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スクリーンで観た『花様年華』に 心揺さぶられた話 ─ WKW4K ウォン・カーウァイ4Kのすすめ ─


第一報を知ったのは、Twitterでした。


1990年代、ミニシアター系の劇場を中心に上映され、映画ファンを魅了した作品が、令和の時代にスクリーンで楽しめる!!!しかも4Kで!!!

公開当時、10代だったわたしには、本当に嬉しすぎる朗報でした。


ということで今回は、自宅や移動中にいくらでも手軽に映画を楽しめるようになった今こそ、映画館のスクリーンで、『WKW4K ウォン・カーウァイ4K』を楽しみませんか?  というお誘いです🎥

ご安心ください。ストーリーのネタバレはありません。

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と、勢いよく書き始めましたが、わたしはそこまで映画作品を幅広くたくさん観ている訳ではありません。映画は好きですが、人並み程度でしょう。

なので、ウォン・カーウァイ監督のことも、お名前といくつかのヒット作品の名前くらいしか存じ上げませんでした。

ということで、まずはどんな方なのか、プロフィールを引用してご紹介を。

ウォン・カーウァイ / Wong Kar Wai 王家衛

1958年 上海生まれ、香港育ち。
グラフィックデザインの勉強をしたのち、TVドラマの制作を学び脚本家として頭角を現す。
映画監督デビュー作「いますぐ抱きしめたい」(88)がカンヌ国際映画祭の批評家週間で上映され、続く「欲望の翼」(90)で香港電影金像奨(香港アカデミー賞)の作品賞、監督賞を受賞。
92年に設立した製作会社ジェット・トーン・フィルムズの第1弾「楽園の瑕」(94)を2年越しで完成させる。
同作の編集中に短期間で撮影した「恋する惑星」(94)が世界的にヒット、「天使の涙」(95)も話題になり、アジアを代表する映画監督として知られるようになる。
「ブエノスアイレス」(97)でカンヌ国際映画祭の監督賞を受賞する。その後も「花様年華」(00)「2046」(04)などスタイリッシュな映像美でラブストーリーを描き、「マイ・ブルーベリー・ナイツ」(07)では初めて英語劇に挑んだ。
初のカンフー映画「グランド・マスター」(13)は、第63回ベルリン国際映画祭のオープニングを飾った。

https://eiga.com/person/18773/


ウォン・カーウァイ監督の作品の魅力


よく挙げられているのが、ドラマチックな映像表現とストーリー、色彩の美しさ、音楽。

映画のワンシーンを使った広告ビジュアルや、今回のトレーラー映像からも、伝わってくるものがあります。
これはきっと、監督がグラフィックデザインの勉強をされていたことが少なからず影響しているのでは。


ここで、自分の話をちょっとはさませていただくと・・・

1990年代の公開当時、わたしは、カルチャーやデザインなどをテーマに扱う雑誌で、幾度となくお名前と作品名を読んできました。

そうか、よっぽど素敵なんだろうなぁ。いいなぁ。観てみたいなぁ。
でも10代の自分には、まだなんだかよく分からなそうなストーリーかもな。

そんなことを考え、憧れと距離感を抱いたことをよく覚えています。


"きっかけとタイミング"を逃し続け 早20年・・・


それからウォン・カーウァイ作品を観るチャンスは何度でもあっただろうに、なんとなーくずっとスルーしてきてしまったのは、なぜか。

わたしは、さして映画フリークでもないのに、映画はできれば映画館で観たい、という妙なこだわりがあります。

ミュージアムが好きなのにも通ずるかもしれません。
あの大画面と音響設備、あの環境に身を置いて、存分に作品の世界を体感して、味わいたいんです。

(なので正直なところ、自宅で観てもよさそうな作品は、劇場公開中でも、自宅で観られるようになるまで待つってことも、しばしば・・・)

でも、ウォン・カーウァイ監督ほどの方ならきっと、どこまでもこだわりにこだわって、あの環境で観てこそ美しく素晴らしく、絶対に最高の状態であるように製作しているはず。
だから、できればスクリーンで観たい、と思っていたのです。

でも、どんなにヒット作でも、過去作はなかなか映画館で上映されません。
されていたとしても、その情報をマメにキャッチできるほどの映画好きでもなかったので、完全に逃し続けていました。


と同時に、いまこれが観たい!と思うタイミングも、完全に逃し続けてきたんだろうなぁ、と。

あ、これは、読書好きなのに、古典文学をあんまり読んでこなかったところにも通ずること・・・でしょうか。

自分の年齢とか、人生経験とか、環境とか、バイオリズムとか。
映画に限ったことではなく、そういうことって、実は多いのかも?
出会うべくして出会う、という言葉のように。
なにかきっかけがあれば。タイミングがあえば。

で、2022年夏。それは不意に訪れたのです。

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監督自らが4Kレストア『WKW4K ウォン・カーウァイ4K』 


4Kレストア、とは、映画のフィルムを4K映像にして、フィルムの傷やほこりなどを取り除いたり、色彩の調整をしたりする作業のこと、だそう。

つまりは、最新技術によって20年以上前の作品群が、一段と美しく生まれ変わってスクリーンで観られる。しかも監督自身のお墨付きで。

これはもう絶対に、今こそタイミング!観に行くしかない!と、公開日を心待ちにしていました。


今回、劇場で公開されるのは、5作品
前述したプロフィールの中で、太字になっていた作品です。

『恋する惑星』(94)
『天使の涙』(95)
『ブエノスアイレス』(97)
『花様年華』(00)
『2046』(04)


あらためてあらすじを読み、あれこれリサーチしてみて、これだ!絶対にこれが観たい!と思った作品がこちら。

花様年華かようねんか

このビジュアルの妖艶さに ほぼ即決でした

・・あらすじ・・

女は顔を伏せ
近づく機会を与えるが
男には勇気がなく
女は去る。

時は移ろい
あの頃の名残は何もなかった。

男は過ぎ去った年月を思い起こす。
埃で汚れたガラス越しに見るかのように
過去は見るだけで触ることはできない。
見える物はすべて 幻のようにぼんやりと…


1962年、香港。新聞社の編集者であるチャウ(トニー・レオン)と、商社で秘書として働くチャン(マギー・チャン)。二人は同じアパートに同じ日に引越してきて、隣人となる。やがてふたりは、互いの伴侶が不倫関係にあることに気づき、次第に時間を共有するようになる。誰にも気づかれないよう、慎重に会っていた二人だが、周囲の人は気づきはじめる。家庭を持つ貞淑な男と女は戸惑いつつも、意外な方向へ気持ちが揺れ動いていくのだった…。


・・・・・・・
出演:トニー・レオン/梁朝偉、マギー・チャン/張曼玉
監督・脚本・製作:ウォン・カーウァイ/王家衛
撮影:クリストファー・ドイル、リー・ピンビン
2000年/香港/原題:花樣年華/英題:In the Mood for Love/98分/1.66:1/広東語/5.1ch

http://www.werde.com/movie/cw/new/inthemoodforlove.html



ということで、予め ムビチケで特典付きの前売りを購入し、どの劇場でいつ上映されるのか、座席はどこがよさそうか、あれこれリサーチし、無事にネットから予約完了。


8/19(金)の公開初日の翌日、ついに観てきました!!!


で、感想は?


Twitterでつぶやいたのは、観終えてほやほや状態の帰り道で。

それから1週間近く経ちますが、やっぱりもう一度、映画館へ観に行きたい!と思っていて、日程調整中です。



一体なにがそんなに素敵だったのか。
わたしが思ったのはこの3つです。

映像に映る景色と構図

細部まで考え抜かれて作り込まれているであろう映像は、どの瞬間を切り取っても、すみずみまでとても美しくて、何度もハッとしました。

たばこの煙がくゆる様子や、オフィスの蛍光灯の青白い光、雑然と置かれた書類やタイプライター。路地裏や夜道。壁や道に映るシルエット。
それぞれが暮らす部屋などのインテリア、などなど。

次々と移り変わるロケーションがまた、絶妙。
とにかく一時停止やスローモーションでじっくり観察したくなりました。


また、古い作品を観るときにいつも思うことですが、本作の舞台である1963年の香港の姿、そこを流れる時代の空気が、見事に映画に閉じ込められていて、まるでその中を漂っているような気分を味わえました。
ただ、その後の香港の現実、辿ってきた歴史を考えると、何とも言えない気持ちにもなったのですが・・・


俳優の視線と立ち振る舞い

トニー・レオンさんの、カッコよすぎる スーツスタイル。
マギー・チャンさんの、美しすぎる チャイナドレス姿。
お二人の衣装とヘアメイク、小道具が、とにかく本当にどこまでも素敵。
所作も美しくて、本当に眩暈がしそうなくらい、素敵すぎました。

また、作品全体を通して、いろんなことが曖昧な感じなのもとても心地よかったです。時間軸とか、二人の関係性とか、周囲の人々の様子とか。固定電話しかなかった時代の、既婚者同士の密会の危うさ、みたいな雰囲気も。

全体的にとてもセリフが少なくて静か。いちいち説明することも、派手な演出もないけれど、とてもドラマチックで、示唆に富んでいました。


その一方で、静かに淡々と進んでいく世界に登場する、他の俳優の方々もまた素晴らしかったです。
彼らの存在から、当時の香港の人々の文化や、時代背景など、そこはかとなく読み取れるもの・伝わってくるものがあり、ぐぐぐっと惹きつけられました。


抑揚のきいた音 セリフ 音楽

例えば、タイプライターの音。階段や夜道を歩くハイヒールの音。雨音。
電話が3回鳴って切れる、とか、ただ声が聞きたいだけの無言電話、とか。

セリフを含めた、いろんな音がとても印象的でした。
と同時に、全編を流れる音楽も強烈に印象に残りました。

帰り道、すぐにiTunesでサントラCDを探しましたが、20年以上前の作品です、当然、配信されてないので、中古を探して手に入れました。
ありがたい。本当に便利な時代ですな。

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ちなみにVOGUE TAIWANの記事によると、現地では9月から『花様年華』4Kレストア版が劇場公開されるそう。

本文を読み進めると、なんだか大絶賛の一文が。納得です。

タイム誌の「世界の映画史における不朽の映画トップ100」、BBCの「世界の映画史における外国語映画トップ100」に選ばれ、第1位に選ばれました。米国CNNの「映画史上最高のアジア映画18本」にも選出。

https://www.vogue.com.tw/entertainment/article/in-the-mood-of-love-4k

こちらのトレーラーも素敵✨


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まとめ


初公開から何十年経とうとも、初めて観る人にとっては 永遠に"新作"。

本や音楽などもよく言われることですよね。

今回、スクリーンで観て、強烈に心に焼き付いた わたしのように、今こそ、ぜひ多くのかたに出会ってほしい作品だと思いました。
この機会に、ぜひ映画館へ!!!


それと、いまの自分なら、小津安二郎作品の魅力がわかるかも、とぼんやり思っています。20代で観てみたときは、さっぱり、だったんですよね・・・

実は最近、大好きで首をながーくして楽しみにしているテレビドラマがあるんです。NHKで放映中の、『プリズム』です。

こちらもセリフが少なく、俳優の皆さんの素晴らしい演技によって、静かに、でもドラマチックに物語が進んでいきます。


年を重ねてやっと、こういう作品の良さが沁みる精神年齢になりつつある、のかもしれません。
小津作品、どこかのタイミングで映画館で特集上映されることがあったら、ぜひ足を運びたいなぁ、と思っています。



最後に話が逸れました。改めて

『WKW4K  ウォン・カーウァイ4K』は、全国順次公開中です。お早めに映画館でぜひ。


Introduction
あの瞬間が、あの感情が、4Kレストアで鮮明に蘇る。
新たに出会い直す5つの美しき世界。



第53回カンヌ国際映画祭にてトニー・レオンが主演男優賞を獲得し、ウォン・カーウァイ監督の代表作となった『花様年華』(00)。その制作20周年を記念し、監督自らの手により過去作を4Kレストアするプロジェクトが実施。その中より、珠玉の5作がスクリーンに帰ってくる。

ウォン・カーウァイ監督は、新たな上映素材について
「『恋する惑星』と『花様年華』は私のお気に入りのアスペクト比1.66:1で撮影され劇場公開されましたが、ビデオ化の際に1.85:1に修正されました。そこで今回のレストアでは元のアスペクト比に戻しました。
『天使の涙』は、元々意図していたスコープサイズに変更しています。当時はスタンダード画面で撮影したものをワイド画面に編集することは不可能でしたが、今回のレストアで実現することができました。
また、『恋する惑星』は公開当時5.1chが存在しなかったため、今回5.1ch音声を再構成。『花様年華』もリミックスしています」
と、画面サイズや音声の修復についてこだわりを明かしている。

ウォン・カーウァイ監督 × 撮影監督クリストファー・ドイルの名コンビが生み出す映像は、それまでのアジア映画のイメージを一新。90年代に日本で巻き起こったミニシアターブームを牽引する存在となり、そのスタイリッシュな映像と世界観は今もなお多くのクリエイターに影響を与え続けている。

そして今、ウォン・カーウァイ監督作が《時》を真空に閉じ込めたまま、さらなる吸引力を以って蘇る。恋は鮮やかに目の前を彩り、ふたたび心奪うだろう。

https://unpfilm.com/wkw4k/

近所で上映してないけど、『花様年華かようねんか』だけでも どうしても観たい(号泣)という方。 NETFLIXでも配信されていますよ。



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