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愛すべきメイウェイ

笑えと言わんばかりに大袈裟に煽り立てるよりも、ありのままの事実を訥々と語る方が面白い話になることがあり、それこそが上質なジョークやユーモアなんだと思うのだが、どうだろうか。

静かなるジョークの宝庫

「スローシャッター」の田所さんの文章には無駄な抑揚がないという感想はすでに述べたが、じゃあ文章が平坦なのかというと、もちろんそんなことはない。

抑揚は抑えられながら、心地よい起伏がある…という下手な比喩は置いといて、文中に散りばめられたジョークやユーモアが、文章全体のバランスを整えているように思えるし、それは田所エッセイの魅力の一つだろうとも思うのだ。

「ねぇ、何か面白いもの無い?」
  日本から持ってきた、“酢昆布”をあげようとしたが、彼はそれを気味悪がって受け取らなかった。無理もない、日本のモノなど見るもの全てが初めてである。
「アプーは小屋から世界へ旅をする」
 その間、ヘナロは僕の脇腹をつついてウインクしたり、顎をクィッと動かしてニヤニヤ見たり、気味の悪いおっさんそのものだった。まったくどうしようもないヤツである。
「砂漠とノウム」

ざっと探しただけなのでもっとあるだろうし、抜き出すと色褪せてしまうフレーズもあるのだが、あとは読んで見つけていただきたい。

そして、物語全体がユーモアに包まれ、クスッとせずには読めない一編が「愛しのメイウェイ」ではなかろうか。

正直、半分過ぎくらいから“嫌な予感”がするというか、なんというか。
それでも、物語全体に流れるおかしくも悲しきユーモアから目が離せない。

Twitterのレビューを見ても、メイウェイに想いを寄せる方が多くいるように感じる。

そして、メイウェイへの愛は形になった。

超かわいい。

カメラがPENTAXなのも、なんちゃってペンタキシアン(K-70)として嬉しいし。

あの愛すべきメイウェイをお手元に。

読めば読むほどハマっていく田所敦嗣ワールド。
叶うことなら飲み屋でじっくり聴きたい(どういう感情?)。


さて、今夜(12月23日)は「スローシャッター」刊行記念トークイベントである。

先月の「全部を賭けない恋がはじまれば」のイベントに続き、また下北沢B&Bに馳せ参じる。

今回は作者の田所敦嗣さんはもちろん、ひろのぶと株式会社代表取締役の田中泰延氏と装丁を手がけたアートディレクターの上田豪氏が登壇される。

非常に楽しみ。

登壇のお三方、参加される田所敦嗣ファンの皆様、どうぞよろしくお願いします。

きっとメイウェイバッジあるんだろうな。
間違いなく買うな。

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