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『空の大怪獣 ラドン』(1956)

火山から出てくる机ごときもの 小川双々子


『ゴジラvsコング』公開記念。過去の関連作を復讐しよう第4弾!

この作品、怪獣物というより、どちらかというと、ヒューマン要素が強い作品である。
怪獣ものとしては異色の作品。

九州の阿蘇山近郊の炭鉱で、原因不明の出水事故により、死亡者が出てしまう。当初は、刺殺の跡があったことから、仲間内の揉め事が原因と思われていた。

が、犯人は「ヤゴ」

あの、蜻蛉の幼虫のヤゴである。だがしかし、それは通常のものとは違い、巨大化していた!

この場面、行方不明で犯人だと思われていた五郎(緒方燐作)の妹、キヨ(白川)を心配し、河村(佐原)が訪れていたところ。
心情的にグッとくる場面であるうえに、作品の空気感も相まって、このヤゴ(メガヌロン)、なんらかの理由により、五郎なのではないかと思ってしまった。

しかもしばらくの間・・・・・・。
だから、警官らに追われ、拳銃で撃たれる姿に、悲壮感を抱いてしまった。

さて、今作の主役であるラドン。とにかくでかい!
プテラノドンからきているのだが、両翼の端から端までが270m。体重が100t以上。なにやら分かったような、分からないような大きさ。

さきの、メガヌロンは、体長8m、体重1tらしい。まだこちらの方が実感がわくのかと。

この十分巨大なメガヌロンがラドンに捕食されるのだが、その大きさの対比がエグい。まるで、鷹とミミズくらいか、それ以下か。そう考えるとラドンの大きさがなんとなく分かるかと。

この捕食場面に河野が出くわすのだが、人間を含め、その体長差、弱肉強食、食うものと食われるものの関係に、完全に食われる側の人間が見て取れて恐ろしい。

そんな超巨大なラドン。特に火を吐くわけでもないのだが、恐ろしいのが巨大な羽の羽ばたきによる風。
ゴジラ等は、踏み潰す、なぎ倒すことによって家屋が破壊されるのだが、ラドンの場合は、強風による倒壊。いわば、台風の被害と同じ。

この特撮場面は必見である。
撮影当時、木造の家屋が多く、当然のことだが、瓦や木材でできている。それらが、風で吹き飛ぶことになるのだから、瓦一枚一枚、ドアや柱が飛ばされなければリアリティに欠ける。

今作は、それが見事に表現されており、その労力に頭が下がるのと同時に、やはり、その汗が見える特撮は素晴らしいと思った。

よく全世界に宇宙人が!とかの場面で、各国のキャスターが状況を伝えていく場面があるのだが、今作は、「北京→フィリピン→沖縄→東京」となっていた。

気になるのは「沖縄」。現代の感覚で言えば、「東京があるのに、同じ日本の別の都市があるのはなぜ?」となるのだが、当時の沖縄はまだ、アメリカによる統治時代。日本であって、日本ではないのだ。

また、古代生物の復活の原因が「地球の温暖化」であるというものが散見される。
実際に問題視され始めるのは、1970年代ごろからだろうか。広く一般的に広がったのは、ここ最近のような気がするのだが、こういったSF的な作品(映画に限らず)は、未来を描くことに長けていると思うのだが、それは、今現在起こっている問題に対して、提議の目を持っているということなのではないだろうか。

火山から出てくる机ごときもの 小川双々子

我ながら、よく分からない句を選んだものだが、妙に気になる。今回のラドンは最後、火山に沈む。まるで戦争に敗れた者の悲しみに溢れており、その声は泣いていた。その光景と、この句が、妙に響き合っている気がする。


『空の大怪獣 ラドン』(1956)
本編監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:村田武雄/木村武
原作:黒沼健
出演:佐原健二/白川由美/平田昭彦/田島義文

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