小由良直生

名作映画は数々あれど、日の当たらない名作もある。 邦画(~80年代)を中心に、ちょっと…

小由良直生

名作映画は数々あれど、日の当たらない名作もある。 邦画(~80年代)を中心に、ちょっと映画を語ります。 好きな邦画(順不同)セーラー服と機関銃 高校大パニック ゴジラ 東海道四谷怪談 太陽を盗んだ男 鬼龍院花子の生涯 空の大怪獣ラドン 人間蒸発 椿三十郎 仁義なき戦い

最近の記事

切り開き縫ひ閉ぢ洗ひ薔薇医院 小檜山繁子

『江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間』(1969) かなりの間、放映禁止作品だったが、数年前DVDで発売された今作を中心に、禁止作品について考えてみたい。 まずは今作のあらすじから。 微かに記憶している子守唄に誘われるように、北陸に向かうと自分と瓜二つの金持ちの当主が死んだという記事を見つけると、その死体が生き返ったように見せかけ成りすます。 と、乱歩の「パノラマ島奇譚」を元にしているのだが、「人間椅子」や「屋根裏の散歩者」などが混ざっている。 今作がタブー視されている要因は「

    • 『夜叉ヶ池』(1979)池にゴミは捨てないで!

      わが恋は人とる沼の花菖蒲   泉鏡花 約40年ぶりに初DVD化!  台詞が歌舞伎調? だったため、少し聞き取りづらかったので、原作から面白かった設定を引用する。 まずあらすじから。 旱続きの村には言い伝えがあった。「日に三度、鐘をつかねば夜叉ヶ池の竜神が怒り、村は津波の犠牲となる」と。 これはよくある話。この先の展開として、村の若い娘を生贄にとなる。 今作もご多分に漏れずであるのだが、面白いのが竜神との契約内容。 人のために自由を奪われるのは構わんが、我は自由を欲するか

      • 『亡霊怪猫屋敷』『怪猫トルコ風呂』夏の納涼祭②

        化け猫の影を大きく夏芝居   柴田佐知子 まず『亡霊怪猫屋敷』は、理不尽に殺され、「末代まで祟ってやる!」という、超古典的な化け猫もの。 化け猫の描写も基本に忠実で、「燭台の油を舐める」「池の鯉を手掴みで」「アクロバットな動き」など。死体は土壁に塗り込め、しばらくして血の染みが!というやつ。 そして『怪猫トルコ風呂』は、題名と70年代の東映作品と言うことで、内容は察してほしい(9月にDVD発売になるとか。びっくり!)のだが、エロの部分はありつつ、物語としては、化け猫ものと言

        • 『怪談 蛇女』(1968)夏の納涼祭り①

          蛇消えし田の一枚がざわめけり   鎌田亮 中川信夫監督は、怪談映画の巨匠と言われている。生涯撮った百本近くの作品中、怪談ものは僅か9本だけなのだから、その実力は容易に推察できるだろう。 日本の場合、振り返ったらそこに幽霊がいた。といった静かなものが多い中、今作では「驚き」の感情の多い恐怖であった。これはわざとなのか。この辺りは他の中川作品と比較してみる必要があるかもしれない。(詳細は後日) あと、幽霊を追って、部屋から部屋へ行く場面。突然カメラは俯瞰になるのだが、セオリー

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          『妖怪百物語』『怪獣大戦争』『東海道お化け道中』怪談の定義と殿のご乱心!

          すててこや百鬼夜行のしんがりの   佐々木六戈 『妖怪大戦争 ガーディアンズ』8月13日公開! 応援企画1 怪談映画とはなんなのか。ホラーとどう違うのか。それとも同じなのかを考えてみたい。 結論から言うと、ホラーと怪談は別ものである。 というのも、ホラーは画や音で怖がらせることに重きを置いているが、この怖いという感情の正体は、「驚く」も含まれている。一方の怪談は、人間の情や欲望、怨念の先に存在する恐怖を描いているのだが、今回取り上げる「大映妖怪三部作」を見てみると、そこ

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          速報『ゴジラvsコング』

          本日公開、さっそく観てきました! これぞ、怪獣映画! そうそう、こういうの観たかったんですよ!              ネタバレになるといけないけないので、詳しくは言いませんが、あの展開になるのなら、過去の関連作品で、観なければいけないものがもっとありましたね。早く言ってくれないと(笑) ということで、これから観ることにします。 で、もう一回『ゴジラvsコング』を観る!

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          『モスラ』『モスラ対ゴジラ』我々が守るべき水の惑星

          月に水有り地球に水爆鯉のぼり   石井英彦 いよいよ明日公開!『ゴジラvsコング』公開前に復讐しよう!第5弾! 久々に、モスラ2作品を観たのだが、同じモスラを題材にしていても、メッセージ性、思想は全く違うものであった。 まず『モスラ』 これは『キングコング』(1933)の内容と似ている。興行師にさらわれるのが、主役のモスラではなく、30㎝ほどの身長の小美人(ザ・ピーナッツ)なのだが、その小美人を助けるために、モスラが日本にやってくるという内容。 次に『モスゴジ』 こち

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          『大脱獄』(1975)石井さん、これどうなってます?

          一部分だけでも死体花の雨   北大路翼 これはいったい、どうなっているのだろうか? 網走刑務所に収監されている梢(高倉)。強盗殺人の容疑で死刑が確定していたのだが、実は、殺人を犯したのは、一緒に銀行強盗に入った剛田(田中)。梢は、剛田らの策略によって嵌められたのだった。 梢らは、他の死刑囚とともに脱獄を計画、自分を嵌めた剛田らに復讐に向かう。のだけれど、色々な場面でいったいこれはどうなっているの?と首を捻ること暫し。 逃走中に出会った具合の悪そうな、踊り子のあき(木の実

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          『空の大怪獣 ラドン』(1956)

          火山から出てくる机ごときもの 小川双々子 『ゴジラvsコング』公開記念。過去の関連作を復讐しよう第4弾! この作品、怪獣物というより、どちらかというと、ヒューマン要素が強い作品である。 怪獣ものとしては異色の作品。 九州の阿蘇山近郊の炭鉱で、原因不明の出水事故により、死亡者が出てしまう。当初は、刺殺の跡があったことから、仲間内の揉め事が原因と思われていた。 が、犯人は「ヤゴ」 あの、蜻蛉の幼虫のヤゴである。だがしかし、それは通常のものとは違い、巨大化していた! この

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          『鳥』(1963)1000年後には鳥の国

          夕焼や千年後には鳥の国   青木柚紀 鳥が人を襲う話。と、たった一言で内容が言えてしまうのだが、一言では収まらない恐怖の仕掛けがあちこちにあるのだ。その仕掛けを登場順に記していこうと思う。 と、その前に、ヒッチコック作品恒例の、ヒッチコックのカメオ出演場面だが、今作は冒頭、鳥屋さんから、犬連れで出て来る紳士だった。 では、本題。 ① 鳥の襲撃理由 全く分からない。急に襲い始めるのだが、この理由が分からないことが、逆に恐怖を煽る。何も悪いことはしていないのに、襲ってくる

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          『キングコング対ゴジラ』『キングコングの逆襲』やっぱり、金髪美女が好き!

          木の葉散るゴリラの背ナの愁ひかな 伊藤いと子                                   7月2日、いよいよ公開決定!『ゴジラvsコング』復習しよう第3弾! ざっくり、本当にざっくり言うと、本家『キングコング』と筋は同じ。同じなのだが、そこは東宝特撮。なんだか、全く違う作品にも思えて・・・・・・。 『キンゴジ』の作品中、宣伝マンが気にしているのが「聴視率」現在では、「視聴率」というのが一般的ではあるが、この作品の時代(1962年)、カラーテレビ本放

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          『殺人狂時代』(1967)マジメとフマジメの間①

          院長の掛声精神科は踊る 平畑静塔 注)今作は、古い作品であるために、今では禁止となった言葉が多く出てくるのですが、触れないように記載していくので、肝心なところが分かりにくいかも。                              また、チャップリンの『殺人狂時代』とは関係ありませんので、あしからず。 題名から想像していたものと、大きく違っていた。 あんな仲代達矢は見たことがない。今作の仲代さんは、髪はぼさぼさの無精ひげ。瓶底めがねにヨレヨレスーツ。というなかなか情け

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          『女吸血鬼』(1959)

          両手で顔被う朧月去りぬ   金子兜太 和製吸血鬼の先駆け作品なのだが、和製吸血鬼といえば、「岸田森一」択だと思ていたが、ここにもいた、天地茂という吸血鬼が! 伊都子(池内)の誕生パーティーの最中、20年前に行方不明になっていた伊都子の母、美和子(三原)が、突然戻ってきた。しかも失踪したときと変わらぬ若さで。 不老不死、美女、もう吸血鬼臭ぷんぷんなのだが、注意したいのが題名である。『女吸血鬼』とあるのだが、実際、この美和子は吸血鬼ではない。ただの被害者。広義の意味で言えば吸

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          『チャイニーズ・ゴースト・ストーリー』(1987)未知との遭遇かも?

          幽霊も一人二人と数うべき   宇多喜代子 実は、ホラー苦手。苦手だったのだが、何故か観てしまった。二十年くらい前だと思う。 当時、香港の映画といえば、ジャッキーとその一味か、ブルースリーしか観たことがなかったのだが、今作を観て、幽霊役のジョイウォンに興味を持ち、色々観た結果、カンフーものではない、「香港ノワール」というジャンル(代表作は『男たちの挽歌』(1986)だろうか)があることを知った。 これは大きな収穫だったのだが、それはまた別の機会に。 ちなみに、ジョイウォン関

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          『疑惑』(1982)に見る俳優道~後編~

          前回に引き続き、『疑惑』の紹介です。 映画版では、「桃井vs岩下」女と女の対決の構図となっているが、原作は、岩下演じる佐原は男である。 今回、女に変更したことで、緊迫感が増すとともに、「理」の女の佐原にも「情」の部分が見え、人物に深みが増している。 先日、田村正和さんの追悼番組として放送されていたドラマ版は、原作と同じく佐原は男(田村)だった。そして、「疑惑」の登場人物で、もう一人重要なのが、地方の新聞記者、秋谷である。 今作は、妻が夫を殺したのではないかという事件もの

          『疑惑』(1982)に見る俳優道~後編~

          『疑惑』(1982)に見る俳優道~前編~

          春の灯や女は持たぬのどぼとけ   日野草城 今回は、先日亡くなられた田村正和さん主演のドラマ(2009)と、原作と合わせて紹介。 夜、岸壁から一台の車が転落、割れたフロントガラスから脱出したのは球磨子(桃井)だけで、夫の福太郎(仲谷)は、引き上げられた車の中で、溺死していた。 この状況だと、事故か?事件か? といった展開になると思うのだが、今作は、はなから球磨子が福太郎を殺したのではないかと、警察はもちろん、マスコミや住民は思っていた。 その原因は、 ・福太郎に三億円の

          『疑惑』(1982)に見る俳優道~前編~