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ゲルハルト・リヒター展と公式グッズのポスターを心の底からお薦めしたい


2022年に国内の美術館・博物館で開催が予定されている展覧会の中で、おそらくトップ3に入るのでは、というくらい話題になっていたのが、「ゲルハルト・リヒター展」でしょう。

現在、東京・竹橋の東京国立近代美術館で、10月2日(日)まで開催中。
その後、10月15日(土)~愛知県の豊田市美術館へ巡回します。

展示室のエントランス
日本初公開の ≪ビルケナウ≫(一部) 圧倒されました


わたしも、開催をとても楽しみにしていた一人です。そしてさっそく6月下旬に出かけてきまして、展覧会はもちろんのこと、買ってきたポスターにも大変心動かされました。

ということで今回は、リヒター展と、個人的にとてもお薦めしたいグッズ・ポスターのご紹介です。

そもそも、なんでそんなに話題なの?

ゲルハルト・リヒターさんは、ドイツ・ドレスデン出身の現代美術家。
1932年生まれ。御年90歳です。

現代アートの巨匠✨と呼ばれる彼は、60年(!!!)もの長きにわたり、作家活動を続けてきました。

油彩画、写真、デジタルプリント、ガラス、鏡など多岐にわたる素材を用い、具象表現と抽象表現を行き来しながら、人がものを見て認識するという原理に、一貫して取り組み続けてきました。

https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

人がものを見て認識するという原理。
これが、リヒターさんが追い求め、表現し続けてきたテーマです。

さっそく哲学的ですね。みる とは何なのか・・・

わたしがぱっと思い浮かんだのは、"人間は、みているようでみてない"。自分が関心のあること、気になっているもの、意識しているもの、しか見えてない。
興味や関心のないこと、都合の悪いものは、みようとしないし、みえない。

なーんて言葉でした。どこかつながる・・・でしょうか。
これ、実は結構、普段から自戒をこめて考えていることなんですよね。

さてさて、さっそく話が逸れました。
この展覧会、なぜそんなに話題なのか、というと・・・

まず、とにかく、貴重な機会なんです

画家が90歳を迎えた今年2022年、本展では画家が手元に置いてきた初期作から最新のドローイングまでを含む約120点によって、一貫しつつも多岐にわたる60年の画業を紐解きます。

日本では16年ぶり、東京では初となる美術館での個展です。

https://www.momat.go.jp/am/exhibition/gerhardrichter/

リヒターさんが所蔵する作品群は、2018年に設立された「ゲルハルト・リヒター財団」が保管・管理しています。そんなコレクション群が、今回まとめて来日してるっていうのは、やっぱりとっても貴重な機会なんですよね。

しかも、今回の展覧会では、リヒターさんご本人が展示作品を選んだり、会場設計の監修にも関わってらっしゃるとのこと。

確かに、現代作家が自分の展示を監修するって、それほど珍しいことではありません。
が、それってそもそも奇跡です。そんな奇跡みたいなこと、あと何回、実現するでしょうか。しかもドイツじゃなくて、日本の東京で。
確実に歴史の1ページになる出来事なんです。現地に行けるなら、ぜひ。


そして、リヒターさんという方が生きてきた時代と、発せられるメッセージも、示唆に富んでいます


今後、ゲルハルト・リヒター財団のコレクションは、ドイツ・ベルリンのアルテ・ナショナルギャラリー(旧国立美術館)にすべて永久貸与する、と2021年春に発表されました。

今回の貸与についてゲルハルト・リヒターは、「財団を設立するきっかけとなったのは、市場に出したくなかったビルケナウの4枚の絵画だった。これらの作品がベルリンに来ることを嬉しく思う」とコメントしている。

(中略)

同館を含むドイツ国内の27の施設を管理するプロイセン文化遺産財団の会長であるヘルマン・パルツィンガーは「ゲルハルト・リヒターの作品は、ドイツの歴史なしには考えられない。私たちの多くにとって、彼の絵画は20世紀の激動を把握する手段となっている」とコメント。

https://bijutsutecho.com/magazine/news/headline/23844


"ドイツの歴史なしには考えられない"ゲルハルト・リヒターさんってどんな人?


ドイツ・ドレスデン出身の現代美術家。
1932年生まれ。御年90歳のリヒターさん。

現在までの90年に、ドイツでは一体何があったのか、本当にざっくりと書き出してみると・・・激動の時代すぎたのでした。

1.1933~1945年の間、ナチスが政権を掌握。

2.1939~1945年の間、第二次世界大戦が起こり、ドイツは敗戦国に。

3.1961年から28年もの間、東ドイツ側が「ベルリンの壁」という物理的な壁を、西ドイツのとあるエリア(だいたい東京23区と同じくらいの広さ)をぐるっと囲むように作って、国が分裂。貧しかった東ドイツから、景気のいい西ドイツへ人口がどんどん流出するのを防ぐために行われたもの。

リヒターさんの故郷・ドレスデンは東ドイツ側。デザインや美術を学び、仕事をし始めたのも、東ドイツのドレスデンで、でした。

当時の東ドイツは、共産圏。文化芸術の世界では、「社会主義リアリズム」と呼ばれるものが"正解"に。
その中で絵画表現においては、写実的でハッキリしたわかりやすいものが良い、とされてました。
リヒターさんの「フォト・ペインティング」シリーズは、まさにこのときに培われたスキルが活きてるんですよね。


でも、23歳のとき(1955年)にドイツ北部のハンブルグや、南部のミュンヘン、そしてフランスなどを訪問。
27歳で(1959年)ドイツの中心部・カッセルで行われた国際的な美術展「ドクメンタ」でアメリカの作家による抽象表現とも出会います。
ポップ・アートの動向にも大きな関心を寄せていました。

さまざまなアートと出会ったことで、もっと自由な表現がしたいー!!!と思うようになっていったリヒターさんは、「ベルリンの壁」ができる直前、1961年に西ドイツ側へ。
以降、本当にさまざまな表現にチャレンジし続け、作品をシリーズ化させていくのです。

・・・と、あれこれ書き出すと永遠に書いてしまいそうなので、この辺りで。

今回の展覧会開催にあたり、詳しい変遷や解説が、書籍でもWebのレビューでも、本当にいろんなところでいろんな方が詳細にまとめています。
もちろん、今回の図録でも! ぜひあれこれ目を通してみてください。

図録、ネットでポチれます!


個人的にとてもお薦めしたいのは、映画です!

2018年に公開された、『ある画家の数奇な運命』という作品、ご存知でしょうか。

主人公・クルトのモデルは、オークションに出品すれば数十億円の価格がつくことで知られる、現代美術界の巨匠、ゲルハルト・リヒター。監督が映画化を申し込んだところ、1か月にわたっての取材が許された。
ただし、映画化の条件は、人物の名前は変えて、何が事実か事実でないかは、互いに絶対に明かさないこと。
そんなミステリアスな契約のもと、観る者のイマジネーションをさらに膨らませる作品が誕生した。

https://www.neverlookaway-movie.jp/

すでにさまざまな動画配信サービスで視聴できます。
書籍は、なんか難しそう・・・という方は、この映画でぜひ。



展示室で印象に残ったこと

細かいことまで挙げると、ほんとうにたくさんあるんですが・・・

まず、明確な順路がありません。

なので、リヒターさんの画業を時系列で辿ってもよし、
空いてる作品のところからじっくり観てもよし、
いちばん観たかった作品のところへ一目散に行ってもよし。

それぞれが好きなように巡ってOKなんです。
これもまた、リヒターさんから日本のわたしたちへのメッセージ、かもしれませんね。

作品は、ほぼ撮影OKです。

作品も、展示室内の様子も、すでにSNSで多数見かけているかと思います。
公式の動画も公開されていますしね。

でも、現地で、ぜひ体感ください。
作品のサイズ感。絵の具の質感。筆の跡。空間全体の雰囲気・印象。
画面で観ると、現地で観るとじゃ大違いですよ。

音声ガイドは鈴木京香さん。
専用機器よりスマホアプリでの利用が断然お薦めです。

音声ガイドの専用機器を、展示室の入り口でレンタルすると、600円です。

でも、音声ガイド会社が提供する専用アプリを自分のスマホにDLし、そこからリヒター展の音声ガイドコンテンツを選んで決済すると、610円。
ほぼ同じ値段なのに、展覧会の会期中、なんと巡回先での展示が終わる2023年1月末まで!  お家でもどこでも、何度でも聴き放題!!!なんです。

・・・いくらなんでも、お得がすぎませんか。

もちろんわたしはスマホアプリ版を利用しました。
展示室でもらった解説用の冊子を広げながら、家で何度も聴いています。
しかも京香さんのナレーションが素敵すぎる・・・とても聴きやすいです。

アプリとコンテンツは、予めダウンロードしてから出かけると、現地でスムーズ。
また、美術館内はフリーWi-Fiが利用できます。イヤホンもお忘れなく。


ショップを出たら、終わり じゃない!
2F・MOMATコレクションへもハシゴを。

展示室の最後、特設ショップの入り口にも案内が出ていますが、
今回の会場・東京国立近代美術館が所蔵(寄託)する、リヒターさんの作品『シルス・マリア』などの作品が、2Fの「MOMATコレクション」11室にあります。

《シルス・マリア》

ぜひぜひ、忘れずに観てってください。こちらも撮影OKです。

ちなみにわたしは数年前に、このMOMATコレクションで『シルス・マリア』を観て、リヒターさんの存在と、フォト・ペインティングシリーズが好きになりました。
何度観ても、やっぱりこれが好きです。スイスに行ってみたくなります。


グッズはいろいろあるけど、ポスターがすごいんです!!!

さて、前置きが非常に長くなりました。

今回、さまざまな会場限定グッズが販売されている中、展示されている実物を、まじまじと近くで観たとき

これは・・・!買わないと後悔するんでは・・・!!!

と思ったのが、ポスターでした。

https://richter.exhibit.jp/goods/ ページより


たぶん、5分くらいはポスターの前で、じー・・・・っと観ていたと思います。(ショップ、たまたま空いてたんで、ついつい。)

で、迷いに迷って、1つだけ、思いきって買いました!
大好きなフォト・ペインティングシリーズの≪モーター ボート(第1ヴァージョン)≫をセレクト。

ちなみにお値段、3,960円(税込)です。
(図録より60円お高いです・・・そして、図録はまた今度、にしましたw)


まず、梱包からちょっと違う

ポスターと言えば、ロール状をイメージされると思いますが、丸められていません。

ぺらっと平らな状態で、二つ折りにされた大きな段ボールに挟まれ、持ち手がついています。

≪モーター ボート(第1ヴァージョン)≫のサイズは、B2728x515mmです。
段ボールのサイズは、760x570mmもあります。
だいぶ大きいんですよ!!!

梱包サイズ、伝わりますでしょうか。フライヤーがA4です。

美術館から地下鉄までの帰り道、外は結構な強風が吹いていまして、何度かあおられて、危うくすっ飛ばされそうにもなりました。

最も心配だったのは、帰りの電車内です。
混んでたらどうしよう、超絶気まずい。最悪タクシーで帰ろうか、とまで考えました・・・
が、幸いにも車内は余裕があったため、乗ってすぐ、開かない方のドアの前に駆け寄り、事なきをえました。

おそらく、丸めた状態でいいじゃん!その分安くしてよ!という方もおられるでしょう。
でも、このクオリティなら、この対応はやむを得なかったかも、と、開封してから納得しました。(いや、そこそこいいお値段なんですけども)


いざ、開封の儀

持ち手の両側と左右、ぴっちり貼られた透明テープをカットし、段ボールをパカッと開くと、

薄紙の下にポスターが!

右下と左上の2箇所、角が丁寧に固定されていました。

もちろん、ぴしーっときれいです!

お値段がお値段ですので、紙がまず上質。とってもしっかり分厚いです。

過去にも何度か、展覧会でポスターを買ったことはありますが、おそらく自分がこれまで手にしてきたポスターの中で、最も紙が分厚い、かも。


持ってみると、そこそこ重たいです。お値段の重みを感じます・・・

ちょっとやそっとじゃ 丸められない分厚さ しっかりしてます


何よりも、やっぱり、印刷が美しい・・・!!!
しばし見入ってしまいました。

黒の箔押し 日付と美術館の名前入りです


実物の作品は、もちろん絶っ対に手に入りません。

でも、このクオリティのポスターが、3,960円(税込)で手に入って、このままお家にずっと飾れて、毎日何度でも観ることができるのなら、かなりお安いものかもしれない・・・と思いました。

素敵です。

ということで、現在、ポスターに相応しい額装をして、お部屋にどーんと飾るべく、鋭意準備中です。とても楽しみです。

他の作品のポスターも、きっと素敵なことでしょう。
リヒターさんの作品がお好きな方、こんな機会、きっと滅多にありません。
ぜひ。本当に心の底からお薦めします。

ポスター買うほどではないけど・・・という方は、ポストカードをぜひ。
こちらも、なかなかこだわりのデザインで作られてます。わたしも数枚買いました!



まとめ

今回の回顧展の後、リヒターさんの作品群は、2023年にベルリンの現代美術館 ノイエ・ナショナルギャラリーで展示されることが決まっています。

そして2027年に開館予定の「20世紀美術館」で常設展示される予定。
その時はぜひ、ドイツの地で、このコレクション群と再会してみたいです。

何はともあれ、「ゲルハルト・リヒター展」、ぜひ足をお運びください。

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