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令和元年の人生ゲーム 麻布競馬場 を読んで

直木賞候補作。読みやすい文体なのに難解と感じる。Z世代の生き方を問う物語…と言えるのかな。

第1話 平成28年
語り手は、慶応義塾大学に入学した僕。ビジコン運営サークル「イグナイト」に入った。目指すは、アツい志をもった代表の吉原。代表戦に敗れ、ビジコン運営を批判してくる沼田は嫌な奴だ。

第2話 平成31年
語り手は、早稲田大学を卒業して一流企業宇治田社長率いる「パーソンズ」に入社した私。「新人賞目指して、1年目からアクセルべた踏みでバリュー出しまくってください」と新人社員に語り掛ける社長。出世ルートに乗るための不可欠なステップと言われる”新人賞を目指す”と研修で決意発表する社員に多い中、沼田は「クビにならない最低限の仕事をして、毎日定時で上がって、そうですね、皇居ランでもしたいです」と話し、実際にそれを実行する。

第3話 令和4年
語り手は、社会人7年目を迎えた僕。大学生向けシェアハウス「クロスポイント」にチューターとして入居。そこに、パーソンズで新人賞をとった沼田もチューターとして参加。意識高い系の苦悩。結婚、人間関係の難しさが描かれる。

第4話 令和5年
語り手は「杉の湯の未来を考える会」にジョインした僕。
沼田は、昨年の年末から杉の湯の四代目、寛人を献身的に支えている。

沼田はかつての吉原と寛人をかさねているのだろうか。
吉原と離れたことはトラウマで、自分が本当にやりたかったことをやろうとする沼田の出発の章なのだろうか。それともやはり、早すぎる余生を過ごしているのだろうか。
いや、沼田には再出発してほしい!

Z世代への皮肉、愛を求めるだけのテイカーへの批判?執着?、誰かに決めてもらおうとする怠慢、がんばっても報われない時の身の振り方、自分に残された可能性の総量、不安、不安、不安、未来への閉塞感、変わること、変わらないこと…

すごい勢いで何かが文章から噴出している。
ページ数は多くないのに、とてもエネルギーを使う読書だった。ふぅ。たまには、こんなのもいい。

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