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【連載コラム】学問のススメならぬ「留学のススメ」その2 交換留学という手堅い選択肢!大学なら追加費用無しでいけるケースも

交換留学という手堅い選択肢もある!

英語講師という職業柄、留学の相談を受けることがある。その際、在籍している学校や進学予定の学校に「交換留学制度」があるかどうかをたずねる。というのも、高校や大学の中には交換留学の提携校が充実している学校があるからだ。

交換留学というのは、日本の学校と海外の学校が1対1で提携し、両校がお互いに留学生を受け入れる制度だ。通常、交換留学の期間は1年。留学提携先の学校数や留学生の受け入れ数(送り出し数)は、学校によって異なる。

交換留学の特徴

なぜ、交換留学を勧めるのか?交換留学は提携時に両校の担当者が現地訪問し、どんな学校か、どんな地域かを事前確認している。そのため、通常の生活をおくる限り安全性が高い。

また、相手校から預かる生徒への配慮がある。例えば高校であれば、多くの場合はホームステイ先を両校とも確保している。現地の家庭で生活するので、困ったことがあれば助けを求められるし、現地の言葉を日常生活で使用できる。

大学であれば、交換留学生のために大学寮を手配しているケースが多い。大学の正規留学であれば、部屋の確保は基本的に自分でしなければならないが、交換留学は基本的に予め準備されている。

さらに、交換留学の共通点として、受け入れる学生がホームステイ先や学校に到着するまでのアシストがある。予めフライトスケジュールを伝えておくと、学校の職員、ホストファミリー、大学の場合はボランティアの学生などが、空港まで迎えにきてくれるケースが多い。

交換留学に合格するには

ただし交換留学の場合、学内で複数希望者がいる場合は、希望者どうしで留学生の枠を争うことになる。英語試験の点数、志望動機、面接などで判断される。高校であれば、普段の成績も考慮される。交換留学を希望するなら、自分の学校の「交換留学制度」と「応募要件」を予め調べておき、応募要件を上位で満たせるように全力を尽くそう。

高校の交換留学

かつて私が英語非常勤講師を務めた私立高校は、タイとドイツの私立高校と提携し、合計2人の留学生を毎年受け入れていた。

授業について

高校にはホームルームがあるので、留学生も他の生徒と同じように自分のホームルームに所属し、基本的に同じクラスの生徒と一緒に授業を受ける。共通科目と選択科目も他の生徒と同じように履修する。

日本では、日本語の難易度が高い科目を、留学生対象の日本語クラスに変更する学校もある。私は2人の留学生に週1回図書館で日本語を教えていた。

生活について

高校はホームステイが多く、私が日本語を教えていた留学生は、生活が安定して健康そうだった。ホストファミリーの話しをするときは表情が良かったので、「日本でホストファミリーをするご家庭は、金銭目的というより異文化交流に興味があったり、海外からの生徒を受けれ入たい気持ちが強いのかな」と感じた。

一方海外では、「お金」が目的でホストファミリーをするご家庭も多いようだ。ホームステイ先によって、留学生との接し方やマインドが異なる。あまりにもひどいホストファミリーにあたったら、どこに助けを求めたらよいか、出国前に確認しておこう。

費用について

高校からの交換留学には、所属する学校に支払う学費に加え、以下の費用がかかる。

・飛行機代
・ホームステイ費用
・海外保険
・おこづかい

留学先の国の物価も影響するが、現在、知り合いのお子様が通う私立学校からの交換留学費用は、総額300万円位とのことだ。

ただし、費用は学校(公立・私立)や国によって異なるので、「高いから無理」と決めつけず、まずは情報収集しよう。

大学の交換留学(経験談あり)

大学生のときに交換留学生として香港中文大学で1年学んだ経験がある。
大学1年生の夏にカナダで6週間の語学研修に参加。それがきっかけとなり、2年生から1年間交換留学に参加したいと強く思う。交換留学の担当部署である国際交流課に行き、交換留学の概要と応募書類を受け取った。

※語学研修の経験をつづったnote記事はこちら
【連載コラム】学問のススメならぬ「留学のススメ」その1|なるみん@英語・日本語講師×ライター×子育て中|note

交換留学の応募について

私の大学では、応募書類として次の2点を提出した。

①TOEFLのスコア(留学のための英語試験)
②志望理由の英文エッセイ

応募する大学によってTOEFLの基準点が設けられ、応募段階で足切りがあった。

大学レベルになると、交換留学であれ正規留学であれ、志望理由を明確にする必要がある。法学部の私は「ジャーナリズムに興味があり、イギリスから返還前の香港に行きたい」とエッセイに書いた。

もう1人、経済学部の学生も応募していた。1990年代半ばの香港はアジアの金融の中心として繁栄していた。1枠に2名が応募していたところ、国際交流課の担当者がどちらも落としがたいと思ってくれたのだろう。先方の大学と交渉して1枠から2枠に定員を増やし、2人とも香港で留学生活をおくることができた。今でも感謝している。

科目履修と授業について

大学の交換留学では自分で履修する科目を決めて登録する。香港中文大学では、「英語」「北京語」「広東語」(香港の現地の人たちが使う言葉)の3つの言語で授業が開講されており、その授業を受け持つ先生が使用言語を決めていた。そのため、履修用の授業科目一覧には、各科目で学ぶ内容と使用言語が明記されていた。

香港中文大学では、留学生は週5日午前中に中国語の集中トレーニングを受け、午後は各自で履修を決めた大学の授業を受けた。中国語は「広東語」か「北京語」から選択で、現地での生活に必要な「広東語」を選択した。

午前中の中国語レッスンのあと、留学生どうしで大学の学食で昼ご飯を食べに行くのは、いい息抜きだった。余談になるが、学食で一番好きなメニューは、白いご飯に蒸し鶏を切ってのせソースがかけられたチキンライス。今でもチキンライスは大好きだ。午後はそれぞれ、自分が履修した授業を受けた。

生活について

留学生活の思い出となっているのは寮生活だ。ルームメイトは香港の現地の学生だった。聞いたところ、留学生と1年間同室で生活したい人の希望を、大学が募っていたので、ルームメイトは「英語圏からの留学生と同室を希望」と出したそうだ。でもフタを開けてみたら、英語圏からの女子学生は少なく、日本人留学生が多かった。その結果、日本人の私とルームメイトが1年間同居することになる。

寮は5階建てで、部屋は5階の女子専用フロアにあった。8畳くらいの部屋にベッド2台、勉強机と椅子が2セット、縦長クローゼットが2台あった。シャワーとトイレ、簡単な自炊場は共用だ。香港中文大学は香港の新界地区にあり、寮からは海が見えていた。たまにルームメイトと家具の配置を変えて気分転換を楽しんだ。

勉強の合間にルームメイトと話した内容を今でも覚えている。彼女は高校で優秀な成績を収め、奨学金で大学に進学。年老いた両親を自分が養っていかないといけない。お姉さんは中国本土の人と結婚したので、自分が両親の面倒をみると。

ルームメイトのお母さんにお会いしたことがある。中国のお正月に、元朗(ユンロンという地名)にあるご実家のアパートに招待され、ルームメイトのお母さんの手料理を御馳走になった。優しいお味だった。2段ベッドに泊まらせて頂き、翌日2人で寮に帰ったのは一生の思い出だ。

寮生活では、お向かいの部屋に居候している女子学生がいた。「宿蛇」といって自分の部屋でないのによく寝泊まりしていた。彼女はよく私に声をかけてくれ、仲良くなる。日本が好きでコロナ前はよく日本に来ていた。家族ぐるみで今でもつきあいがある。

費用について

大学からの交換留学にかかる費用は、所属する学校に支払う学費に加え、飛行機代、食費、海外保険、おこづかいなどである。ホームステイではなく寮生活で、私の場合は母校に支払う学費の他に追加費用は無かった。香港中文大学は国立大学で広い敷地に寮もたくさんあり、家が遠い学生が優先して寮に入れて、寮費は無料だったと思われる。あるいは、母校との協定で寮費はお互いに請求しなかったのかもしれない。(費用は一例なので、ご自身の大学で交換留学にかかる費用をご確認ください。)

最後に英語講師の筆者から一言

交換留学は母校に在籍しながら1年間海外経験を積める貴重な機会だ。自分の経験を振り返ると、1年間海外で学生生活をおくると、日本以外の文化や価値観を知れて、視野や考え方、そして許容範囲が広がる。私は生まれ変わってもまた香港中文大学に交換留学に行きたいと思うほど、貴重な時間を過ごすことができた。人との出会いはもちろん、中国の食文化との出会いも最高だった。

ただし、交換留学は人気が高く学内の選考に合格する必要がある。そのため、交換留学を希望するのであれば、英語の勉強に全力で取り組み、英語力を最大限に高めておくべきである。選考に英語のスコアが必要なのはもちろん、留学先で授業内容や友達の話を正確に聞き取り、英語で伝えたり、英語でレポートを書くことを求められる。英検であれば準1級レベルを目指したい。

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