僕と拠り所〜王位開戦編 宇宙の矛先 アノヒマモルトキメタコト〜③
2018年8月のある日
ハインツ「アビリティ!エリグモス!ハインツ!ヘカトンケイル!ハインツ!ヘカトンケイル!アビリティ!エリグモス……ハイ……ンツ……ヘカトンケイル……嫌だ…そんなの嘘だーーーーーーー」
ハインツはザブザブと波に打たれながら海面に倒れたヘカトンケイルの元へ走り出す。
ハインツ「ヘカトンケイル…ヘカトンケイル!神に抗う力じゃなかったのか…神の力を無効化する力じゃないのか……」
出流「今運天を使って治してやる!」
ハインツ「だからそれは意味がないって言ってるだろー」
流されようとする体をヘカトンケイルにしがみつきながらその体をよじ登っていくとそこには亜門の姿があった。
ハインツ「……ッ……」
亜門「君は今絶望しているだろういいねぇ面白い顔。」
亜門がハインツの髪を鷲掴みにし片手でハインツを持ち上げる。
亜門「誰が?閻魔が神だって?いつそんなこと言ったんだ?なぁ閻魔!」
閻魔「たわけぇめぇぇ!我は獄炎の支配者ぞ。」
亜門「神様なんてそんな大それたものじゃない。」
亜門はハインツを海へと投げ捨てた。
ミチオ「いい加減にしろ…」
ハインツ「あぶ…うごぉ…だずげ…たづげ〜」
アンソロジー「炎よハインツを守りたまえ…」
溺れているハインツの周りに炎が立ち込めるとその炎はハインツを包み、砂浜へ引き寄せた。
ハインツ「ゲホ…ゲホッ…アンソロジー…アンソロジー…ヘカトンケイルが…」
アンソロジーはハインツを抱きしめた。
アンソロジー「だめ…私を残してあなたは死んじゃだめ…」
ハインツ「ア…アンソロジー…」
アンソロジー「お願い…誰か助けて…これじゃみんな死んじゃう…お願い…どうか…神様…………」
一筋の瞬きが空を駆け巡る。
アンソロジーの目の前に紫色の髪を靡かせたミチオが微笑みながら見つめた。
ミチオ「神様…か…そんな…名乗るほどのものじゃないけど…僕でよければ…出流にも謝りたいしね。」
千秋「ミチオ?普通のミチオに戻った?」
直人「おい…お前…大丈夫なのかよ!」
ミチオ「あぁ…大丈夫…」
ミチオは平手打ちをうけ、吹き飛ばされた。
ミチオ「いたた…………」
みつき「次、もしもあんな奴の力で出流君にあんな言い方をする奴はここにはいらない。」
直人「ちょ…みつき先生!」
直人が走り出そうとすると千鶴が直人のいく手を阻んだ。
千鶴「ミチオはもっと仕打ちを受けるべきだ。」
みつきはミチオの顔を何度も殴った。
殴られるたびにミチオは涙をこぼしていた。
みつき「いい加減にしなさい!あなたはたった1人の彼の拠り所なの!あなたもそうでしょう!祠じゃない…あんたの心の拠り所なんでしょうが!それをよくもあんな顔で、出流が死んだらあなたはどう責任取るの!」
ミチオ「僕が…僕だって…1番傷ついてるよ!」
みつき「違う!1番傷ついているのは出流よ!」
殴りかかる拳は次第に力を弱めていき、双方ともその場に倒れ込んだ。
一筋の瞬きが空を駆け巡る。
ミチオ「先生…ごめん…僕…自分の言葉で。出流に行ってこなくちゃ。」
みつき「私はあなたの先生じゃないわ…でも…ここにいるみんながそれ以上の関係だと思っている。だから、ごめんね…早く彼の元へ行ってあげなさい。」
ミチオの髪が輝き出しその場に立ち上がるとそこに閻魔が近づいてくる。
閻魔「稲荷大名神…貴様はいつになっても変わりやしない…ワルェがこの手で仕留めてやるるるるる!」
ミチオは閻魔を睨みつけた。
閻魔「無無無無」
一筋の月から伸びた光がミチオを覆う。
ツクヨミ「ダーリン!」
ミチオ「やっぱり君か………」
ツクヨミ「早くいくだよー!この力、数秒しか持たないにー…」
ミチオ「アビリティ…エリグモス…ミチオ…アルテミス…」
その瞬間、光の筋とツクヨミが姿を消した。
閻魔「力を弾いただとぅぅ」
ミチオの転送先には二つ並んだコックピッドがあった。
ミチオ「ごめん…」
出流「うっせー」
ミチオ「あの…出流…本当に!」
出流「あいつの力のせいなんだろ…もういいよ…」
ミチオ「ごめん…」
出流「あのな…俺らが喧嘩して謝って仲直りしたことは?」
ミチオ「ごめん…」
出流「はぁ〜、それしかいわねぇのかよ…」
ミチオ「ごめん…だって僕…」
出流「絶対許さない!」
ミチオ「………………」
出流「この戦いが終わったらお前は…」
ミチオ「………出流!ごめ……」
出流「俺の後ろから黙って抱きしめてくれればそれでいいんだ。」
出流とミチオから涙がボロボロと溢れる。
ミチオ「あぁ…あぁ…わかった…」
出流「ミチオ!これ…なんか自分の意思と同調して動いたから多分いけると思う!」
ミチオ「うん…そうだね…」
出流「ん?前にも乗ったことがあるのか?」
ミチオ「実は月の神ツクヨミと…でもその時は全然うまくいかなくてさ。」
出流「ふーん…なんかやだ…」
ミチオ「ごめんってば…」
出流「でもいいや!行こう!」
無数の瞬きが空を駆け巡る。
グオオオオオオオオオオと海面を揺らしながらヘカトンケイルが咆哮した。
ハインツ「は…ヘカトンケイル!」
グオオと咆哮したのちに背中にある窪みが開き中から手が出てくる。
ヘカトンケイル「ハインツ…彼らと一緒に戦おう。」
ハインツ「ヘカトンケイルが…喋った…」
ヘカトンケイル「あんまり外に出るのが嫌いでね…それと…なんだかわからないけど…ほら早く!君がエリグモスしてこそ本当の力を発揮できるから。」
その言葉にハインツは青い光と共にヘカトンケイルの中へと入っていく。
直人「行けーーーーーー4人であいつを倒すんだ!」
ヒメノ「なーたん!姫花が倒れてる。うちらは2人の手当てしないと!」
茂庭「僕の…力は………ハハハ…まさか…そんな」
無数の瞬きが空を駆け巡る。
高嶺「一葉?」
みつき「私も姫花さんたちの方に回るからここは任せたわよ!」
千秋「私たちも姫花さんのところに…」
千鶴が千秋の手を握り首を横に振った。
千鶴「ここで出流たちが怪我をしたら誰が守れると思うておる。わしらはここで見守ろう。」
その瞳は青く透き通っていた。
いつからだろう、千鶴が千秋とほぼ同じくらいまで成長している。
その顔は千秋とよく似ていた。白髪と瞳の色以外はほぼ見分けがつかないようなところまで成長していた。
千秋「千鶴…なんか、でかい…」
大きく違っているのは胸の大きさくらいだ…
千鶴「ふん…バカにするでない…まだまだわしも出流の為にナイスバディになるのじゃから。」
ふんと鼻息を立てた。
千秋「あはは…私も負けてられない…2人を守るのが私たちの役目だからね!」
無数の瞬きが空を駆け巡る。
後ろから肩をツンツンとされ振り返るとアンソロジーが立っていた。
アンソロジー「あの…私も同じ………だから……」
千秋「アンソロジーちゃん!ハインツのこと大好きだもんね!」
アンソロジーは顔を真っ赤にした。
アンソロジー「違う!違うってば!私がいないとハインツは何もできなくて…料理だって洗濯だってボソボソボソボソボソ…」
千秋「ほぉー」
千鶴「ほぉー」
2人はアンソロジーにグッドポーズをした。
アンソロジー「だーかーらーもう…2人とも何なのよそれーーーーーー」
その頃ヘカトンケイルの操縦席では。
ハインツ「あの…あの〜…」
もじもじしながら薄いベールに包まれたその先にいるヘカトンケイルに声をかけようとしていたが長年の付き合いから、なんと言ったらいいものか言葉が出てこなかった。
すると、薄いベールの向こうからヘカトンケイルが喋りかけてきた。
ヘカトンケイル「なんだよ、いつもは命令するくせにもしかして…嫌…だった?」
ハインツ「まさか中に人がいるなんて…」
ヘカトンケイル「そうだよね。外に出るなんて僕の方こそどうかしてるよ。初めてのことだ。」
ハインツ「俺も…初めましてじゃないんだけど初めましてだから…緊張しちゃって…」
ヘカトンケイル「改めてヘカトンケイルだ。これからも宜しくね。」
ハインツ「あぁ…短い間だけど宜………えっ……今…俺…なんて………」
ヘカトンケイル「君の力………その喋り方といい……なるほどな…そういうことか…」
ハインツ「いや…違うんだ…今のは勝手に…俺はずっと一緒にいたいしヘカトンケイルとも、アンソロジーとも…」
ヘカトンケイル「僕と一緒にこの機体に登場して生き残れた人は今までにいないんだ…」
ハインツ「え……………」
ヘカトンケイル「過動現道…君の力だよ…過去のパイロット…全ての祠の力が今君の中に宿っている。今までも…そしてこれからも。」
ハインツ「本当だ…なんかわからないけど体が覚えている。」
ヘカトンケイル「初めて僕の方から誘ってしまったし…今までは会話すらしてくれなかった。僕はただのおもちゃだったのさ…」
ハインツ「違う!ヘカトンケイルは俺の大事な家族…うんうん…もっとそれ以上に大切な人だ。」
ヘカトンケイル「……………ありがとう…それじゃ…」
ハインツ「一緒にあいつを倒そう!」
出流「ハインツ?聞こえる?ハインツくん?」
ハインツ「こちらハインツ!聞こえるよ!」
ミチオ「なんか訳わからない…本当は僕たちと君たちが戦うはずだったんだけど…」
ハインツ「状況が変わった…それは俺も理解してるよ。とりあえず目の前の鬼みたいなやつを倒せばいいんだよな?」
出流「いや…お前はもう片方のやつをぶん殴れよ。あいつムカつくだろ?」
ハインツ「ヘヘヘャ…わかってんじゃねーか。王位さんよ。」
出流「いや…お前も王位だろ…」
ミチオ「僕たちは閻魔を叩く!マズった時はまぁ…なんとかなるだろ!」
ハインツ「君たちとは気が合いそうだ…」
ミチオ「絶対勝つよ。」
ハインツ、出流、ヘカトンケイル「うん!」
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