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花火師

 丹精こめて作ったこの花火も、打ち上げてしまえばそれまで。何とも、儚いものだろう。

 けれど、その一瞬のために、その瞬間のために、命を燃やしている。

 夜空に咲く、花たち。
 夜空に散る、花たち。

 刹那に見る生と死が、こんなにも輝くときはないだろう。

 なのに……。

 この、物悲しさは何だ。

 この、沈む気持ちは何だ。

 これまで感じたことのない、打ち震える心は、何だ。

 ……いや、わかっている。目を逸らしているだけだ。

 命など、刹那に散ってしまう。振り向けば、そこには死が迫る。

 この手に抱く消えた灯火がもう一度花を咲かせるとしたら、もう、これしか、ないのだ。

 手が震える。心が震える。膝が崩れる。雫が溢れる。

 頭から、疑念が拭えない。なぜ、なぜ、なぜ。

 力強くその命を抱きしめて、抱きしめて、口づけをする。

 そうして打ち上げた命は芽吹き、幻想に散り、見るものは歓声をあげ……

 すべて
 夜空に
 溶けて
 消えて
 いった

 

いつも、ありがとうございます。 何か少しでも、感じるものがありましたら幸いです。