本当の自己分析
導入
突然ですが、あなたは自分のことをどれくらい理解していると考えいていますか?
多くの人は自分のことは自分が一番理解していると考えています。
組織心理学者のターシャ・ユーリック博士の研究では
客観性に対する質問に対し、95%もの人は『自分のことは理解できていると』と回答したそうです。
その結果は受けてユーリック博士は著書の中で
「95%もの人は『自分のことは理解できていると』と考えているが、実際の理解度は10〜15%のあいだに過ぎないのが現状だ。私たち自己判断能力には欠陥があるため、自分のパフォーマンスや能力を正確に把握することができない」と、おっしゃっています。
要するに、ほとんどの人は自分がどんな人間か把握できずに、自己について勘違いしているのです。
アメリカで行われた研究では93%もの人が『自分は平均より運転が上手い』と答え、600人を対象にした心理分析を用いた実験では、性格や寿命に関してまで、他人の方が本人よりも正確に見積もれたという研究もあるくらいです。
僕にも心あたりがあります。
前の車の運転に文句を言いながら、自分の車は傷だらけの友人
健康のためサプリを勧めてくる、喫煙者
周りにこういった人が1人や2人はいませんか?
もちろん、その友人視点からしたら、僕やあなたも同じような目で見られている部分はあるに違いないでしょう。
このように僕らは自分の能力や性格、嗜好に至るまで客観的に判断することがとにかく苦手です。
だから僕たちは選択ミスや後悔をするのです。
自分の性格が客観的に見れてないから学校や職業の選択に迷い
自分の能力を客観的に判断できてないから、今の境遇に不満を持つのです。
しかし、この自己認識については、先述したユーリック博士が
驚くほど伸ばせるスキルでもあるとも綴っています。
さらには、セント・ザビエル大学などが行った292人を対象に行った実験では、
セルフコンセプト・クラリティと呼ばれる「自分をよく分かっているか?」という尺度の値が高い人ほど、人生の満足度やトラブル耐性が強く、ストレスレベルも低く、さらには仕事の生産性ですら高かったそうです。
つまり適切に自己分析をすることで、自己認識のスキルを高めることが可能で、自己認識のレベルが高くなればメリットも目白押しというわけです。
多種多様な宗教でも自己認識の重要性は問われていて、ヒンドゥー教のウパニシャツド哲学では「真の自分を追求することこそが知識だ」と言われていて、ユダヤ教の教えでは己を知ることは自己修養の必要条件としています。
そんな伸ばすことが可能で古来から重要視されてきた必須スキルでもある自己認識を、伸ばし高める!その方法をご紹介するというのがこの記事の目的でです。
内的自己認識と外的自己認識
まずはここでいう自己認識というものには、内的自己認識と外的自己認識の2つがあるということを理解しておかなければなりません。
内的自己認識とは自分自身を明確に理解することです。
ユーリック博士はこの内的自己認識には価値観、情熱、願望、フィット、行動・思考パターン、リアクション、そして最後に影響の7つの要素があると提唱しております。
詳細については、この記事の後半で説明させてもらいます。
また、外的自己分析とは周りが自分をどう見ているか?を理解するということです。
外的自己分析については内的自己分析と同様に後半に詳しく説明しますが、この外的自己分析は他者からのフィードバックを求めることがメインとなってきます。そのためコミュニティーの組織的な改革が求めれる場面も出てくるかもしれません。
また、ユーリック博士の研究では、この2つの自己認識に明確な相関関係はないということが分かっています。
つまり、自分のことはよく分かっていても、周りの人が自分を見る目は理解できていなかったり、
周りの人が自分をどう思っているかが分かっていても、自分自身は自分についてあまりよく理解できていない
ということも起こり得るというわけです。
さらにはこの2つの認識は偏りなくバランスよく鍛えていくことで本来の力を発揮するものなのです。
内的自己認識だけができていても、外的自己認識ができていなければ
自分の思考や行動には自信が持てているのに、周りの理解は得られず結果がついてこなくなり
逆に外的自己認識だけができていても、内的自己認識ができていなければ
周りからの評判は良いのに、自分の中ではいつも何か納得がいっていない。。
そんな状況に陥ってしまうというわけです。
よって、この内的、外的という2つの自己認識は車両の両輪のようにバランスよく鍛えていかなければなりません。
そうしなければ真っ直ぐ進めないのです。
この記事の進め方
ここまでが本記事の導入にあたる部分です。
導入では内的自己分析と外的自己分析の2つについて説明してきましたので、ここからはそれら2つの自己認識を高めていく作業を説明していきたいと思います。
しかし、いきなり自己分析のワークを行っても正しく自分を認識することはできません。
そのために本記事はまず自分を見るレンズを磨くと題して自己認識を正しく行うための準備について説明していきます。
具体的には自己認識のレンズを曇らせるナルシシズムを回避する方法を説明しながら、その回避方法として有用な知的謙遜とセルフコンパッション、マインドセットについて学んでいきましょう。
そして次に間違ったレンズの使い方と題して、一般的にはやりがちな、間違った自己分析である内省と反芻、そしてその回避方法等を説明していきたいと思います。
そして自分を見るレンズを磨き、そのレンズの間違った使い方も学んだら、次に正しいレンズの使い方と題してマインドフルネスについて説明していきます。
そして、ここまで徹底して準備をして、やっと本題でもある内的自己認識のためのワークに入っていけるのです。
内的自己認識のワークではまず、自分の歴史をライフストーリーとして遡り、客観的な事実を記憶の中から取り出した上で内的自己分析の7つの柱である、価値観、情熱、願望、フィット、行動・思考パターン、リアクション、影響を浮き彫りにするワークをご紹介したいと思います。
またパーソナリティー理論の中では最も影響力があるとされているBIG5による性格診断も内的自己認識という概念からは少し外れるかもしれませんが、自身を知るという意味では欠かせないでしょう。
そして次に外的自己認識のワークとして、外的自己認識の肝とも言えるフィードバックについての注意点やルールをご紹介し、最後に組織のカルチャーとして、フィードバックを根づかせる重要性と有用性を解説してこの記事を終わりとなります。
またこの記事の最後に、この記事でご紹介した心理テストをまとめた、スプレッドシートを添付しておきます。
この記事を読み進めていく前に、そちらをダウンロードして、テストしてみることをオススメします。
そしてこの記事の本題に入る前に、最初に皆さんに心に留めておいてほしいことがあります。
それは自己認識は長期的な目を持って定期的に行う必要があるものだということです。
自己認識は一度行えば終わりということは決してありません。むしろ「自分は上手く自己認識ができている」と思い始めたら、それはきっと自己認識できなくなってきている兆候でしょう。
自己認識はスキルとして高めようと、明確な目的を持って取り組むと近づいてきてくれるのですが、油断しているといつの間にか離れている。
それが自己認識というもので、基本的には死ぬまで真摯に向かい合う必要があるタスクだと理解することが重要です。
ですので、急がずに長期的な目を持って自己認識を行い、この記事を読み終わった後も定期的にメンテナンスする必要が自己認識には求められるということを、今一度胸に留めていただけると幸いです。
そのように長期的な目を持って行う必要がある自己分析だからこそ、この記事でも自己分析の準備段階における内容がとても長くなってしまいました。
しかし、「簡単な自己分析テストのようなものにはしたくない!」という気持ちから説明を長く書かせてもらいましたので、是非焦らずに読み進めて頂いたら幸いです。
自分を見るレンズを磨く
突然ですが、みなさんはTikTokやSNOWをやったことがありますか?
僕はSNOWで写真を撮ったことはあって、TikTokはYouTubeで流れてくる動画を見たことがあるくらいです。。そしてそれらのアプリで撮った動画や写真を見て思うんですが、、、
今の動画加工技術ってえぐいですよね。
TikTookなんてみんな同じ顔してますもん。
大きいな目、小さい顎、これでもかと細い四肢、、、(まあ、正直可愛いとは思っちゃうんですけどね笑)
みんながみんな、一番よく撮れた写真を加工してアップするから、インターネットとSNSにはこうした加工だらけのカッコいい男性と可愛い女性で溢れています。
そんな、可愛いが溢れている世界に自分も飛び込むのであれば、自分もより良い写真をより強く加工しなければ勝負できません。
現代のインターネットはそんなかっこよさと可愛さのインフレを起こした世界とも言えそうです。
まあ、鏡や写真で見る自分より加工されカッコよく可愛くなった自分を人に見てもらいたいという気持ちは当然のことでしょう。
しかしこれは、努力から自尊に時代が移り変わっているからと言えるのではないでしょうか?
それは自分を良くするより自分をよく見せる方が遥に簡単だからです。
現代社会はこうした、愛せる自分だけを見ようとする、自尊の時代だと言えるのかもしれません。
そしてこの自尊、ナルシシズムとも言える過剰な自己愛は自己認識のレンズを汚し歪める最大の要因でもあります。
見たいと思うものしか見れないレンズなど何も役にたたないということです。
この自己愛や自尊がレンズを歪めるわかりやすい例としてダニング・クルーガー効果やレイク・ウォビゴン効果などが有名です。
ダニング・クルーガー効果とは能力はないのに自信だけはある状態に陥ることです。自分を客観視する自己認識の能力も低いため自信過剰になる現象です。
また注意しなければならないのは、逆に能力が高い人も自分の能力を低く見積りやすいということです。
能力が高い故に、改善が必要な部分にばかり目がいってしまい、成長した自分を自覚する機会が乏しくなっているからです。
また、レイク・ウォビゴン効果は前述したような、「大体のことは自分は平均より上だろう」と考えてしまう心理効果のことです。
特に明確なデータがないときにレイク・ウォビゴン効果は起こりやすく、自分の主観だけで物事を判断をすると、自分が見たいようにしか物事を見なくなるといった、ナルシシズムが自分を見るレンズを歪める代表的な心理現象と言えそうです。
ここで簡単なナルシシズムのテストを行ってみましょう。
以下の問いにYESかNOで答えてみましょう。
どうだったでしょう?
もちろんYESが多ければ多いほどナルシシズムの度合いは高いと言えます。
もしYESの数が多い人はナルシシズムの罠にハマっている可能性が高いです。
また、もっと簡単なナルシストを見分けるテストをご紹介しましょう。
ズバリ
あなたはナルシストですか?
もし、YESならあなたは高い確率でナルシストです。
拍子抜けするほど直球で簡単な質問ですが、この質問によって高い制度で自己愛の強い人間を見分けられることが研究で分かっています。
そして自己認識のためには、このナルシシズムの罠を回避しなければなりません。
その回避方法としてこの記事では、知的謙遜、セルフコンパッション、マインドセットの3つをご紹介したいと思いますので学んできましょう。
知的謙遜
知的謙遜とは自分の知識の限界をきちんと把握している状態のことで、いわゆる無知の知に近い考え方です。
この知的謙遜は多くのメガ企業でも採用の際に重視されておりGoogleの人事担当者も「ただの謙虚さではなく知的謙遜が欠かせません。知的な謙虚さがなければ、私たちは物事を深く学ことはできないからです。」とコメントしており
デューク大学の研究チームは知的謙遜を「知的謙遜が強い人は硬い信念を持っているが、そのいっぽうで自分の間違いやすさに気づいており、問題の大きさに関わらず何を誤ったのかを知ろうとする意思を持っている。日常的な言葉で言えば柔軟な心に近いだろう。」と定義し、研究では知的謙遜のレベルが高い人は
・忍耐力、好奇心、中立性が高い
・自分と意思が異なる相手でも、簡単に批判をしない
・データやファクトを精査するのが上手い
といった特徴が確認される事がわかっています。
まあ、仕事できる人の特徴をまとめたような結果ですよね
だからこそ、知的謙遜は最も重視すべきスキルの一つとして多くの企業で優遇されているのです。
さてここでみなさんの知的謙遜のレベルを図るテストをやってみましょう。
これはペーパーダイン大学が開発したもので信憑性もお墨付きです。
質問は22問
1:全く違う
2:違う
3:どちらでもない
4:賛成
5:強く賛成
とそれぞれの質問に点数をつけていくようにしましょう。
点数がつけ終わったらQ 1、2、3、4、5、12、16、17、18、21、22の点数は反転させてください(1点→5点、4点→2点と言った感じです。)
そうして最後に、それらの点数を全て足し合わせてから22で割り、平均を出しましょう。
目安としては
4点以上なら知的謙遜レベルは平均より高いです。
3〜4点なら平均的な知的謙遜レベルです。しかし伸び代も十分です。
3点以下は知的謙遜が平均より低いです。ぜひ改善に努めましょう!
こんな感じです。どうだったでしょうか?
さらにはこの知的謙遜には4つのサブカテゴリーがあります。
知識や情報をエゴと切り離して考えられるか?
立場を柔軟に変える事ができるか?
他人に視点を尊敬する事ができるか?
自分の知識に過大な自信がないか?
この4つのサブカテゴリーそれぞれの平均も出してみましょう!
サブカテゴリーの得点配分は上記のようになっているので、スコアが低い自分の知的謙遜のウイークポイントを重点的に改善するように心がけましょう。
この知的謙遜の値が高ければ高いほど、ナルシシズムに陥りにくくなります。
それは、ナルシシズムが自分の世界を閉じてしまい、その狭い世界で自尊心を満たす井の中の蛙状態なのに比べ、知的謙遜が高い状態とは、いわば自分を過大評価せずに積極的に自分の世界を広げようとすることだからです。
そして知的謙遜は、特に自分が自信を持っている分野や自分の専門分野でこそ強く意識しないといけません。
これを示す面白い実験があって、ファイナンスの専門家を自認している人を対象に、「固定レート控除」のようなそれっぽい架空の言葉を説明できますか?と尋ねる少し意地悪な実験では、92%の自称専門家が「その言葉なら知っている」と答えたそうです。
その道の専門家を名乗る人たちほど、このニセ単語を知っていると知ったかぶりする傾向は高かったそうで、自分の自信のある分野でこそ知的謙遜しなければいけないことを学べる良い例と言えるでしょう。
そしてこの自分がその分野で知的謙遜ができているか?を最も簡単にチェックする方法が実際に説明してみることです。
さて、みなさんは自転車の絵を描けますか?
この質問はリバプール大学のレベッカ・ローソン博士が学生にした有名な質問で自転車というほぼ毎日どこかでは見かけるものですら半分以上の学生はペダルなどの重要な部品の位置を正確に把握できていなかったという事が報告されています。
実際に説明そするなどしてアウトプットをすることで、知識の不足が嫌というほど実感させられることに気がつくでしょう。
僕も記事を書きながらいつも思います。
あとは教育心理学者のリンダ・エルダー博士が作った客観的な視点を維持するための質問集も役に立つでしょう。(一部内容は簡略化しています。)
ちなみに・ではなく*がついている質問は僕の個人的なお気に入りです。
みなさんも各サブカテゴリー毎に1つで良いのでお気に入りの質問を決めて覚えておくと日常的に活用しやすいかもしれません。
ナルシシズムを回避する知的謙遜は自己認識を正確にするにあたって外すことのできない要素です。
是非、定期的に自分の知的謙遜が落ちてないかチェックをして、上記の質問なども用いて積極的に自身の知的謙遜をメンテナンスするようにしましょう!
また「無知の知」を知るオススメの本として「知っているつもり無知の化学」
をご紹介しておきます。
セルフ・コンパッション
次にセルフ・コンパッションについて説明していきましょう。
このセルフ・コンパッションは知的謙遜以上にナルシシズムを回避し自己認識そ正確にするためには欠かせないスキルと言えます。
前述したように、ナルシシズムとは見たい自分しか見えなくなるから自己認識のレンズを曇らせるのです。
それはいわば、自分自身が本来の自分から目を背けていることと同じなのです。
そしてそれは、自分が自分を否定しているから起こることです。
本来の理想と離れた自分を否定し妄想の理想に近い自分を見ることは確かに気分が良いものです。
しかしその状態では自己認識は行えません。
自分が持っている本来の能力や価値観を許し認め、本来の自分を直視する事こそがセルフ・コンパッションなのです。
ここで一度セルフ・コンパッションをチェックするテストをしてみましょう。
1:ほとんど全く、そうしない
2:まあ、そうしない
3:どちらでもない
4:まあ、そうする
5:ほとんどいつも、そうする
次の12問に上記の点数をつけて、答えていきましょう。
そしてQ7〜Q12の点数は反転させて、合計点を12で割って平均を出すようにしましょう。
平均値は3で1〜2.5点はセルフ・コンパッションは低め、3.5〜5は高いと言えるでしょう。
もし点数が低い人は意識的にセルフ・コンパッションを高めていきましょう!
さらに詳しく自分のセルフコンパッションをチェックしたい方はクリスティーン・ネフさんのwebサイト
もしくは日本語なら
東京成徳大学大学院研究紀要[臨床心理研究第14号]のP.141-153に記載されているので、是非参考にして見てください。
さて、このセルフ・コンパッションには3つの中核となる要素が存在します。
まずはその三要素の紹介からしてきましょう。
1つ目の要素は自分への優しさです。
みなさんは友人や後輩が何か間違いやミスをした時にどのように声をかけますか?
「ミスは誰にでもある」「取り返す努力をすれば良い」
そのような励ましの言葉をかけるのではないでしょうか。
では、自分が間違いやミスをした時にはどんな言葉をかけていますか?
「なんでこんな間違いをするんだ?」「自分が情けない」
このように自分を蔑む言い方が今度は増えるかもしれません。
自分への優しさは他人に優しくするのと同じように自分にも優しくする事を意味します。
この考えは自分に甘いと思われ、問題解決に有効な思考として広く受け入れられるものでなかったかもしれません。
しかし、それは違います。
苦しい状況でこそ積極的に自分をなだめて、落ち着かせることで次の行動につなげることにこそ意味があるからです。
かの有名なアルベルト・アインシュタインも
「どうして、自分を責めるんですか? 他人がちゃんと必要な時に責めてくれるんだから、 いいじゃないですか。」
という言葉を残しています。
別に自分を責めても結果が良くなるわけではありません。
だったら失敗なんて誰にでもあると、自分を慰める言葉を自分にかけて、冷静に事実を省察することの方が、自分を卑下するよりよっぽど有用なのです。
さて、ここで自分への優しさを身につけるために有用なワーク、習慣をご紹介しましょう。
それは自分への批判の言葉に気がつくことです。
後述するマインドフルネスにも近いのですが、何か失敗や辛いことがあったときに自分はどんな言葉で自分を卑下してしまっているのか?ということに積極的に気づくように心がけましょう。
例えば僕であれば自分自身に対して「情けない」という言葉をよくかけていることに気がついています。
僕自身も就職活動に失敗していてるからでしょう。
「なぜ、他人より遅れているのにもっと頑張らない?情けなくないのか?」
僕はこんな言葉をよく自分にかけていることに気がついています。
そしてその度に辛くなるのですが、別に事実として誰かが僕を「情けない」と蔑んでいるわけではありません。
「情けない」と僕を蔑んでいるのは、他でもない僕自身であることが、自分への批判の言葉に気づくようにするとよくわかります。
そして、客観的に本当に自分は情けないのか?という事を考えると今まで自分がしてきた努力や成果にも目を向けることができ、自分への優しさにつながりやすくなります。
どんな、言葉を自分にかけているのか?そこに気がつくことが自分への優しさの第一歩なのです。
セルフ・コンパッションの2つ目の中核的要素は共通の人間性です。
これは人間は誰でも欠点がありながらも成長を続ける存在で、人生の中で誰しも失敗するし、間違いを犯すこともあるし、困難なことに直面することもあるということを認識することです。
私たちは無意識のうちに「〜できなければならない」「〜くらいできるべき」「〜はできるはず」と成功が前提で物事を考え、成功しなければ社会や周りの人間から批判されるものだと考えてしまいます。
しかし、絶対にいつかは失敗や過ちを犯します。
そして、多くの場合、失敗や過ちは享受してもらえるものです。
しかし、自分のこととなると何故か周りの人間、全てから批判されているように感じてしまうものです。
極端な言い方をすれば世界中で失敗や過ちを犯す人間はまるで自分1人のようにすら感じてしまいます。
しかし、そんなことは決してありません。
前述した自分への優しさ同様、共通の人間性を意識することで必要以上の自己批判を避け、自分も周りの人と同じように間違い「完璧な存在でなくても良いんだ」という事を共通の人間性は気づかせてくれるのです。
そして、3つの要素であるマインドフルネスです。
マインドフルネスについてはこの後に詳しく説明しますのでここでは説明を省きますが、簡単に言えば上記の自分を批判する言葉に気づくのように、気づきに重点をおく事を意識すると良いでしょう。
自分への優しさ、共通の人間性、マインドフルネス、この3要素を踏まえた上で、次にこのセルフ・コンパッションが自己認識にになぜ必要なのかをもう少し詳しく説明していきましょう。
まず強調しておきたいのはセルフ・コンパッションは自尊心ではないということです。
自尊心とは自己の価値についてのポジティブな評価のことと言えますが、セルフ・コンパッションは評価ではありません。
失敗したり自分をダメな人間だと卑下しそうになったときに、そんな優しく自分を受け入れる心のありようがセルフ・コンパッションと言えます。
さらには自尊は、より良い自分を認めようとすることで、逆に言えば弱い自分や理想通りでない自分を否定するような感情です。
だから、自尊心は自分をより良い人間であると考える情報ばかりを集め、前述したダニング・クルーガーやレイク・ウォビゴンを誘発させることになりかねない感情と言えるのです。
逆にセルフ・コンパッションは失敗したり理想通りにいかない自分を受け入れ、許す感情です。
だからこそ、どんな自分も否定せず受け入れる心のあり方であるセルフ・コンパッションは自己認識において不可欠なものなのです。
最後に、セルフ・コンパッションについて学べる本とその実践の本をご紹介して、この章は終わりにしたいと思います。
マインドセット
自分を見るレンズを磨く、最後の心構えとしてマインドセットについてご紹介しますしょう。
このマインドセットはスタンフォード大学の心理学者、キャロル・S・ドゥエック博士が有名で第一人者です。
そして、この本はぜひ読みましょう!
今まで500冊近くの本を読んできた僕が、最もおすすめする本です。
さて、この本の中では人には2種類の考え方、硬直マインドセット(証明マインドセット)としなやかマインドセット(成長マインドセット)の人がいるとしています。
この本の中では、硬直マインドセットとは
自分の能力は石板に刻まれたように固定的で変わらないと信じている人ー「硬直マインドセット=fixed mindset」の人ーは自分の能力を繰り返し証明せずにはいられない。
とされています。逆にしなやかマインドセットは
人間の基本的な資質は努力しだいで伸ばすことができるという信念だ。
うまくいかないときにこそ、粘りづよい頑張りを見せるのが「しなやかマインドセット」の特徴だ。
と書かれ説明されています。
僕は個人的に証明マインドセットと成長マインドセットという言葉の方がしっくりきているのでこっちを使いたいと思います。
ここで毎度のことながら、自身のマインドセットを調べる簡単なテストをしてみましょう。
以下の質問に自分が実際にどう振舞っているかをYESかNOで答えていって下さい。
どうだったでしょう?
奇数の番号の質問にYESと答えることが多ければ証明マインドセット気味です。逆に偶数の番号にYESto答えることが多ければ成長マインドセットになっていると言えるでしょう。
そして端的に言うと
ありとあらゆる面において成長マインドセットの方が証明マインドセットより良いと考えれます。
証明マインドセットの人にとって重要なのは自分の能力の証明、つまり能力の誇示ができるかどうかです。
そのため、仮に自分の能力が不足していると、能力が足りない事を悪のようにみなし、恥じ、隠し、欺瞞さえすることがあります。
これは能力は固定的で変わらないものと考える傾向が強いためでしょう。
もし仮に自分の能力が変わらないとしたら、能力のない今の自分を受け入れることは耐え難い苦痛だからです。
そして、受け入れられないのならば、嘘でも理想の立ち位置にいる自分を誇示した方が気が楽というわけです。
さらには仮に能力があったとしても、その能力や成果を誇示することに執着して、さらなる成長は見込めません。
いわば、証明マインドセットは他人の評価の中に生きるようなもので、他人に認めてもらう証明のために、自分を隠し、欺くことも厭わないマインドと言えるのです。
もうわかるように、証明マインドセットは最も自己認識に不向きな考えとも言えます。
自分を見たいように見ることに努力を注いでいる状況とも言えるからです。
逆に成長マインドセットで大切なのは、「自分は成長できたのか?」です。
成長マインドセットの人間にとっては、例えまだ平均にすら達してない能力だとしても、昔の自分に比べた時に成長していれば成功とみなすことができるので、次なる成長にも向かっていけます。
成長マインドセットの人間にとって今いる位置はさほど重要でないということです。
位置よりも「自分は進めているのか?」その進捗こそが成長マインドセットには重要なのです。
能力は努力で伸びると考えているからこそ、今現在の立ち位置を執拗に恥じることがなく真摯に受け止め、成長へと邁進できるのです。
まとめると
このように、自己認識では成長マインドセットが欠かせません。
自分を偽らずに自己認識のスキルを高めていくためには成長マインドセットが不可欠だということです。
では具体的にどうやって成長マインドセットを育てていけば良いのか?
それは、
「人は変われる」という信念のもと、長期的な目を持って自己認識力と一緒に育てていくのが一番の近道でしょう。
この記事の本題でもある自己認識力が高まれば、成長マインドセットも育っていき、成長マインドセットが育っていけば自己認識力も高まるものです。
それは自己認識ができなければ成長のために必要な正確な自分の能力や立ち位置の把握ができず、逆に成長マインドセットがなければ、自分を誇張し自己認識のレンズを曇らせるからです。
知的謙遜はセルフコンパッションと合わせて、「スキルとして成長させていく」という意識を持つことこそが成長マインドセットを育てる最善策でしょう。
また、卵が先か鶏が先かみたいな話になってきてしまうのですが、努力で成果を出したり自分を変えた経験があると、セルフエフィカシーが持てるので成長マインドセットになりやすいとも考えられます。
セルフエフェカシーとは日本語では自己効力感なんて言ったりするのですが、自分自身や自分の未来、自分の周りの世界(人間関係や境遇)を自分の力で変えられるという信念の事を言います。
この自己効力感は自己の経験から生まれる自信とも言えます。
しかし、これも今すぐに成功体験を作れ!と言っても無理な話でしょう。
やはり長期的な目を持って何かに取り組んでいくしかないでしょう。
ちなみに僕は筋トレなんか、自己効力感を育てるためにピッタシだと思っています。(まあ個人的に好きなだけなんですけど・・・)
比較的短期、しかし短すぎもしない半年から一年で目に見えた成果が出るので自己効力感を持つための成功体験としてはピッタシだと思います。
まあ、筋トレでなくても良いのですが、
もし自己効力感が持てないという方は。簡単なことからで良いので何か目標を持って新しい挑戦をすることをオススメします。
ここまで、自分のレンズを磨くと題して知的謙遜、セルフ・コンパッション、マインドセットについて説明してきましたが、この3つに通じる根本的なメッセージはシンプルなものです。
なりたい自分や理想の自分ではなくて、今現在のありのままの自分を受け入れ、目を向けてあげる
ということです。
しかし、これだけを一言で説明しても簡単にできるものでもありません。
知的謙遜もセルフ・コンパッション、マインドセットや自己認識といったものはすべて一度やって完璧ということはないからです。
相互関係をもち、全て同時かつ継続的、長期的にメンテナンスをしなければいけないのがこれらのスキルという事を肝に銘じ、長期的な目を持って、自分を見るレンズを磨く必要があるのです。
間違ったレンズの使い方
さて、自分を見るレンズを磨いた後はいよいよ、内省して自分の事を知ろう、、、
というのは間違いだというのが、この章のトピックです。
多くの人が自己分析と言ったら、自分について自分自身が考える、内省をメインに行おうとするでしょう。
しかしシドニー大学でコーチング心理学を研究しているアンソニー・グラント博士の見解では
自分について考えるという行為は、自分について知ることに何の関係もなかった。それどころか内省に時間をかければかけるほど、自己認識が低下した例すら確認されたそうです。
しかし、決して内省自体が無意味だったり逆効果なわけではありません。
多くの人が間違った方法で内省を行なっているのが問題なのです。
そして間違った内省は、2つの勘違いと重大な罠が原因で起こります。
次にこの内省の2つの勘違いと1つの罠について説明していきましょう。
1つ目の勘違いは内省を重ねていけば、いつか本質的な自分を見つけられるという勘違いです。
前述したユーリック博士はこれを「南京錠のかかった地下室」と形容しています。
内省を重ねることで、いつかは扉が開き。本当の自分に出会える!なんてことはないのです。
かの有名なフロイトも無意識の存在を特定したまでは正しかったですが、それらの無意識を精神分析で知ろうとした試みは、あまり結果を出すものではありませんでした。
現代の精神分析学の多くでもこの無意識を特定するようなアプローチはあまり主流ではないそうです。
なぜなら、人の無意識を知ることはほぼ不可能だからです。
ユーリック博士はこれを「密閉された保管庫」と形容しています。
つまり、扉すらなく開くことはできないのです。
ここで一旦、この絶対的な真実への欲求を測るテストをしてみましょう。
普段の行動に対して、以下の質問に最も当てはまる数字を選んでいきましょう。
1:ほとんどない
2:少ない
3:時々
4:多い
5:ほぼいつも
どうだったでしょうか?
各質問に点数をつけていったら、5で割り平均を出すようにしましょう。
平均が1〜2であれば絶対的な真実への欲求は低く、効果的に自己認識ができるメンタルになっていると言えるでしょう。
平均が3〜4であれば、普通程度と言えるでしょう。しかし、時折絶対的な真実への欲求が高まる傾向も見られるので、自分がそうなっていると気づいたら絶対的な真実などないことを思い出しましょう。
平均が5であれば、現在のあなたは絶対的な真実への欲求がかなり高いです。常に見つからないものを探している状態とも言えるので不安が高まり、自己認識を適切にできるメンタルとは遠いと言えるでしょう。絶対的な真実を追い求める必要はないということを再度確認し、日々心がけるようにしましょう。
どうだったでしょうか?
こういったテストは質問の内容を確認し点数が下がるよう意識的にに心がけるだけで効果を発揮します。
平均が高かった人は少し時間をおいてから、もう一度再テストしてみると良いでしょう。
2つ目の勘違いは、「なぜ」を考えてしまうことです。
なぜなら、「WHYなぜ」で聞かれて質問の回答を僕たちはでっち上げる傾向があるからです。
ここで少し、分離脳患者を対象にした興味深い実験をご紹介しましょう。
分離脳患者とは医学的な理由から脳の左脳と右脳をつなぐ神経を断ち切る外科手術である脳梁離断術を受けた患者の事を指します。
そんな手術して大丈夫なの?と思われると思いますが、1970年以前までは、あまり大きな問題は起こらないと考えられていました。
しかし1970年代初頭に神経科学者のロジャー・スペリーとマイケル・ガザニガが分離脳患者にある実験を行なった事で、事態は変わりました。
分離脳患者には変わった形の本人にも認識できない不自由があったのです。
通常、脳は左半分の情報を右脳で右半分の情報を左脳で処理します。
さらに発言や説明は左脳の役割というのも重要な事なので覚えておいて下さい。
ここでスペリーらは分離脳患者の左耳から「立ち上がって、ドアの方に歩いて」と指示をだしました。(左耳だから、右脳に指示を出した言えます)
そして被験者が指示に従い、ドアの方へ歩いていくと、スペリーらは大きな声で被験者に「何をしているのか?」と尋ねました。
すると分離脳患者はこう答えたそうです。
「コーラを取りに行きたかった」と、、、
これは一見すると意味がわかりません。
あなたが被験者なら「あなたがそう指示したんでしょう?」と聞き返すのが普通でしょう。
しかし分離脳患者にはそれができません。
なぜなら右脳で受け取った理由が説明の役割を持つ左脳に届いてないからです。
そこまでは理屈はわかります。
しかし、それなら被験者の反応は「わからない」が正しいでしょう。
ですが、左脳はそうはしなかったのです。
あろうことか左脳は「コーラを取りに行きたかった」という嘘の理由をでっちあげたのです。
これが所謂、心理学における作話という現象です。
この奇妙な理由づけは右脳の脳卒中などによって時々発症する障害否認でも見ることができます。
右脳の脳卒中には左手の麻痺といった症状が見られるのですが、奇妙な事に左手が上がらない事を頑なに否定し言い訳するという患者が見られるのです。
ある患者は「なんとなく動かしたくない」と
ある患者は医師の「両手を挙げるように」という指示に対して自分の右手しか挙がっていない理由を「右手を上げているので、左手を下げてバランスをとっています」と説明したそうです。
これらの作話の例は特異的な例だと思うかもしれません。
しかし、この作話の共通点として被験者は自身が作話したということに気がついていないという事です。
よって僕らが考える理由がどのくらい正しいのか?という答えば私たちにも知るよしはないという事です。
また、自分がでっち上げた偽の理由だったとしても一度自分が納得してしまえば、その意見を強めるような意見ばかりを見つけ出すようになり、もっと意見を強化していってしまいます。
これを確証バイアスと言います。
よって内省によって得られる理由は、もしかしたら無意識が作り出したでっち上げの理由かもしれないので、確証バイアスでその意見を強化するのが危険だということです。
そして、内省に関する重大な罠として、内省する際に最も気をつけなければならないのが反芻です。
反芻とは自分の過去の失敗や恥ずかしかった経験を繰り返し考え続けてしまう心理現象のことです。
さらにはこの反芻をする傾向が高い人ほど、鬱や不安に苦しみやすいということもわかっています。
ここで簡単に自分がどのくらい反芻しているのか?を確認する簡単なテストをしてみましょう。
以下の7つの質問に
1:ほとんどない
2:少ない
3:ときどきある
4:多い
5:ほとんどいつもある
で点数をつけていって下さい。
そしたら足して7で割り平均点を出してみて下さい。
その平均点が1〜2の方はほとんど反芻しないタイプです。特に問題はないでしょう。
3〜4が普通です。時折反芻する傾向が見られるので注意は必要です。
平均が5だとしたら、反芻レベルはかなり高いです。
自身の反芻しやすいシチュエーションに意識を向け、対策をねる必要があると言えるでしょう。
どうだったでしょうか?
この反芻思考は甘く見ずに、自分が反芻傾向にあるならば積極的に改善させていくべきでしょう。
前述した通りに反芻は鬱の原因にもなり、何より反芻は頭の中で同じ場所をグルグルと回るような思考なので創造的でも生産的なものでもありません。
では具体的にどうすれば良いのか?
ここでは反芻対策として有効な考え方と行動をご紹介しましょう。
まずは考え方ですが、反芻思考に対して適切な対処ができている人たちの多くが同じような考え方をしていることがわかっています。
それは、
「たいてい周りは、自分のミスや失敗を、自分が思うほど気にしていない」
という考え方です。
みなさんも、自分の恥ずかしい言動や行動、失敗のことを思い出すとそれこそ穴があったら入りたい気持ちになりませんか?
しかし、友人の同じような失敗のことを思い出すとどうでしょう?
まあ、そのくらいの失敗は誰でもあるよねと些細な問題に感じませんか?
同様に自分の恥ずかしい言動や失敗も周りの人から見たら些細な問題のはずです。
セルフ・コンパッションの共通の人間性とも似ているのですが、私たちはみんなそんなもんです。
みんな人に言えないような秘密があって、
家では鼻くそをほじりながら、自分のオナラの臭さに自分で驚く
みんなそんなもんなはずなのです。
この「たいてい周りは、自分のミスや失敗を、自分が思うほど気にしていない」という考えは常に意識すると反芻を回避するのに効果的です。
次に反芻対策の行動なのですが、、
文字通り一旦置いとくというものです。
反芻思考に対して考えないようにするというアプローチは基本的に逆効果です。
シロクマ効果などで有名ですが、基本的に人は自分の思考をコントロールすることができません。
「シロクマのことを考えないで!」と言われてシロクマが頭をよぎらない人などいないでしょう。
なので、反芻思考に対しても考えないようにしようとして、そうできるなら誰も苦労しないのです。
だから、考えないのではなく、後で考えるようにすれば良いのです。
具体的に「13時からお金の心配をする」と言ったように悩む時間を予定として組んでしまう、というのが今回ご紹介する反芻対策です。
これは実際にペン州立大学が効果を実証した方法で、やってみればわかるのですが驚くほど反芻思考や不安対策に効果的な方法です。
そして僕のおすすめは、反芻が起こったらメモ用紙に不安な事と悩む時間を書いて、小さくたたんで遠くの棚に文字通り一旦置いとくようにしてます。
物理的に一旦置いとくだけで、反芻でいっぱいいっぱいになっていた脳の中が驚くほどスッキリするのが実感できます。
そして一旦時間をおいて、決めておいた時間にまた悩み始めると、反芻は起こりにくく、論理的に解決策を提案できている自分に気づくと思います。
正しいレンズの使い方
前述したように、決して内省自体が自己認識の役に立たない訳ではありません。
ご紹介した2つの勘違いであるここまで内省を重ねていけば、いつか本質的な自分を見つけられると「なぜ」を考えてしまうに陥ってしまうからいけないのです。
では、どのような内省なら効果的なのか?を正しいレンズの使い方として、3つご紹介したいと思います。
まず1つ目は方法というか考え方なのですが
内省において絶対的な真実を求めてはいけません。
普遍的で本質的な自分など、どこにもいないからです。
人は趣向や情熱、性格は常に変わるものなので、自己認識は柔軟で一部曖昧な思考のもと行うべきなのです。
2つ目は、なぜWHYではなく、何WHATできくと言う事です。
例えば自分が今の仕事を選んだ理由を考える時に
「なぜ、この仕事を選んだのか?」ではなく
「何に惹かれて、この仕事を選んだのか?」と言ったように聞くという事です。
そもそも「なぜ?」と言う選択肢は回答の幅が広すぎてあまり良い質問にならない場合が多いです。
「何?」と言う質問ならば、選択肢の幅は自然と狭くなるはずです。
例えば上記の仕事選びに関する質問であれば、雇用条件、給料、福利厚生、、、、と選択肢が客観的なものに絞りやすく、理由をでっちあげにくくなるので、内省の質問はな「何?」で聞くようにしましょう。
3つ目は行動にフォーカスするというものです。
結局、頭の中の自分なんていうものはあてになりません。
だったら、事実としての自分の行動をベースにその人間を規定した方が、信憑性は高いだろうというのが行動にフォーカスするという事です。
どういう状況でどんな行動を自分はしやすいのか?
結局は自分の未来を変えるのは思考ではなく行動なので、行動でパーソナリティーを規定することは自己認識の基本とも言えるかもしれません。
次に正しいレンズの使い方と題した、自己認識において内省よりも大切なマインドフルネスについて解説していきましょう
マインドフルネス
前述したようにマインドフルネスはセルフ・コンパッションの三要素の一つでもあります。
ユーリック博士の調査によると、自己認識に優れている人の70%が、なんらかの形でマインドフルネスを実行しているという結果が出ているそうです。
マインドフルネスときくと、マインドフルネス瞑想と言われる瞑想を思い浮かべる人も多いでしょう。
しかし、マインドフルネスは別に瞑想だけのものでもありません。
瞑想は一つの手段に過ぎず、基本的にマインドフルネスとはありとあらゆることに気づくことなのです。
私たちの普段の生活は、基本的に何も意識せずに行う、自動運転状態のタスクで満たされいます。
アラームがなるから起床し、特に何も考えずに朝のルーティーンをこなし仕事に行く、いつもと特に変わることなく仕事をこなしていき帰宅、いつも食べるような食事をYouTubeでも見ながら適当に食べ、動画とSNSを漫然と見ていたらいつの間にか寝る時間になっていたので寝る
こんなのはありふれた生活モデルで特に悪いという訳でもありません。
しかし、やる事が自動化され過ぎていて「自分は何をやっているのか?」という意識が低下したり、日々の生活から喜びや感動が得づらくなっているのも事実でしょう。
そこで自動化された行動であっても、今この瞬間の行動や感情に目を向けることで、気づきを得るのがマインドフルネスという考え方です。
このマインドフルネスを知るにあたって、基本となる「マインドフルネスのABC」というものがあるので、次にそれを解説していきましょう。
Awareness
これは「今自分が何をしているか」に気づくということです。
上記の生活モデルでもわかるように、私たちは自分の行動にどんどん集中しづらくなっています。
その1番の原因は間違いなくTVやスマホでしょう。
TVを見ながらご飯を食べると言った行動は言うまでものなく、食事という行為を漫然なものとし食事から何かに気づいたり、喜びを感じる機会は無くなってしまします。
マインドフルネスではマルチタスクではなくシングルタスクを優先的に行うようにし今この瞬間に集中できるようにしましょう。
Being
これは「ご飯を食べている」や「駅まで歩いている」といったように、自分がしていることには気づいているけど、特にやっていることに良いか悪いか?といった価値判断はせずに、ただそういう行動をしている自分が存在していると客観的にとらえることです。
このBeingも結構大切で、上記の生活スタイルでも「動画とSNSを漫然と見ていたらいつの間にか寝る時間になっていた」ということがそんなことが起こりやすくなっている現代だからこそ、積極的に今自分が何をしているのか?積極的に気づくことは大切になっていると言えるのです。
Clarity
これは物事のあるがままを明確にとらえるということです。
例えば今自分が不安に感じているということに気がついたら、漠然と不安だなと考えるのではなく、何が不安なのだろう?と問いかけて明確にしていくことです。
もちろん、ここでも絶対的な答えを求めるべきではないですが、こうした日々の気づきと自問が正しい自己認識には欠かせません。
まとめると、
今に意識を向け、気づいたことのあるがままを評価するのではなく明確にする
これがマインドフルネスの基本なのです。
また、混同しがちなんですが、マインドフルネスはリラックスとは違います。
被験者を、マインドフルネスを行ってもらうグループとマインドフルネスを模したリラックスプログラムを行ってもらうグループに分けて行われた、3日間の実験では、マインドフルネスを行ったグループの方がfMRIによる結果でも集中力が増し、ストレス反応が減っていることがわかっています。
マインドフルネスはリラックスと違い、積極的に気づきを得ようとするものなのです。
自己認識におけるマインドフルネスの重要な活用方法は比較と対比です。
マインドフルネスによって得た気づきを自分の過去の経験や行動と比較、対比することはその気づきにさらに明確な視点を与えてくれるからです。
過去の自分は同じような状況下でどんな行動をとったのか?というような自分の傾向をよりクリアにするような気づきは自己認識では不可欠なのです。
内的自己認識のワーク(ライフストーリー)
さて、知的謙遜、セルフ・コンパッション、マインドセットを学びナルシシズムに陥らないように自己認識をするための準備をし、さらに内省や反芻という、間違った自己認識の方法ではなくマインドフルネスによる正しい自己認識の方法を学んだのであれば、いよいよ自己認識のためのワークに入っていきましょう!
何度も繰り返すようですが、自己認識にゴールはありません。
自己認識の準備として、これまでご紹介してきたものは全て生涯かけて意識し続けるものです。
ですので、ここから具体的なワークに入っていくのですが、決して焦らずに、必要であれば何度もこの記事を遡り、自己認識のためのレンズを磨いてもらえれば幸いです。
まずは自己認識の材料として自分の人生を振り返るライフストリーを書いていきましょう。
このライフストーリーの書き方に関しては色々なやり方があるのですが、あくまで自己分析のための資料程度のものと考え、時間軸に沿って基本的なことを描写するのにとどめるのが良いでしょう。
描きたくなるかもしれませんが、エピソードや事実に分析や見解、当時の心情等をかく必要はありません。
いつ、どこで、誰と、何が、どのように起こったか?を客観的に書くようにしましょう。
ここで当時の心境や自分の行動原理を不用意に書いてしまうと、その後のライフストーリーに確証バイアスがかかってしまい、ある特定の思考に寄りすぎたものになりやすくなってしまうからです。
あくまでライフストーリーは分析のための資料と考えて、なるべく公平に作るようにしましょう。
また、このライフストーリーを書くのは一朝一夕の作業ではありません。
理想を言うなら、数週間かけてじっくりと細かい所まで書いていくべきでしょう。
オススメとしては、まずパッと思いつくような人生においての重要な出来事やターニングポイントをザッと書いていき、何か思い出すたびに隙間を埋めていくように書き足していくのが良いでしょう。
このライフストーリーは何かノートのように書いていっても良いでしょうし、Evernoteのような電子ノートであれば出先であっても思い出すたびにパッと描きたせるので結構オススメです。
そして、ライフストーリーまで書けたらいよいよ自己分析におけるメインディッシュである内的自己認識の7つの柱である、価値観、情熱、願望、フィット、行動・思考パターン、リアクション、影響、を浮き彫りにしていく作業に入っていきましょう。
内的自己認識のワーク(価値観)
まずは人生におけるあなたの価値観を浮き彫りにしていきましょう!
この自分の価値観を知ることこそが自己分析において最も重要といっても過言ではありません。
これは心理学的にはセルフコンセプト・クラリティーと呼ばれるもので、「自分に対する信念が明確で、自分の価値観や能力を自信を持って定義でき、時間が過ぎても常にその定義が安定している安定する状態」を意味するものです。
まあ、要するに自分の価値観が明確で揺るがない状態とでも言えるでしょう。
このセルフコンセプト・クラリティーが明確であればあるほど人生の満足度が高く、ストレスレベルが低い上に、生産性まで高く、人生に目的を持って生きている傾向が高かったそうです。
これは価値観が明確であればあるほど、次にとるべき選択が明確になり、今進んでいる道にも自信が持てるからでしょう。
例えば僕が重要視している価値観のTOP2は成長と勤勉です。
だから僕はコツコツと勤勉に積み重ねていくことで自分の成長につながるような選択を優先的に行うようにしています。
だから、継続的に長期間行うことで成果が出る筋トレや、継続時に行うことで確実に知識が増えていく読書などが好きです。
このnoteもコツコツと知識をアウトップトする事で文章力や表現力を成長させるために始めました。
価値観は人生における道案内の標識のようなものです。
自分の価値観がわかっていないという事は、その標識が読めていないようなものです。
その状態では目的地に近づく事は難しいでしょう。
では実際にこの価値観を浮き彫りにするワークをやっていきましょう。
このワークは2つのフェーズに分かれていて、第1フェーズは自分のライフストーリーを資料として参考にしながら、ユーリック博士の提唱する6つの価値観を浮き彫りにする質問について考えてもらうというものです。
そして、第2フェーズでは有名な価値観リストというものを参考に、自分の価値観のTOP10を選び。優先順位をつけていきましょう。
いわば自分の中での価値観総選挙を行うのがこの第2フェーズです。
これで選ばれたTOP3〜5があなたにとっての人生のコアバリューとも言える大切な価値観というわけです。
というわけで、第1フェーズの質問から入っていきましょう!
どうでしょうか?
これらの質問は価値観を浮き彫りにするのに非常に優れた質問です。
1問に何時間かかっても良いので、ライフストーリーを参考にしながらじっくり考えてみてください。
また、繰り返すようなのですが、これらの質問は絶対的な答えを求めず、なぜ?ではなく何?で考え、自身の行動をベースに考えるようにしましょう。
必要であればこの記事を遡って、もう一度自己認識のポイントをおさらいすると良いでしょう。
そしたら、次に価値観リストを見ていきましょう。
少し長いのですが、パッと目を通してみて直感的に自分に当てはまると思うものをピックアップしてみてください。
ピックアップする数は10〜15を目安に、6つの質問の自分の答えを見直した後にまずはザッと選べば良いです。
そしたら、ピックアップした価値観を、今度は6つの質問の答えを踏まえた上でじっくりと順位付けするようにしましょう。
僕のおすすめは、カードや付箋のようなものに選んだ価値観を書き出して、それぞれのカードをじっくりと比べながら順位付ける方法です。
このじっくりと順位付けする作業は非常に楽しいもので、自分がどんな価値観にどういった優先順位をつけているのかが、どんどんクリアになっていくような感覚を味わい楽しみながらやっていきましょう。
内的自己認識のワーク(情熱)
次は2つ目の柱である、情熱を浮き彫りにしていく質問をしていきましょう。
どうだったでしょうか?
情熱は人生におけるコアパーパスとも言えるもので、いわば人生における主題であり、方向性とも言えるものです。
しかし、情熱は元から自分の中にあるのではなく、基本的には育んでいくものです。
心理学では育てる情熱、グロウス・パッションなんて呼ばれたりもしますが、ロイファナ大学が起業家を対象をして行った調査では仕事に対する情熱は、過去に自分が注いだ努力などのリソースの量に比例する事が分かっています。
その他の調査でも、自分の仕事を天職だと考えている人の大半は、事前に『人生の目的』などは決めておらず、偶然ついた仕事を天職と捉えていた場合がほとんどだったそうです。
あくまで情熱が具体的な真実を求めるのではなく、過去の自分の情熱の傾向を探すべきでしょう。
それを本当の情熱にするためには、もっとより多くの時間をかけて育てる必要があるからです。
内的自己認識のワーク(願望)
3つ目の柱は願望です。
ではこれまでと同様に質問に答えていきましょう。
この願望とは自分が自分の人生に何を求めているかです。
人は自分の願望が分かっていなかったり、行動と願望とに乖離があると後悔をします。
自分の人生の幕が閉じる時に後悔をしないためにも「自分が何を求めているか?」はクリアにしておく必要があるでしょう。
ここで自身の願望を知るための質問とは少しずれてしまうかもしれないのですが、解決思考アプローチ(ブリーフセラピー)という心理療法で有名な
奇跡の質問(ミラクルクエスチョン)というものもご紹介しましょう。
質問はこうです。
この質問本来の目的は、問題のある現在と問題の解決した未来のギャップを浮き彫りにすることで、客観的に幅広い解決策を思いつくようにすることです。
そして、この質問は自分が人生にどんな変化を望んでいるのか?という願望を自己認識するためにも役立つのではないのか?と考え、今回はご紹介させてもらいました。
ぜひ、考えてみてください。
また、願望を自己認識するのに関しては、もう一つ有用な質問をご紹介させてください。それは
こんなシンプルな質問です。
しかし、嫉妬ほど自分が欲しいものを浮き彫りにする感情もありません。
マインドフルネスに常に自分の感情に気づくことを心がける中で嫉妬の感情を抱いたことに気がついたら、「何に自分は嫉妬した?」と問いかけてみて下さい。
絶対的な答えではもちろんないでしょうが自分の願望を認識するヒントが嫉妬には含まれているはずです。
内的自己認識のワーク(フィット)
4つ目の柱はフィットです。
これは自分が最大限活躍できるような環境や状況を知るためのものです。
ある研究では社内でトップレベルに仕事ができるスーパーワーカーの多くは、転職して環境が変わると、思ったほどの成果が出せなくなってしまうと言われています。
さらには社内での自分の生産性は、デスクが隣の人間の生産性に左右されるなんて研究もあるくらいです。
「弘法筆は選ばず」なんて言葉もありますが、そもそも筆が良いから弘法でいられるのでないか?というのが科学の見解なのです。
そのくらい自分にあった環境こフィットは重要なのです。
でが早速、質問に答えながら自分の力が最大限発揮できる環境を考えましょう。
どうだったでしょうか?
もちろん「自分の成果を出せないのは環境が悪い」のようには考え、自身の成果の言い訳を環境にばかり求めるのはあまり関心しません。
しかし、多くの場合自分が身を置く環境は自分で選ぶものです。
「自分が最大限の成果を上げるために、どんな環境に身を置き、周りの環境をどう変えていくか?」と考えることことが重要なのです。
そのためにも自分が最も輝く環境、フィットを自己認識することは内的自己認識において重要となってきます。
内的自己認識のワーク(行動・思考パターン)
次に 5つ目の柱である行動・思考パターンを考えていきましょう。
この行動・思考パターンには大半のシチュエーションにおける自身のパターンと特定のシチュエーションにおけるパターンの2つを検証しなければなりません。
「普段や穏やかで安定したメンタルをしているけど、この作業だけは熱くなりやすく時には攻撃的になってしまうこともある」といったように、自分がどんな状況でどういう傾向を示すのか?も大切な自己認識の要素の一つなのです。
しかし、自分はどういうパターンを示しているのか?と漠然と自分に問いかけても答えを出していくのは難しいでしょう。
そこでこの記事では行動・思考パターンを知る一助として、心理学でも最も信頼性の高いとされている性格分析であるBIG5をご紹介したいと思います。
では早速、テストに答えていきましょう。
1:全く当てはならない
2:ほぼ当てはまらない
3:どちらかと言えば当てはならない
4:どちらでもない
5:どちらかと言えば当てはまる
6:ほぼ当てはまる
7:よく当てはまる
点数がついたら、偶数番目の質問の点数は反転させてください。
このBIG5というテストは名前の通りパーソナリティーを還元できる5つの主要な因子の尺度を測るものです。
そしてその5因子とは、
誠実性(勤勉性)
協調性
情緒安定性(不安症的傾向)
開放性
外向性(社会性)
のことです。
この5因子は、ちょうど学生時代にやらされた模擬試験のようにペンタゴングラフで表すことができるような連続的な尺度です。
「この人は誠実なタイプ」といったような特定のタイプに個人を当てはめるものではなく、この人は「誠実性は高くて、協調性は低く、情緒安定性は中程度」といった具合に各因子がグラデーションになっているのがポイントです。
では実際にBIG5テストによるこの5因子のレベルを確かめてみましょう。
偶数番号の質問の答えを反転させたら、各因子ごとに点数を足して2で割って平均を出すようにしてください。
誠実性 Q3、Q8
協調性 Q2、Q7
情緒安定性 Q4、Q9
開放性 Q5、Q10
外向性 Q1、Q6
どうだったでしょうか?(ちなみに各因子の平均スコアは誠実性4.61協調性4.69情緒安定性4.34開放性5.51外向性3.98です。)
このBIG5での各因子はスコアが高いから良いというものではありません。
では一つずつ説明していきましょう。
誠実性のスコアが高い人には「計画性がある」「規律正しい」「忍耐強い」「非衝動的」などの特徴が、対照的にスコアが低い人は「無秩序」「不注意」「軽率」「衝動的」などの特徴があります。
誠実性が高い人は勉強や仕事をやり抜く傾向があり、大学の成績や卒業率とも強く相関しており、幸福度や寿命まで長いとされています。
しかし、誠実性の高くない人が絶対にダメということでもありません。
誠実性の高い人の方が、変化の激しい混沌とした環境には早く適応でき、ジャズミュージシャンのようなクリエイティブな職業では誠実性が低い方が周りからの評価が高いなんて研究もあります。
協調性が高い人には「協力的」「支援的」「感じが良い」などの特徴が、対照的にスコアが低い人は「対立的」「非有効的」「意地が悪い」などの特徴があります。
協調性が高い人は基本的に初対面の人からの印象が良くなります。第一印象で「この人は味方になってくれる」と思われやすいからです。
しかし協調性は組織内での成功とは相関しません。むしろ協調性の高さは自己樹調の弱さとも結びつき協調性の高い人ほど給料が上がりにくくなるという研究すらあります。
情緒安定性は言わばメンタルの強さです。基本的にはこの情緒安定性のスコアは高い方が幸福度が高く、人間関係でのトラブルも少なく、健康状態すら良いとされています。
一概には言えませんが、多くの場合において情緒安定性のスコアは高い方が良いとは言えるかもしれません。
しかし、情緒安定性の低い人はネガティブな刺激に対しての反応性が高い人でもあるので、組織の中で最も早く危険に気がつきやすく、いち早く組織内に警告を出せる有能な人とも言えるかもしれません。
さらにはクリエイティブな人はメンタルが弱いという研究もあり、アーティスティックな活動において才能を発揮するかもしれません。
開放性は新しい考えや人間関係、環境をどの程度受け入れやすいかを表すもので、クリエイティビティと深く結びついています。好奇心が強く積極的に新しい方法やアイデアを取り入れようとするのも開放性が高い人の特徴でしょう。
対照的に開放性が低い人は何か新しいことを試すのに抵抗を感じ、いつも通りの行動を好む傾向があります。既存の方法を極めるような職人気質な面があり、脇目もふらず同じ方法を修練する一面は強みになり得るでしょう。
外向性が高い人は「人見知りしない」「初対面での会話が得意」であるような、初めての環境やコミュニティーに物おじしない人間と言えるでしょう。対照的に外向性が低い、内向的な人間は所謂「人見知り」で初めての環境に馴染むのに時間がかかるタイプと言えるでしょう。
この外向性は脳の刺激に対する反応性が深く関わっており、脳の新皮質の特定領域の覚醒レベルがデフォルトで低く、刺激を求めて覚醒レベルを高めようとするのが外向性が高い人間、逆に元々の覚醒レベルが高いのでこれ以上高めないように刺激を避けようとするのが内向的な人間と言えます。
また、その両方の特徴を持った人を両向型と表すこともあります。
外向的な人間はオープンオフィスのような雑多で刺激の多い環境を好み、内向的な人間は個室でじっくり集中できるような環境を好む傾向があります。また外向的人間は「ミスが増えても量をこなす」、逆に内向的な人間は「量を減らしてもミスを減らす」といったように「質より量」が外向的で「量より質」が内向的といった特徴もあります。
どうだったでしょうか?
今回のBIG5テストは簡易的なものでしたが。ある程度は信頼できるものです。
しかし、もう少し詳しくBIG5を知りたい方は
上記のようなweb診断で測ってみても良いでしょう。
このBIG5での傾向は言わば大半のシチュエーションでの自分の思考・行動パターンを言えるでしょう。
しかし、全てのシチュエーションで当てはまるというわけでもありません。
僕たちは本来は内向的なのに、必要に応じていつも以上に外向的に振る舞えたりと、言わば遺伝的なキャラクターに反したキャラクターを目的は利益のために演じることもできます。
ではここでまた質問を通じて、どんな特定のシチューエーションにおいて違う自分を演じることがあるのかをチェックしてみましょう。
質問はシンプルなものです。
どうだったでしょうか?このように特定のシチュエーションでの自分の思考・行動パターンを知っておくことも内的自己分析には欠かせないでしょう。
何か目的や利益のために自分を演じることはそんなに悪いことではありません。
しかし、日常的に生まれつきの性格を抑えた行動をとっていると自律神経は緊張した状態に陥り、慢性化すると健康に悪影響を及ぼすこともわかっています。
基本的には遺伝的パーソナリティーとも言える性格特性にフィットした環境に身を置くことが重要であると考えるのが妥当でしょう。
内的自己認識のワーク(リアクション)
次に6つ目の柱であるリアクションについて説明していきましょう。
ユーリック博士曰く、リアクションとは自身の力量を物語る思考、感情、行動だそうです。
例えばすぐに怒る人は、自分は感情をコントロールする能力がないということは周りに晒しているようなものです。
つまりすぐ怒るというリアクションは感情をコントロールできないという短所を物語る行動と言えます。
逆に、ストレスのかかるような状態でも冷静でいられる人は、冷静でいるというリアクションで「この人は自分の感情のコントロール能力がある人だ」と周りに示しているとも言えるわけです。
これは言うまでもなく、長所と短所を反映したものが多くなるそうです。
よってリアクションでの自己認識を高める質問は長所と短所を見極めるものとなっております。
では早速、自分の長所と短所を知る質問にはいっていきましょう。
ここで、もう一度確認しておきますがこれらの質問には内政ではなく、マインドフルに気づくことが重要です。
日々の自分のリアクションに注意して、多くの気づきを得ながら自己認識を進めていくことを忘れないようにしましょう。
内的自己認識のワーク(影響)
そして内的自己認識の最後の柱は影響です。
これは自分の行動が周りにどのような影響を与えいるかを認識できているかどうか?というものです。
自分の行動による影響の認識が間違っていては、自分を理解し、自身の行動を上手にコントロールできているとは言えないのです。
そこで自分が周りに与えているかもしれない影響を知るきっかけを、質問に答えながら掴んでいきましょう。
どうだったでしょうか?基本的に他人の気持ちなんていうものはわからないものです。
しかし、自分の行動が原因で必要もなく相手を怒らせたり不快に思わせてしまうといったようなことは、基本的に自分の行動による影響を認識できていないことが原因で起こります。
内的自己認識では内面に目を向けた価値観や情熱だけでなく、自分の思想や行動による影響も認識する必要があるのです。
ここまで内的自己認識として、ライフストーリーを書くワークに始まり、ユーリック博士の提唱する7つ柱を浮き彫りにしていく質問やワークをこなしてもらいました。
繰り返すようですが、自己認識は一回やって終わりということはありません。
日々の生活をマインドフルネスに過ごし、自己認識のスキルは人生を通じて高めていく努力をしていくべきでしょう。
では次に外的自己認識について説明していきたいと思います。
外的自己認識
前述したように、外的自己分析とは周りが自分をどう見ているか?を理解するということです。
注意しなければならないのは、内的自己認識と外的自己認識に明確な相関関係はなく、内的自己認識のワークを行なってきたからといって、外的自己認識のスキルも高まったということはないということです。
つまり、ここでもう一度頭を切り替えて謙虚な姿勢で外的自己認識には望む必要性があるのです。
そして内的自己認識と外的自己認識は偏りなく同時並行で鍛えていくべきスキルでもあります。
仮に内的自己認識だけができていても、外的自己認識ができていなければ、自分の思考や行動には自信が持てているのに、周りからの理解は得られていないので結果がついてこないということが起こり得るからです。
だからこそ、内的自己認識だけでなく、外的自己認識も勢力的に取り組んで、初めて自己認識のスキルを適切に高められていると言えるのです。
そして重要なのは、外的自己認識を1人で行うことは不可能ということです。
いくら「他人が自分をどう思っているか?」を自分の頭の中で考えても、あくまでそれは他人からの自分の評価を想像しているに過ぎず、事実とはかけ離れた証拠の少ない妄想とも言えます。
そのため外的自己認識のためには周りからのフィードバックが不可欠になってきます。
この周りからのフィードバックは多くの場合、内的な認識より多くの場合で正確であることもわかっています。
心理学者ジョシュア・ジャクソンが600人分のせ各テストを分析した研究では、「被験者が思う自分の性格」より「友人が判断した被験者の性格」の方が確実性が高く、さらには被験者の寿命すら友人の方が性格に判断できていたことがわかっています。
そのため、周りからのフィードバックを通して外的自己認識をして初めて自己認識が高まったとも言えるのです。
そしてこのフィードバックには必ず痛みが伴います。
そして僕たちはフィードバックにはある程度の痛みが伴うことを分かっているからこと、友人や親しい人への素直なフィードバックを避ける傾向があります。
これはマム効果として知られるものなのですが、私たちは望ましくないメッセージは、相手にとって有益なものであっても避ける傾向があります。
簡単なところで言えば、「鼻毛が出ている」や「口臭が臭い」というメッセージは誰もが言いづらく、相手に伝えづらいですよね。
多くの人は厳しい真実ではなく優しい嘘をつきたくなるものなのです。
そのため、フィードバックを得るためには2つのハードルを超えなければなりません。
痛みを伴ってでもフィードバックを素直に受け入れる覚悟
相手が自分に率直なフィードバックを出せるようにするための雰囲気作り
という2つの障壁を乗り越えて初めて意味あるフィードバックは実現するのです。
フィードバックを受け入れる
フィードバックを受け入れるためには、まずフィードバックを受け入れない3タイプについて学ばなければなりません。
自分がどれに当てはまるかを読みながら考え、そのタイプから脱却できるようにしていきましょう。
その3タイプとは「必要がない」「求めるべきでない」「求めたくない」です。
フィードバックは「必要がない」というタイプに欠けているのは、他人に意見の重要性を認識することです。
悪意のある悪口のようなものではなく、意味のある有益なフィードバックはいつだって自身の改善や向上の手助けとなる必要なものであると再確認するべきでしょう。
フィードバックは「求めるべきでない」というタイプは、「自分は人の意見になど左右されず、自分の意見を貫くためにもフィードバックをいう雑音を排除する」といった唯我独尊な考えを持った人にありがちなタイプです。
しかし、自分の意見を信じて進むことと、独りよがりになって聞く耳を持たなくなることは違います。
現にある研究では、高い成果を出す一流のリーダーの83%が定期的なフィードバックを求めていたのに対し、パフォーマンスの低いリーダーがフィードバックを求める割合は17%だったということがわかっています。
最初からフィードバックを拒絶することに優位な点はないと考えた方が良いということでしょう。
確かに、受けたフィードバックの全てを取り入れる必要はありませんが、取り入れるのかどうかの選択はフィードバックを受けてから自分ですれば良いだけの話なのです。
3つ目のタイプはフィードバックをを「求めたくない」というタイプです。
このタイプがフィードバックを求めない原因の一つが、フィードバックによって受ける痛みを過大評価しているところです。
確かにフィードバックには痛みが伴うものです。
しかし、自発的にフィードバックを求めにいく姿勢で悪意のない正しいフィードバックを受けることに、然程の痛みは伴いません。
そしてその痛みを差し引いても、プラスになるような学びや気づき、成長があるからフィードバックは必要であることを再確認すると良いでしょう。
次にフィードバックを求めるべき相手について考えていきましょう。
まずフィードバックを求めてはいけないのは愛のない批判者と無批判な熱愛者です。
愛のない批判者は、自分に恨みを持っている人、自分に過剰な嫉妬心や対抗心を持っている人、理不尽に厳しい人などが該当します。
相手を批判して傷つけることに喜びを感じるサディストや、シャーデンフロイデと呼ばれる人を引きずり下ろすことに快感を覚える人はどうしてもいます。
正確には人間には誰しもがそういった一面があるのですが、その傾向が顕著な人間も一定数いるのです。
そういった人たち方建設的なフィードバックをもらうことは難しいと考えて良いでしょう。
無批判な熱愛者はいわば優しい嘘しかつけないタイプです。
このタイプは過度に衝突を恐れるため八方美人のようになりやすく、前述したBIG5では協調性のスコアが高い人にありがちなタイプです。
上記のフィードバックを求めてはいけない愛のない批判者と無批判者はネットの世界で言うアンチと信者と言ったらわかりやすいかもしれません。
これら2つのタイプに共通している特徴として、確証バイアスが強いことが挙げられます。
アンチは自分が否定したい相手の粗探しに時間を割く傾向があり、信者は逆に自分は信じたい相手の良いところばかりを探すようになりがちです。
そういった、いわば他者を見るレンズが曇っている状態の人間は、やはりフィードバックに適切な人間とは言えないでしょう。
では、どういったタイプの人間にフィードバックを求めれば良いのか?
それは、愛ある批判者でしょう。
愛のある批判者は双方が互いの成功を願い、相互の信頼の度合いが高い関係と言える人間です。
しかしこの愛のある批判者は、単純に仲が良いとか付き合いが長いといった、親友的なものとは限りません。
人間は自分と対等な人間に対抗心や嫉妬心を強く抱きやすく、人間関係が関係が長くなるほどその歴史の長さに比例して、より複雑な要素が絡み合っていくものです。
ですので、愛のある批判者は親友や家族だけでなく、ちょっとした知り合いやそこまで親密でもない同僚であったりもします。
助けが必要な時に十分なサポートを受けられ、かつ相手のためにできる限りのサポートをしようと思えるような相手こそ愛のある批判者に相応しいと言えるかもしれません。
フィードバックのルール
ではここでフィードバックを受ける際とする際の簡単なルールをご紹介したいと思います。
まず一つ目、に先ほどから何回も登場しているターシャ・ユーリック博士がクライアント企業でフィードバック交換会を行ったときに提示した基本ルールをご紹介しましょう。
また、上記の本「NO RULES」で紹介されている、率直なフィードバックが企業カルチャーとして根付いているネットフリックスでのフィードバックのガイドライン4Aも紹介したいと思います。
Aim to assist(相手を助けようと言う気持ちで)は言葉の通り、意図的に相手を傷つけたり、自分の立場を強めようとするようなフィードバックは許されないということです。
Actionable(行動変化を促す)はフィードバックを受けた相手が行動をどう変えるのか?にフォーカスするべきだと言うことです。適切なフィードバックとは悪いところを指摘するだけでなく、次にとるべき行動までを提示するものです。
Appreciate(感謝する)は反射的に反発や否定をせずに、まずフィードバックをくれたことに対して感謝し、真摯に耳を傾ける姿勢を作る必要があります。
Accept or discard(取捨選択)フィードバックには真摯に耳を傾ける必要があります。しかしフィードバックをよく検討した末に、そのフィードバックに従うかどうかの判断は自分でしなければなりません。あくまでフィードバックは取るべき行動の選択肢の1つを提示するものであって、相手をコントロールするためのものではないということをフィードバックをする側、受ける側の双方が理解しなければならないということです。
ここまでを統括して、僕なりのフィードバックのルールを下にまとめておきます。
そして、これはちょっとした付け足しなのですが
これもフィードバックには大切なことだと思います。
フィードバックは師が弟子にする助言のようなものではありません。
師も弟子もない、対等な立場で事実を共有し合う機会がフィードバックです。
「“相手“ができていない」という事実があるのであれば“自分はできているのか?“に関わらずその事実はフィードバックとして共有されるべきで、フィードバックを受ける側も「そういうあなたもできていませんよね?」といった思考を持つべきではないのです。
そして、これらのことを学んだからといって、すぐにフィードバックをもらえるようになるか?というと難しいでしょう。
このフィードバックは1人で行うことはもちろん不可能です。
そのためフィードバックをメインとする外的自己認識には、前述したネットフリックスのように企業カルチャーとしてフィードバックが根付いていることが最も好ましいです。
最後にこの組織単位での自己認識について説明していきたいと思います。
組織単位での自己認識
組織単位でフィードバックのカルチャーを根づかせ、自己認識を相互に行うためには目的、貢献、進捗の3つの要素を共有した組織でなくてはなりません。
そしてこの3つの要素は独立したものではなく相互が結びつきあって大きな力を発揮するものです。
まず1つ目の目的とは、いわゆるビジョンやミッションのようなもので、例えばGoogleであればミッションとして「世界中の情報を整理し、世界中の人々がアクセスできて使えるようにすること 」を掲げています。このように組織全体で何を目指し、何に関係する仕事をしなければならないのかは共有されていなければなりません。
そもそもフィードバックは自分が目的や成功のために進むべき道から無意識に逸れてしまっている時に、周りの客観的な意見を参考にもう一度軌道修正するために行うものです。
そのため、フィードバック出す側は、その人がどこに向かおうとしているのか?を知っておかないと、そもそもフィードバックの出しようがありません。
しかし組織単位で目的が共通して共有されていれば、組織内の誰もが適切なフィードバックを出せる存在となり得るというわけです。
さらには目的が共有されていて、共通していることはフィードバックをする動機付けになりえます。
端的に言えば自分以外の人間の組織への貢献が、自分にもメリットをもたらすような状況はフィードバックを生みやすいのです。
これはスポーツのチームなんかがわかりやすいでしょう。例えばサッカーはチームで勝利という共通の目的を目指すゲームと言えます。
その中で勝利という目的を果たすためにはチーム全員のレベルのボトムアップが不可欠になっていきます。
自分だけでなく、自分以外のチームメイトのプレーもよくなればチームの勝利に近づくというインセンティブが個々人に働くので、こういったチームスポーツでは練習中でも試合中でも積極的にお互いのプレーをフィードバックし合う習慣が根付きやすいのです。
仲間の成長と貢献が組織の目的達成につながり、その組織の目的が自分の目的と一致していることが、やはりフィードバックはカルチャーとして根づかせる基本なのでしょう。
同じ方向を向いているチームでは、個々人は自分のチームへの貢献に尽力するのでフィードバックを受け入れやすく、周りの人間のチームへの貢献にも協力的なのでフィードバックをしやすいということです。
逆に組織の中の大多数が漫然と、ただ属しているような状態でいる組織ではフィードバック文化を根付かせるのは難しいでしょう。
成長し前進しようとしていない人間はフィードバックを与えることはせず、受けることにも否定し拒否する可能性が高いからです。
そのため組織のマネージャクラスは組織の人間に当事者意識と責任を持たせなければなりません。そのために必要なのが貢献と進捗です。
進捗、つまりプロジェクトが少しでも前に進むことや仕事上での小さな勝利こそが社員の最大のモチベーションとなり、そのことを気づかせてあげることこそがマネージャーにとっての最も重要な仕事とも言えるのです。
詳しくはこちらの本を参考にしてください。
進捗があることで、組織全体にモチベーションと当事者意識が芽生え、フィードバックがカルチャーとして根付きやすくなります。そしてフィードバックによる個々人の成長はさらなる進捗にもつながるのです。
今回はあまり上手にまとめられませんでしたが、この目的、貢献、進捗は相互に作用し合い、組織単位の自己認識を高めていくものなのです。
また、組織単位でのフィードバックには360度評価のようなものも有名です。
しかし、こう言った方法もフィードバックをする下地を作った上で行った方が有効でしょう。だからこそフィードバックをカルチャーとして根づかせることは重要なのです。
終わりに
今回は大変長い記事となってしましました(笑)
最後まで読んでくれた方には感謝の気持ちを深く伝えたいです。
しかしこの記事でも何度も繰り返したように、自己認識は1度行って終わりということは決してありません。
自己認識が頭打ちということは決してありません。しかし怠れば簡単に失われていくのも自己認識です。
この記事を読んでくれた方が、これからの人生で幾度となく考える「自分とは?」という疑問を考える一助にこの記事がなれば幸いです。
スプレッドシート
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参考文献
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