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書評

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読んだ本について書きます。個人的な感想です。
運営しているクリエイター

#ひろのぶと株式会社

「書く力」を求めて

「書く力」を求めて

今日もまた、ここにやって来ました。

下北沢の“本屋 B&B”さんです。

今夜は『田中泰延×直塚大成「プロのライターは、どうやって文章を書いているのか?〜調べて書く全技術〜」『「書く力」の教室』(SBクリエイティブ)刊行記念』に参戦です。

『「書く力」の教室』共著者である田中泰延さん、直塚大成さんに加え、担当編集者の小倉碧さん、ブックライターの福島結実子さんの4人による豪華トークライブでした。

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愛すべきメイウェイ

愛すべきメイウェイ

笑えと言わんばかりに大袈裟に煽り立てるよりも、ありのままの事実を訥々と語る方が面白い話になることがあり、それこそが上質なジョークやユーモアなんだと思うのだが、どうだろうか。

「スローシャッター」の田所さんの文章には無駄な抑揚がないという感想はすでに述べたが、じゃあ文章が平坦なのかというと、もちろんそんなことはない。

抑揚は抑えられながら、心地よい起伏がある…という下手な比喩は置いといて、文中に

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旅のトモ

旅のトモ

旅というものにそれほど縁のない人生を歩んできた。ような気がする。

海外に出たこともなく、パスポートさえ持っていない。
飛行機にも45年の人生で3回しか乗っていないし、その全てが羽田←→福岡だ。

そんな私が読んでも、「スローシャッター」は旅への憧憬を抱かせる。

私が海外に旅に出るとしたら、スーツケースに何を詰め込むのだろう。

そんな想いを抱かせたのが、最初の一編である「アプーは小屋から世界へ

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男が涙を流す時

男が涙を流す時

物語の中の人物に自分をどれだけ重ねられるかで、その物語への思い入れも変わるのかもしれない。

エッセイを読む時には、著者の目線に自分の目線を重ねて読むのがよくある形なのかもしれないけど、「スローシャッター」では田所さんの前にいる登場人物に心を重ねることもあった。

私がスローシャッターの登場人物で一番心を寄せたのは、「メコンデルタの花嫁」のトゥイだ。

以下、ネタバレを含むのでご容赦を。

痛さを

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夕陽が遠い世界を繋ぐ

夕陽が遠い世界を繋ぐ

スローシャッター、読了。

今週金曜のイベントまで、繰り返し味わって想いを募らせようと思うのだけど、その間つらつらと雑感を書き連ねようと思う。

書き出しが秀逸だと、なんだか生意気に書いたが、

もちろんそれだけではない。

田所さんが紡ぐ物語には、よく夕陽が描かれる。

時に道端から、時に車から、時に飛行機から。

どこに旅しても美しく輝く夕陽を、田所さんは飾ることなく記す。

他の文章と同じく

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旅の入口

旅の入口

ゆっくりと開く扉の向こうに心躍る景色が見える。知らず知らずのうちに近づいて見ていると、いつの間にか自分自身がその景色の中にいる。行ったことのない土地で、会ったことのない人に会う。
そんな読後感を、あなたは知っているだろうか?

明日の発売日を待たずに届いた本がある。

田所敦嗣・著「スローシャッター」

noteに編まれた紀行文をまとめた一冊だ。

初めて田所さんの文章を見た時から、ずっとファンだ

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全部を賭けない恋なんて

全部を賭けない恋なんて

恋が人を狂わせるのか、人が狂うと恋をするのか。

作家・稲田万理のデビュー作、「全部を賭けない恋がはじまれば」。
先日の出版記念イベントの余韻もそのままに、その日買ってサインももらった一冊を読了。

noteの文章から感じていた軽快な文体はそのままに、きちんと文学に昇華している。

ワタナベアニさんは、本になったことで「薄まった」と評していた。
それは、そうかもしれない。

それでもパワーを感じる

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