弟の諍いは、読んでいてつらかった。小さい頃、心から兄を慕い、兄のために握り飯を作ってくれた弟。

実際問題、働かず、逃げるように留学し、家業は弟にまかせ、自分は好きな研究に没頭する。こんな生き方では疎まれても仕方ないのかな。

熊楠は、恵まれている。その能力をまわりから認められ、支援してくれる友人や家族がいる。留学も生活費もほとんど家族からの支援してもらっていた。

そんな中、長男、熊弥が精神疾患を患ってしまう。


最期は…
と、熊楠の一生を描き切っている作品なのですが、面白かった!

人の生き方。万物との関わり。
いろいろ考えさせられる。

直木賞候補作にふさわしい作品。
この小説が直木賞ならいいな。でも、地雷グリコが強そう…。

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