#6『薄暗い運命』リュドミラ・ペトルシェフスカヤ
三十代の未婚の女性がハマってしまった男が既婚者だったって小説は、この世にごまんとある。いや、小説に限らず、現実にもごまんといるだろう。
私の場合は、まぁ…、いろいろあったりしたが、既婚者にハマってしまったことはないかな。
その辺は、まぁ…、お互い大人のつきあいができればいいんだろうけれど、既婚者と未婚者だと心の入り具合の天秤がどうしても釣り合わなくなってくるよね。割り切ったつき合いっていうのもなかなか簡単じゃないだろうし。そう考えると、既婚者同士の方が、まだいいのかな? …いや、どちらもよくないか。
魂が震えるように、それはそれは強烈に愛した人と結婚できるなら、生涯変わらず愛せるのかもしれないけれど、結婚したからって、お互いの気持ちが絶対変わらないなんて言い切れない。かといって離婚して再スタートっていうのも環境的に困難な場合だってあるし、ちょっとばかり「息抜きの余興」的なものを欲してしまう時ってあるんだろうね。それが「余興」で済まずに「大惨事」になることもあるとは分かりつつも。
村上春樹が精選した海外作家による10編のラブストーリー『恋しくて』。
今のところ、一日一篇ペースでnoteに綴ることができている。今回は6番目のラブストーリー。
収録作品の中で最も短い作品。わずか4ページ!とはいえ、この4ページは濃かったし、やけに印象深かった。
作者は、リュドミラ・ペトルシェフスカヤ。
タイトルの『薄暗い運命』からして、幸福と遠そうなラブストーリーだというのが想像できる。しかし、実はそうでもなかったようだ。なぜならば、幸福の感覚は、恋をすると都合よく変わるから。少なくとも私はそう思った。
主人公は、三十代未婚の女。彼女の恋人の男は二つの家庭を行き来する人。彼の母親の家と彼の奥さんの家。しかもその男っていうのが全くイケてない。風貌も性格も。彼にとっての彼女は、まさに「息抜きの余興」と見える。
よりによって、なんでこんな男に実らない恋をして、三十代という女の大切な時間を無駄に使ってしまうのかと思うところだが、彼女だって、自分自身を負け犬だと理解している。でもやめられない。なぜなら、彼といると幸福だから。
幸福。でも、負け犬。この先、薄暗い運命しか見えない。
泣くしかないよね…。
そりゃあ泣きやむことができないよね…。
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