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《後編》ウンブリア国立絵画館(The National Gallery of Umbria):ルネサンスから近代まで

先日書いた《前編》に続いて、ここでは、1450年代以降、ルネサンス期以降の作品の紹介をしていく。

第9室(Giovanni Boccati)に展示されるジョヴァンニ・ボッカティ(Giovanni Boccati; 1420-1480)の『オーケストラのマリア』(Madonna dell'Orchestra)(1448)。

歌う8人の天使たちと楽器を持った6人の天使たちが聖母子の周りを囲んでいるが、イエスや天使のポーズがなんとも言えない。



カメリーノ出身のボカッティは、優れた画家として1445年にペルージャの市民権を獲得した。

こちらは、第11室(Piero della Francesca)に展示されるピエロ・デッラ・フランチェスカ(Piero della Francesca)作『聖アントニオのポリプティック(4枚以上のパネルからなる衝立状の宗教画)』(Polittico di Sant'Antonio)(1467-69)。

こちらは、聖アントニオ・ディ・パドヴァのフランシスコ会修道院のために制作された。

金色のふちは、後期ゴシックの影響であるという。

裾絵の一部、聖アントニオの奇跡。


第12室(Niccolò di Liberatore, detto l'Alunno)にあるニッコロ・ディ・リベラトーレ、アルッノ(Niccolò di Liberatore, detto l'Alunno; 1430-1502)作『ゴンファローネ・デイ・レジスティと受胎告知』(Gonfalone dei Legisti o dell'Annunziata)(1466)。

法学者組合(Collegio dei Dottori Legisti)のために制作された。

下の方には、修道士と共に、赤い服を着た書記の姿が確認できる。

続いて第14室(Benedetto Bonfigli)に展示されるベネデット・ボンフィリ(Benedetto Bonfigli; 1420-96)作『聖ドメニコの聖母』(Madonna di San Domenico)(1448-49 ca.)。

優しげな聖母の表情。


同じく、ボンフィリの『受胎告知』(Annunciazione dei Notai)(1450-53 ca.)。

またボンフィリの『マリアと聖人たち』(Madonna e santi)(1450-53 ca.)。

ペルージャ生まれのボンフィリは、ローマでも成功を収めた後、ペルージャに戻り、ペルージャでも大きな仕事を行いつつその評判を高めていった。

彼の影響を受けた者の一人に、写真には、収めていないが、第15室(Perugino Bottega del 1473)に作品が展示されるバルトロメオ・カポラーリ(Bartolomeo Caporali)がいる。

第15室には、先日紹介したペルジーノ(Pietro di Cristoforo Vannucci, detto il Perugino; 1450-1523)の『東方三博士の礼拝』(Adorazione dei Magi)(1470-73)も展示されている。

ペルジーノ作品については個別のnote(ルネサンス期イタリアを代表する画家ペルジーノ)があるため詳しい説明は省略していくが、このマギの絵画は、ペルジーノが画家として頭角を現し始めた頃の作品だとされている。

第18室(Luca Signorelli Bartolomeo Caporali)は、部屋自体に見事な天井画とフレスコ画が描かれている。

うっかり天井画に気を取られて室内の展示品を撮るのを忘れてしまったが、バルトロメオ・カポラーリやピエロ・ディ・コジモ(Piero di Cosimo; 1461-1521)、ルカ・シニョレッリ(Luca Signorelli;1450‐1517)の作品、織物も展示されている。

下の階に降りて(日本の4階から3階へ)、第22室、23室、25室はペルジーノの部屋となっている。

先日紹介した『慰めの聖母』(Madonna della confraternita della Consolazione)(1496-98)。

ペルジーノの作品は、やはりこの絵画館の中の大きな目玉の一つである。

さて第24室(Bernardino di Betto, detto Pintoricchio)には、ペルジーノと並ぶペルージャの画家ピントリッキオ(Bernardino di Betto, detto Pintoricchio;1454-1513)の作品が展示される。

ピントリッキオ作『サンタ・マリア・デイ・フォッシの祭壇画』(1495-96 ca.)。

この木の枠自体、ピントリッキオがデザインしている。

ピントリッキオは、1480年代末から1490年代にかけてローマ、ヴァチカンでも仕事をしており、その最も有名なものに、教皇アレクサンデル6世(治世 1492-1503)に依頼されたボルジアの間がある。

ペルジーノなど、他のウンブリアの画家たちと同じく、優美でしなやかな筆使いである。

展示室の廊下に展示されるプリオリ宮の模型。


第27室(Esebio da San Giorgio Giovanni Battista Caporali)に展示されるサン・ジョルジョ(Esebio da San Giorgio Giovanni Battista Caporali; 1480-1540)作『東方三博士の礼拝』(Adorazione dei Magi)(1505)。

ペルジーノとピントリッキオの影響を大きく受けた16世紀の画家であるサン・ジョルジョ。

この作品の上部に描かれる天使たちは、彼の協力者たちをモデルにしているという。

第28室(Berto di Giovanni)に展示されるスミッカ(Giannicola di Paola, detto Smicca; 1460-1544)作『聖ジョヴァンニ・エヴァンジェリスタ、聖母、聖マグダラ、聖セバスティアーノ』(1505-1510)。

こちらの同じくスミッカ作『福者コロンバ・ダ・リエーティ』(Beata Colomba da Rieti)(1505-10)。

続いて第29室(Bernardino di Mariotto)に展示されるベルナルディーノ・ディ・マリオット(Bernardino di Mariotto; 1478-1566)作『聖カテリナの純白な婚礼』(Sposalizio mistico di santa Caterina)(1530-33 ca.)。

ペルージャ生まれの16世紀の画家マリオットは、ルカ・シニョレッリ、ペルジーノ、ピントリッキオの画風を確実に受け継いでいた。

もう一点、マリオットの『聖母子と聖アンナ、聖ロッコ、聖セバスティアーノ』(Maddona col Bambino e i santi Anna, Rocco e Sebastiano)(1530-33 ca.)。

第30室(Raffaellino del Colle)のラファエッリーノ・デル・コッレ(Raffaellino di Michelangelo, detto Raffaellino del Colle; 15世紀末-1566)作『聖家族と洗礼者 聖ジョヴァンニ』(Sacra Famiglia e san Giovanni Battista)(1560 ca.)。

こちらはペルージャのサンタゴスティーノ教会のために制作された。

そして第36室(Pietro da Cortona, Andrea Sacchi, Francesco Mochi)に設置されるピエトロ・ダ・コルトーナ(Pietro Berrettini, detto Pietro da Cortona: 1596-1669)作『聖母の誕生』(Natività della Vergine)(1643)。

バロック期の画家ピエトロ・ダ・コルトーナは、建築家としても有名であり、代表作にバルベリーニ宮殿(現・ローマ国立美術館)の天井画と建築装飾がある。

第30室からだいぶ作品を端折ってしまっているが、彼の宗教画を見ていると、女性たちの表情は生き生きと柔らかく、衣服・光の色が鮮やかで、前時代との違いを大きく感じることができる。

いよいよ終盤に近づいてきた第37室(Orazio Gentileschi, Valentin de Boulogne, Giusto Fiammingo)に展示されるオラツィオ・ジェンティレスキ(Orazio Gentileschi; 1562-1647)作『スピネット(クラヴィチェンバロに似た楽器)を演奏する聖チェチーリアと天使』(Santa Cecilia suona la spinetta , assistita da un angelo)(1618-21)。

こちらは、フランス生まれローマ育ちのバロック期の画家ヴァレンティン・ド・ブロング(Valentin de Boulogne;1591-1632)作『ノリ・メ・タンゲレ』(Noli me tangere)(1620 ca.)。

復活後のイエスが、マグダラのマリアに対して、「私に触れないで」(ラテン語:Noli me tangere=Don't touch me)と言ったという有名な場面である。

17世紀のウンブリアの絵画は、躍動感ある人物描写と光と影の明暗が印象的なバロック期の大家カラヴァッジョ(Caravaggio;1571-1610)の影響を大いに受けた。


以上、写真に収めた絵画館の作品はこれらが全てである。


反省点としては、ルネサンス期の絵画に、特にペルジーノとピントリッキオに興味があったため、26室以降の近世の絵画を駆け足で見てしまったことである。

次、ペルージャに訪れた際は、こちらをメインに観ていきたい。

ウンブリア国立絵画館(Galleria Nazionale dell'Umbria)

公式サイト:galleria nazionale dell'Umbria

公式インスタグラム:@gallerianazionaledellumbria

住所:Corso Vannucci, 19, 06123, Perugia, Italy

料金: 8€(割引料金2€)

※建築、文化財保護など特定の専攻の学生は、海外の大学であっても入場無料になる。学生の方には、念のため、国際学生証か英語表記のある学生証を持っていくのをお勧めする。

開館時間:8:30-19:30(11月から3月まで;月曜休館)

12:00-19:30(4月から10月までの月曜日)

     8:30-19:30(4月から10月までの火曜日から日曜日)

※最終入場は18:30まで。


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