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『モスラ』『モスラ対ゴジラ』我々が守るべき水の惑星

月に水有り地球に水爆鯉のぼり   石井英彦


いよいよ明日公開!『ゴジラvsコング』公開前に復讐しよう!第5弾!

久々に、モスラ2作品を観たのだが、同じモスラを題材にしていても、メッセージ性、思想は全く違うものであった。

まず『モスラ』
これは『キングコング』(1933)の内容と似ている。興行師にさらわれるのが、主役のモスラではなく、30㎝ほどの身長の小美人(ザ・ピーナッツ)なのだが、その小美人を助けるために、モスラが日本にやってくるという内容。

次に『モスゴジ』
こちらは、超大型台風の高波により、巨大卵(モスラ)が流されてしまい、こちらも興行師の手の中に。で、こちらは逆に小美人がモスラを救出に来るという内容。

どちらも、平和の島「インファント島」が出てくる。この島に、原住民と、その守護神としてモスラがいるのだが、無人島だと思われており、原水爆実験場に使われている。

『モスラ』では、原水爆実験が現在進行形なのだが、見渡すかぎり緑が広がっている場所もあった。                       だが、『モスゴジ』は、見る影もなく、荒れ果てた大地となっていた。

この2作品の内容に繋がりはないのだが、この島だけがどんどん退廃していっていた。
『モスラ』で、「2度と核実験はやらせない、約束する」と言っていたあれは、なんだったのかと(内容に繋がりはないのだが)憤りを覚える。

『モスラ』の、モスラの進行方向に「横田基地」が出てくるのだが、こういった唐突になにかが出てくる場合、なんらかの意味が隠されているときがある。
モスラに破壊された街の全景。ただひとつ光り輝く「バヤリース」のネオン看板が、映画のスポンサーであるバヤリースに忖度したように。
ちなみに、『モスゴジ』にも「バャリースオレンヂ」の文字が出てくる。

で、横田基地であるが、1960年に「日米安保条約」調印に関係していると思われる。

『モスゴジ』では、ゴジラの退治をモスラに頼もうとするのだが、小美人に見事に断られる。
断られて当然、大切な住処を、身勝手な人間の原水爆によって汚されたのだから。

ただ、原水爆実験を行っていたのは、日本人ではない。そしてゴジラは日本にいる。むしろ、核の被害者である日本人からの頼みは別だろうという思いがあるかもしれない。

だが、その考えは違うのだと今作は言っている。

例えば、日本に来る宇宙人(映画の中での話)は、必ずと言っていいほど、「核兵器」の話をしてくる。
『宇宙人東京に現わる』(1956)で、日本に来た宇宙人は、核兵器をどうにかしてくれと言いだすのだが、なぜ日本に?日本に核はないでしょ。と返事すると宇宙人は、

「唯一の被曝国であるあなたがたが声をあげれば、みんな耳を傾けるから」と。

だからこそ、今作では、「我々がいい世界をつくること。努力します」と、ラストに言わせているのだ。

月に水有り地球に水爆鯉のぼり   石井英彦

かつて「水の惑星」といわれた地球があった。と、過去形で話される未来があるかもしれない。「水の惑星、月」と言われる未来になっているかもしれない。この子が大きくなるころに・・・・・・。


『モスラ』(1961)
本編監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:関沢新一
原作:中村真一郎/福永武彦/福田善衛
出演:フランキー堺/香川京子/小泉博/ザ・ピーナッツ/ジェリー伊藤/志村喬

『モスラ対ゴジラ』(1964)
本編監督:本多猪四郎
特撮監督:円谷英二
脚本:関沢新一
出演:宝田明/星由里子/小泉博/ザ・ピーナッツ/藤木悠

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