不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

不知の燈(旧:とある木こりの実話怪談)

最近の記事

シシテル #命預

阿形が四葉をおぶりながら家の外に出る。 いつのまにか家の前には一台の黒いセダンが止まっていた。 「その様子なら、大丈夫だったみたいね。」 「あぁ、ちと手こずっちまったが…感覚を高めることができたよ。だが…一応お前も連れてきてよかったよ。みつき。」 阿形はセダンの後部座席を開けた。 「行くぞ。」 一葉達がポカンと口を開ける中癒鬼がもぐもぐとまた何かを食べて口元を真っ黒に染めている。 チョコレートだ。 「行くっていきなりどこへ?」 一葉は状況が読めないまま不安に

    • シシテル #碁極

      「ちっ…くそ…これじゃぁ近づけもしねぇ…魍魎道って…生意気なガキが一丁前なツラしやがって…」 一葉の後ろに現れた強大な闇の中から断末魔のような叫びや唸り声が脳の奥底まで響いてくる。 「我が名は鬼庭義光…鬼門の宴としこの力を茂庭一葉へ継承。これより魍魎道の発動権限は茂庭一葉が指揮を取る。さらば浄瑠璃…間も無くだ…」 その闇の中で僕はその男から全てをもらった。 一方的に。質問とかそんなこと出来るわけがなかった。 きっとこの力は鬼とこの世を繋ぐ道のようなもの。 一体何に使う

      • シシテル #解放

        「わかった…わかったからこの手を退けてくれ。」 唇を噛み締めながら茨木童子は刀から手をそっと離した。 それと同時に金色に輝く腕がすっと消えた。 「私たちがその力をコントロールできるわけじゃない…その腕が消えたということは貴方が私たちに危害を加えないと判断したから。ありがとう。私たちも貴方と戦う気はないの」 お姉ちゃんが僕の頭を撫でて少し不安そうな顔をした。 僕は初めてみたその表情に困惑し状態を起こした。 「僕…何もわからない…神様とか鬼とか…信じられないよ…外にいたお

        • シシテル #鬼人

          意識が戻ると僕の瞼は静かに開いた。 「よ!」 ゴリゴリと音を立てて口をもぐもぐしているのは癒鬼だった。 気がつくとリビングにいてお姉ちゃんは僕の頭を膝に乗せながら良かった…良かった無事でと涙を流している。 「お姉ちゃん?」 いつもはゲームばっかりして部屋から出てこないイメージが強かったけどそれは僕の家族が死ぬ前の話。 最近は二人でいる時間が長くなったような気がする。というか、僕が一人になっちゃうからお姉ちゃんはちゃんとお姉ちゃんをしてくれてると思う。本当は心も身体も

          シシテル #魍魎

          「狭間が……開いた…」 初老の男が驚きのあまり帽子を深く被り直しながら口をぽかんと開けている。 一葉「癒鬼…もう大丈夫…」 僕は背後にあるその闇に気付かなかった。 僕の背後から足音が聞こえる。 鉄と地面が擦れ合うような音が… その音に驚き振り返ると武装した一体の髪の長い鬼が癒鬼に視線を向ける。 鬼「癒鬼……貴様が名付け親か…」 一葉「えっ…鬼?」 鬼「ん?鬼とわかっているだろうに…なんだその顔は…まさか、魍魎道を初めて開いたのか?あぁ〜そうか…確かにお前とは会

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来③

          茂庭「上…どうしてここに…」 八咫「どうしてって…この状況…カミツカミにとっては最高の景色だと思うがね。ったく高みの見物決め込もうとしたらお前がこの有様…あの狭間の鬼たちはどうしたんだ?」 茂庭の心臓に痛みが走った。 それは心臓という心に干渉する痛みだ。 茂庭「何故ここに上がいるのかと…聞いているんだ…」 八咫は上目遣いで茂庭を見下ろしながら言った。 八咫「内通者がいる…とだけ言っておこう。」 その言葉を聞いた瞬間、茂庭の肩はがくりと落ち高嶺を抱きしめた腕が脱力し

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来③

          シシテル #別世

          「おはよう。一葉君…」 絶句した…言葉が一切出てこない。 体が硬直し今まで体験したことがない金縛りに合っているような感覚を覚えた。 一葉「な…なんで…」 「私がここにいちゃ悪いのかな。」 初老の男性はワイシャツの襟元に人差し指を入れボタンを外したのちにネクタイを緩め口を開いた。 「単刀直入に言おう…私がこのエリアの担当でね…君のお母さんとお父さんを導いたものだ。あの世へね。」 初老の男性は話を続ける。 「双葉君も一緒にと思ったんだがどうやら君は一族の"それ"を継

          シシテル #来会

          僕はポストの内側から見える得体の知れないものに絶叫した。 それはガタガタと歯を鳴らしながらペチャペチャと涎を垂らしながら音を立てている。 一葉「あ…あああ……」 玄関の向こうで初老の男性の声が聞こえた。 「何も怖がらせることはないのだよ。あーこれは酷い。漏らしておる。あんまりやりすぎるなとあれほど忠告しただろうに。」 うるると声にならない声を上げてその得体の知れないものは玄関先の見えない声のもとに去っていった。 「驚かせてすまないね。私は茂庭双葉君を迎えにきたものだ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来②

          あれからどれほどの時が経っただろうか… 僕は彼女と初めての唇を交わしている。 嬉しくて…切なくて…脆くて…暖かくて… その全てが僕と恭子の中を駆け巡る。 茂庭「大丈夫だ…恭子…」 泣き喚く恭子の姿に胸が痛む。 恭子「いや…いや…嫌…」 茂庭「僕はどこにも行かないさ…恭子の千里眼がそう見せたとしても僕は死なない。」 恭子「嘘…だって今まで一度だってこの力は未来を変えられたことがないもの。」 茂庭「それは嘘だ。」 恭子の流す涙を僕は親指で拭いとる。 茂庭「そう

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕たちの未来②

          シシテル #彎曲

          自宅に帰ると母は無言で夕食の支度をし、父はテレビのリモコンと湯呑みを握りながら少し空いたカーテンの隙間をじっと見つめている。 一葉「お母さん、お父さん、ただいま。」 この後に続く言葉が返ってこなかった。 こんな日々がもう1ヶ月は続いている。 僕も黙って夕食の支度をして僕だけが大きなテーブルに一人で座りご飯を残さず食べる。 最近のご飯は何も味がない。 僕の味覚がおかしいわけではなく、塩や醤油といった調味料が一切使用されていない素の味が喉を通る。 昔からご飯は不味くても残さ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕の未来

          直人「姫花!ヒメコ!」 ヒメノ「2人とも…どうしてこんな…私が逃げろっていったせい?」 茂庭「酷いな…まずは家の中に!」 メイド「いけません…今戻っては…」 直人「お前は姫花の別荘の?」 メイド「はい…上空から降ってきたものに対して危険を感じ、護神会に連絡を入れようとした時…」 高嶺「何者かに襲撃されたってこと…」 姫花「ゴホ…ゴホ…そう…ヒ…メノ…おねえ…様……あいつらは…ゲホ…」 ヒメコ「姫花!姫花ーーーーーー!」 ヒメノ「よかった…2人ともまだ意識があ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 僕の未来

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜③

          2018年8月のある日 ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ!ヘカトンケイル!ハインツ!ヘカトンケイル!アビリティ!エリグモス……ハイ……ンツ……ヘカトンケイル……嫌だ…そんなの嘘だーーーーーーー」 ハインツはザブザブと波に打たれながら海面に倒れたヘカトンケイルの元へ走り出す。 ハインツ「ヘカトンケイル…ヘカトンケイル!神に抗う力じゃなかったのか…神の力を無効化する力じゃないのか……」 出流「今運天を使って治してやる!」 ハインツ「だからそれは意味がないって言

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜③

          シシテル #儚視

          「一葉兄ちゃん!」 「どうした?双葉」 「楽しかった!また明日も遊ぼ!」 僕は差し出された幼い手を握り返すことしかできなかった。 「どうしたの?一葉兄ちゃん?」 7歳の僕はこの時、葛藤というまだ聞いたことのない言葉と戦っていた。 「双葉あのな…お兄ちゃん…」 「どうしたの?」 だめだ…言葉が出てこない… 泣きそうになる表情を必死に笑顔で誤魔化しながら弟の幸せそうな可愛かった笑顔から目を逸らす。 「遅くなる前に帰ろうか。」 「うん!」 弟と会話を弾ませながら帰り道を2

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜②

          ?「ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふ〜ん、バンバン!ふふふ〜ん、ふ〜ん、ふふふふふーん、ばんばん!ふふふーふーふーふーふーふふふーふふふふふーん、バン!いっちょ完了だぎゃーふふふ!喜んでくれると嬉しいにーーー!私のダーリン!」 ハインツ回想 業火を浴びて崩れる建物を僕はアンソロジーに抱かれながら見つめることしかできなかった。 子供達「ハインツ…詞華…お前達がやったのか?神父様は…神父様はどこいいるの…」 アンソロジー「神父様…?ハインツがこんな目に遭っているのに…?」

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜②

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①

          ハインツ回想 アンソロジーが地面にうずくまり鳴いている。 ここは東北の日本海に面する県… ハインツ「アンソロジー!アンソロジー!一体どうしたのさ…」 アンソロジーは何度も嗚咽を上げながら涙を流し続けた。 ハインツ「アンソロジー!答えてくれよ…僕は君の味方だから…」 アンソロジー「私…怖いの…私…神父様に…」 泣きじゃくるアンソロジーを見て僕は子供なりに抱きしめて寄り添うことしかできなかった。 現在 ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ。ヘカトンケイル。へ

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜①

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙雲の矛先

          あの日と似た夜がまた始まった。 ?「そんな安っぽい影を出したところでこのヘカトンケイルには太刀打ちできないよ!」 巨大なロボットがダイダラめがけて空高く上げた拳を振り下ろす。 山がうなりをあげダイダラが動き出すもその大きな拳に一瞬にして飲み込まれ押し潰された。 茂庭「ダイダラを一撃で…一体この神は何者なんだ…」 ?「俺たちは王位と言ったはずだ。」 ならばと茂庭はすかさず空間の闇を切り裂きその中から鬼を出そうとする。 茂庭「魍魎…」 高嶺「ダメ!一葉!今鬼を出し

          僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙雲の矛先