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テレビ局の進化が、日本を元気にする 6)デジタル化。。。

以下からの続き、

 さて、最後の章になりました。ここまでは、業界目線、企業目線で様々論を展開してきましたが、そもそものタイトル「テレビ局の進化が、日本を元気にする」は、決して業界や企業の話に限定されるものではありません。そこに関わる一人一人の進化が日本を元気にするという思いで、今できる事を考えてきました。この章では、一人一人にもう少しフォーカスして書いていきたいと思います。なお、この章は、定性的な話を中心に、業界話を織り交ぜて、”応援”要素を多めに、書き進めたいと思います。ちょっと聞く人によっては、耳に刺さる話もあるかもしれませんが、その折は、ご了承くださいませ。

 さて、このシリーズの作者であるハシモトは、昭和の生まれで、バブル崩壊後に社会人になり、バブルを謳歌してきた熱血サラリーマン諸氏から、”昭和の薫陶”を受けて育ちました。

 仕事の要諦は、経験と勘と度胸!

 営業の時は「営業先の滞在時間=売上」だと言われて、足しげくクライアントのところに通いつめました。社内では上司飛び越して話をしてはならん、ハンコの向きにも気をつけろ!などなど、令和の”飲みのネタ”では、事欠かない経験を多数してきました。そんな私でも現在のテレビ業界、広告業界では、その昭和の風習・慣習がまだまだ色濃く残っていると感じます。そして、ここに、個々人でもできる進化のヒントがあると思います。

昭和な仕事環境

 例えば、FAX文化。今日現在、ビジネスでFAXを使っているのは、街の不動産屋さんぐらいしか見かけなくなりましたが、テレビスポットの発注は、いまだにFAXにてやり取りされてます。一部FAXではないものの、ExcelやWordを添付したメールで行われています。もちろん、そのやり取りには、発注用フォーマットがあり、それが埋められて連絡がきます。しかし、同時に、広告会社もテレビ局も、クライアントからより良い発注を引き出すために、フォーマットとは別に、個別要望を依頼してきます。そのため、紙面のフォーマットとは別に、備考欄には所狭しと”営業活動”の文字が埋まります。気づくとフォーマットよりも多くなり、各社担当間でウエットなやり取りが、繰り広げられます。 
 また、貸し借り文化も、個々人が育むテレビ業界の象徴的な商習慣です。テレビCMは効率こそいいのですが、そのリーチ力ゆえに、1回あたりの発注額が数千万から億円単位になります。そして、その取引のほとんどは、口頭発注もしくは、メール発注にて進行し、その発注行為には、契約書がほとんどありません。そんな巨額な商取引を日々積み上げる緊張感から、自然と宣伝部、広告会社、テレビ局の間には、強固な信頼関係が積み上がります。これは、テレビスポットという”未来を買う”取引で良く発生する予想外の事件や事故に対応するにはよくできた仕組みです。
 そんな貸し借り文化は、少し不思議な商習慣も生み出しました。それは、テレビスポットの取引には、”納品検収”が実質無いのです。テレビは通常、過去の実績に基づき未来のCM枠を発注します。そのため、出稿前に露出量(プランニングGRP)を決めるのですが、往々にして出稿後の実績露出量(アクチュアルGRP)は、一致しません。大きいときは20%も露出量が足りなかったり、当然、多かったりします。たとえて言うならば、八百屋さんが、1個1万円のリンゴ100個注文したのだけど、豊作だったので110個納品されたり、天候不順のため、80個しか店頭に届かないのです。でも、お代は最初の契約通り、100万円。。。

 このように、テレビ業界では、限られたプレイヤーで、効率的に仕事を回していくために開発された商習慣で、一時2兆円もの媒体ビジネスを作り上げてきました。しかし、黒船のごとく現れたインターネットが運び込んだ、媒体ビジネスやコンテンツサービスに侵食され始めている現在、日本の商習慣を、域外のプレイヤーに適用することは難しくなってきました。

 そして、前章でも触れた通り、今後テレビ機器の可処分時間は大きく増えることは無く、その可処分時間に連動した媒体ビジネスも比例して減少していきます。これからは伸長し続けるインターネットの土俵で戦うことは必至です。番組制作では、制作会社にテレビ向けの番組を作ってもらうために、いままでの属人的な依頼から、マネタイズを考えて交渉するシーンが増えるでしょう。番組配信としては、海外プラットフォームが配信先としてのパートナーとなり、日本とは違う商習慣で交渉をしなくてはいけなくなります。その時必要なことは、域外のプレイヤーにも通じる、”共通言語”が必要なのです。

 では、ここでの”共通言語”とは、いったい何でしょうか?英語が話せるといいのでしょうか?否、それは、デジタル化された先にある”データ”です。デジタル化は、そういったビジネスに伍していくための第一歩です。マネタイズを前提としたビジネスシーンにおいて、そこに関わる人は、ビジネスをデータを通して理解することと、ビジネス自体をデータを通して説明することで、様々なタイプのプレイヤーに届けることができるようになり、より多くの人とコンセンサスをとることができます。

 本シリーズは、一貫して第三者のデータなどを基にして、論を展開してきました。今回のテーマであるテレビ局の進化は、デジタル化されたデータで、ビジネスを語ることから始まります。そして、その進化の一歩は、国が決めるでもなく、業界や会社が始めるものでもなく、関係する一人一人が踏み出すことで始まります。そうすることで、テレビ局の進化は、コンテンツという生活者に欠かせない価値創造・育成を通して、日本を元気にしていくのだと、私は考えています。

 2023年に執筆したこの記事を後年読み返した時に、大きな変化が起きていることを祈って、いったんこのシリーズを終わりたいと思います。最後までお読みいただいた皆様、ありがとうございました。そして、少しでも感想や批評をご連絡いただけると、今後の励みになりますので、是非ともお寄せください。

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追伸:扉絵の思い。
           Now Sunrise or Sunset, what do you think? and what will you do?


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