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パンクしたタイヤ引き摺り歩いてく表参道31時

四四田が短歌に初めて出会ったのは、小学校の国語の授業で、
廊下に張り出した短冊(選抜とかではなくクラス全員張り出してあった)を見た友だちのお母さんが「詩心があってステキ」と褒めてくれたんです。
そんときの短歌、今でも覚えてます。「折り鶴を作ってくれる父さんの大きい手のひら見つめる私」って短歌でした。

そっからバーって時は経ち、二十歳の頃。
今でも連載していらっしゃいますが、当時雑誌の「ダヴィンチ」さんで、穂村弘さんの「短歌ください」がわりと始まったばかりで。
あちらに一年ちょっと投稿してたんですね。そん時の名前は「亜にま」でした。
そこで初めて掲載していただいた短歌が「午後28時の人と隣り合い電車に揺られている午前4時」って短歌。
今振り返ると、午前と午後って言い方をするなら28時って言い方ははたして正解なのか正解ではなかったのか。
自分でも少しばかり気にかかるところなんですが。
でも28時の人はまともに世界を見られていないだろうから、その酩酊感がはからずも出てくれていたらいいのかな。

始発電車に乗る時の、ちょっとした緊張感。これも実際に体験した出来事です。

ここからまた短歌をしばらく詠まなくなって、およそ10年のブランクを経て今に至っていくんだけれども、今でも具体的な時間を短歌の中に入れるのは好きみたいですね。
けど、初めて数字、時間を入れたのが前述の電車の短歌なんだよな、って話。

パンクした自転車のタイヤを引き摺ってずるずると歩いていく人と、深夜すれ違ったのも事実です。四四田の短歌はいつも本当にあったこと。
あの人あのあとどうしたかな。ちゃんと家に帰れたかな。
それにしても、そんな時間になんで自分が表参道を歩いていたのかは実はよく覚えてないのね。すれ違った自転車のおにいさんのことは覚えているのに不思議なもんです。

短歌に閉じ込めたから忘れずにいるんだろうな。
そうやって考えると、短歌ってタイムカプセルみたいです。



短歌初出:「かばん」2021.5月号

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