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自己同一性〔アイデンティティ)

「第一楽章」母の祈り

私という存在は何処にあるのだろうか

[私の幸福]というたった一つの欲望の為に私は、私が持っている全てを犠牲にしたきた 

時には人を利用し騙したこともあったかもしれない 

騙したといえば私は私自身も騙し続けているのではないか 

私が悪魔に売り渡したモノの名前がどうしても思い出せない

色欲と怠惰の合間に私が見た夢がどうしても思い出せない

今こうして金も家族も地位も手にしたのに私 の喉から手が出るほどの欲望はいつ尽き果てるというのか 

不満と渇望が私の心を支配している 

一番欲しかった家族にさえ私は優しくすることができない

その優しさを持っている他人が羨ましくて自分と同じ目に合わせてやりたいと思ってしまう 

私は始めからこんな自分ではなかったはずだ 
理不尽な目にもたくさんあってきた
私の過去は、失敗は、私自身のせいではないのに

私には全てを手に入れるだけの価値が存在するはずなのだ

なのに私の存在が分からない 

心の真ん中は空虚なままでそれを埋めるために私は子宮に子を宿す

この子こそ私の心を慰め、私を鎮め、私の存在を確固たるものにしてくれるに違いない

悪魔よ、もう私の元に来ないでくれ
私は既に神に祝福されたマリアなのだから



「第二楽章」子の母への祈り

母よ、何故に気がつかない

あなたが悪魔に売り渡した魂で手に入れたのは私たち子らと家族であるのに 

天からあなたを見守り、あなたの子になりたいと切に願って此処に降り立ってきたのに

あなたの心が荒ぶるたびに、私たち子らは嘆き悲しんでいる

母よ、今のあなたの全てを受け入れてくれる存在が此処に居る事に気付いてほしい

母よ、私たち子らはあなたを全力で愛している

この声が母に届いてあなたの魂が私たち子ら内にあることに気づいてほしい

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