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観てきた!「森村泰昌:エゴオブスクラ東京2020―さまよえるニッポンの私」at 原美術館

痺れました。これは、”体感する”展覧会だと思いました。
世界ががらっと変わってしまった今、この展示を体感できて良かったです。

知らない歴史を知って、胸がいっぱいになって、うちのめされた感覚になりました。10日近く経った今も、その余韻がまだ色濃く残っています。

現在、臨時休館中ですが、いつか展示が再開したら、ぜひ、多くの方に出掛けてほしいです。そして感想を話し合ってみたいです。

場所:原美術館(東京・北品川)
会期:2020年1月25日(土)~6月7日(日) ※会期延長/現在休館中
時間:11:00~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
   (水曜日は~20:00まで)
休館:月曜
料金:一般1,100円、大高生700円、小中生500円


◎観に行こうと思ったきっかけ

原美術館のクローズまであと1年、と思った昨年後半、美術館の今後の展示スケジュールを調べたとき、だったかと思います。これまで森村さんの作品をきちんと観たこともなかったし、森村さんと縁が深い原美術館での展示だし、ぜひ観たい、と。


◎どんな展覧会?

森村泰昌(もりむら やすまさ)さんは、さまざまな絵画作品や映画、歴史上の人物に自ら扮して、セルフポートレート作品を発表し続けている現代美術家です。1951年大阪市生まれ。現在68歳ということが信じられない、ものすごいパワフルな方です、年齢不詳すぎます。

今回の展覧会は、映像作品「エゴオブスクラ」と、森村さんの新作と初期作品が30年の時を経て一緒に展示される、という2つが見どころです。

館内は1階のほとんどが撮影OKとなっていました。

ちなみに「エゴオブスクラ(Ego Obscura)」とは、
「闇に包まれた曖昧な自我」という意味なんだそうです。

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◎てか、よくわからないけど・・・とりあえず行く

自らが脚本を手がけ自演する映像作品「エゴオブスクラ」と、この映像を用いて会期中開催される作家自身によるレクチャーパフォーマンスを通じて、作家は日本近現代史、文化史に言及します。
戦前の教えが否定され日本人に広がった「空虚」、そこは西洋の価値観で埋められていきました。1951年、大阪に生まれた森村は、その時代の日本で教育を受けた個人的経験から、やがて「真理や価値や思想というものは(中略)いくらでも自由に着替えることができるのだ。」(映像作品「エゴオブスクラ」より)という発想を導きます。

愛情のみでは語りつくせない母国への複雑な感情をにじませながら、森村は「さまよえるニッポンの私」とは何かを模索します。(公式サイトより

・・・はて? と、観に行く前のわたしは思っていました。恥ずかしながら、何度読んでも、うーん・・・?ちょっと何言ってるかわかんない、と。

戦後、バブル期に育ったわたしには、どうしても、自分のいる場所からはちょっと遠いところの出来事、に思えてしまいました。(きっと共感いただける方がいると思うんですが・・・)

でも、とりあえず観てみよう!観たらなんかわかるかも!と思って出かけました。これ、我ながら結構大事にしていることなんです。

よくわからなくても、知識が乏しくても、とりあえず観る。体感する。
作品と対峙してみないと、好きとか嫌いとか、もっと知りたいとか、何も始まらないと思っています。

それに、大事なのは、ちゃんと理解できるかな、ってことではなく、なんか気になるから観たい、という衝動。そもそも理解しようとしなくても全然いいんじゃないか、とさえわたしは思っています。

ということで、もうお察しですよね。
森村さんがどんな方なのか、どんな作品をこれまで手掛けてらしたのか、わたしはほぼ予備知識ゼロだったのですが、原美術館へ出かけました。

◎衝撃を受けた映像作品「エゴオブスクラ」

受付でチケットを買うとき、「あと10分で映像作品が上映開始ですが、ご覧になりますか?」と聞かれ、さっそく観ることに。これが大正解でした!

映像作品は約50分とやや長いのですが、ぜひ!ぜひともご覧ください。
できれば展示を観る前にご覧になることをおすすめします。展示をより楽しめると思います。
上映開始時間は公式サイトに掲載されてます。

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2階の奥の展示室がミニシアターのようになっていて、平日午後でしたが、席はすでにほぼ埋まっていました。

映像作品は、圧巻でした。
約50分の上映時間が一瞬に感じるくらい、ぐっと引き込まれ、その内容に、表現に、森村さんのパフォーマンスに、ものすごくものすごく、衝撃を受けました。
ほんの数十年前の出来事。ほんの数十年前に生きていた人物。
この映像作品を観なかったら知らないままだったこと、気づかなかったこと、考えないままでいたであろうことを、知ることができました。

そして、世界中が終わりの見えない混乱と混沌の真っ只中にいる今、余計にずしんと、重く重く、森村さんの言葉が心に残りました。

たぶん、何にも知らないままで行ったからこその、衝撃なんだと思います。
エンディングの最後の最後まで、ものすごい衝撃でした。

終了後、本当に何とも言い難い気持ちを引きずって隣の展示室へ行くと、どーん!と、映像作品に登場したアイテムが展示されていました。

空いている展示室で、一人ぽつんと対峙すると、映像で観たあれが現実なんだな、と、当たり前のことを再認識して、静かにまた衝撃を受けました。

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1階にも展示が続きます。この曲線の廊下、やっぱり素敵です。

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1階には、初期作品と30年後の作品が。
これも圧倒されます。

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◎グッズは何買ったの?

図録(¥3,740)を買いました。
素敵な装丁で、展示風景や展示された作品の写真をおさめた冊子と、映像作品「エゴオブスクラ」のセリフ全文をまとめた冊子が、2冊セットになってケースに入っています。

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お値段がちょっとお高めでしたが・・・閉館してしまう原美術館で、2020年春、この展覧会が行われたということ、そしてこの場に自分がいて、ものすごい衝撃を受けたということを、この先どんなに時間が経っても、図録を開けばはっきり思い出せる、と思い、迷わず購入しました。

なお、銀座 蔦屋書店でも販売しているそうです。存在感のある図録ですので、ぜひ手にとって、ページをめくってみてください。

◎原美術館 わたしの好きな風景

この原美術館はもともと、実業家・原邦造氏の邸宅として、1938年に建てられました。

設計は、東京国立博物館の現・本館(上野公園)や和光ビル(旧服部時計店・銀座)を手がけた渡辺仁によるもので、1930年代の洋風邸宅を美術館として再生した例としては、東京都庭園美術館と並ぶものです。日本におけるモダニズム建築、あるいは昭和初期洋風邸宅の貴重な例と言われ、特に、中庭を包みこむように緩やかな円弧を描いた空間デザインが特徴的です。居間や食堂・寝室などは企画ごとに展示を入れ替えるギャラリーに改装した一方、浴室やトイレなどのユーティリティスペースは、アーティストに依頼してユニークな常設展示作品に生まれ変わりました。(公式サイトより

しかし、老朽化やバリアフリーの問題から、2020年末をもって閉館することが、2018年11月に発表されました。

あと何回、この場所に来れるんだろう・・・と思いながら、美術館の風景を楽しんできました。やっぱり淋しいですが。

この階段の感じ、とても好きです。

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朝食をみんなで召し上がっていたという、1階のサンルームも素敵です。

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そしてこのお庭からの眺めも。

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細かいですが、こういう隅々にまで、素敵なデザインが。
本当になくなってしまうのが惜しい建物です・・・。

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◎まとめ

改めて、今、この展覧会を観ることができて、本当に本当に、良かったです。この非常事態だからこそ、必要な場所、必要な展覧会でした。

そして、ぜひ多くの方にもご覧いただきたい・・・再開が待たれます。
できればわたしももう一度、体感しに行きたいと思っています。

また、この展覧会を観てわたしは、三島由紀夫という人に、より一層、興味関心を持ちました。

ちょうど、3/20に公開されたドキュメンタリー映画『三島由紀夫vs東大全共闘 50年目の真実』の情報にふれ、これは、今、観ないといけないものなんじゃないか、と思っていましたが、偶然にも、映像作品「エゴオブスクラ」で、このドキュメンタリー映画で出てくる出来事に触れられていたのです。

これは、「今、観なさい」という暗示だな、と思いました。

外出自粛が続く都内ですが、先日、どうしても出かけなければいけない用事のついでに、一人、ほぼ空席の映画館で鑑賞してきました。
後日このnoteにも書きたいと思います。

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原美術館からは、先日、今後の展覧会スケジュールが変更され、閉館日も2021年1月に延期される旨が発表されました。
楽しみにしていたコレクション展が中止になってしまったのは残念でしたが、少しだけ閉館までの時間の猶予ができました。

展覧会だけでなく、カフェも建物そのものも素敵なので、まだ出かけたことのない方にも、ぜひ一度訪れてほしい美術館です。

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