テレビ局の進化が、日本を元気にする 5)エリアの統廃合
以下からの続き、
前章では、放送インフラの統廃合に触れましたが、ここでは、エリアの統廃合について、考えていきたいと思います。
課題:放送圏と経済圏の不一致。
2023年現在、テレビ局は、県域免許制により一部の地域を除いて”道県”ごとにエリアを分けて放送事業をしています。では、このエリアは、いつ設定されたでしょうか?
正解は、1888年(明治21)年。
日本は、1871(明治4)年の廃藩置県により、3府302県が誕生しました。その後、断続的に府県統合が行われ、1888(明治21)年に、愛媛県から讃岐国が分立し香川県となり、今の原型となる47都道府県に落ち着きました。
廃藩置県は、戊辰戦争後、勝者によって論功行賞の意味合いも含め領地の再配分を行いましたが、実は、明治新政府は、内乱により諸藩が著しく財政難に陥っていたので、その立て直しの目的も含めた施策だったのです。その証拠に、廃藩置県では、旧藩の債務および家禄は全て新政府の責任という整理で実施されました。そして、明治政府はその膨大な債務や家禄をいち早く立て直し、列強各国と戦う経済基盤を気付くことを目標に、細切れになっていた藩を大きな括りにしていくのです。目的は、経済的な自立を促進することなのです。そのため、経済的な視点から、当時の面積、人口、交通の便などを勘案し、区分されたと言われています。
さて、ここがポイントです。1888年の経済事情に即して統廃合されたエリアは、約130年経った2020年代でも、その時と同様の経済事情なのでしょうか?エリアごとに、人口の増大や、交通機関の発達とそれに伴う要衝の変化、そして、テレビにとっては何よりも、情報革新によって様変わりした130年後の世界にいる私たち。この様変わりした事情を踏まえぬままに、1888年に設定された地図を使った放送圏で、2020年代の経済圏を支えていることができているのか、それが課題なのです。
対案:道州制による広域テレビ局へ
では、エリアの考え方ですが、これはテレビ業界以外でも検討されつづけている道州制を採用するのがいいと思います。様々な道州制の考察(地域内総生産区分、エリアの流出入規模など)がありますが、ここではあくまでビジネス目線として、そして、地域の民間企業として、活動範囲をどこに設定するかの一案を提示したいと思います。
ここもよい先行事例があります。地域に根差してビジネスを支援しているといえば、地域銀行。その地域銀行が設定している営業エリアは、エリアの経済圏を象徴しています。では事例として、東北エリアの銀行群を見てみましょう。一つ目は、貸出金額全国第十七位、東北エリアでは第一位の七十七銀行の営業エリア。七十七銀行は、宮城に本店を置く地銀です。2023年7月現在、その支店は、北海道、青森、岩手、秋田、山形、福島です。当然、大都市圏(東京、愛知、大阪)には支店をだしていますが、北海道を除くと、近隣の新潟や北関東に出店していないのが特徴です。次いで東北エリア第二位の福島に本店を置く東邦銀行は、秋田、宮城、山形、茨城、栃木と、福島を中心に北関東に張り出しているのが特徴です。このように、中心地や企業体力を勘案してそれぞれエリアを設定していますが、どこも県内で留まることはしていません。
地域銀行は、生活者や企業のニーズに即して県域を越えてビジネスをしています。本来、電波は障害の少ない空中を利用してサービスをしているのだから、そのテレビが130年前に設定された区分でサービスをしていくことをまずはやめてみてはどうでしょうそうか?毎日、隣の県に仕事で通う人が、天気予報をわざわざインターネットで調べなくてもよいテレビが必要なのです。
利点:エリアの拡大が、経済の活性化につながる
放送圏と経済圏を同一にすることで、
1.局統合による戦える資本できる
2.生活者のニーズに対応できる
3.地域意識が醸成できる
県民意識があるように、県を超えた生活圏の地域意識が創れると、単局単エリアでは戦いにくかったビジネスにも、ヒトモノカネが集まるりやすくなります。東北は、”日本の東北”ではなく、”世界の東北”として、その存在をアピールするほどに大きな単位にできるのです。その証拠に、東北地方は、あのオリンピック発祥の地ギリシャよりも大きなGDPを持っているのです。(東北はGDP約231,571百万USドル、ギリシャはGDP219,237百万USドルと、1ドル140円換算にて比較。)
以下へ、つづく
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