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『夜叉ヶ池』(1979)池にゴミは捨てないで!

わが恋は人とる沼の花菖蒲   泉鏡花


約40年ぶりに初DVD化! 

台詞が歌舞伎調? だったため、少し聞き取りづらかったので、原作から面白かった設定を引用する。

まずあらすじから。
旱続きの村には言い伝えがあった。「日に三度、鐘をつかねば夜叉ヶ池の竜神が怒り、村は津波の犠牲となる」と。
これはよくある話。この先の展開として、村の若い娘を生贄にとなる。

今作もご多分に漏れずであるのだが、面白いのが竜神との契約内容。
人のために自由を奪われるのは構わんが、我は自由を欲するから、約束を忘れないように鐘を鳴らせ。と言うのだが、人間側から見える光景と、竜神側からでは随分と違うように見えないだろうか。

今作にはもう一か所、同じような場面がある。
雨乞いのために池に捧げる生贄だが、された側は全く違う意見のよう。
鍋や刀ならまだしも、犬の首、猫の頭を池に放り込むとは! 汚くて! 掃除をするのに手間がかかって迷惑だ!
確かに、その通りで、自分の庭にそんなものを放り込まれれば、警察沙汰である。

こういった物の見かたも面白かったのだが、他に今作の見どころは三つ。

まずは、妖怪(?化身?)を演じる役者の豪華さ。
丹阿弥谷津子、井川比佐志、常田富士男、三木のり平など。

二つ目は、坂東玉三郎。
坂東演じるのは、お百合と白雪姫の二役。
歌舞伎の女形でもあるので、女性を演じるのに問題はないのだが、加藤剛演じる晃との絡みはちょっとしたもの。

三つめは特撮である。
これに触れない訳にはいかない。
この手の話は、最終的に人のエゴなどによって約束は破られ厄災が起こるのだが、今作では、当初の約束通り、大津波が村を襲う。

この場面は、ミニチュアセットをスタジオに組んで、50トンもの水を使っての撮影。その迫力はお見事と言うしかない。
洪水が収まってみれば村が湖どころか滝の底。実際に、世界落差ランク5位のイグアスの滝(画像参照)にセットを組んで撮影したそうで、旱の村とは雲泥の違い。

いつの世も人間は救いがたいものである。

わが恋は人とる沼の花菖蒲   泉鏡花

夜叉ヶ池の白雪姫は、別の池の君に恋をしている。だが、会いに行こうにも動けば洪水が起こるため動けない。救いがたい人間の行為であったが、違う目で見れば、彼女を解放してあげたのだ。

『夜叉ヶ池』(1979)
監督:篠田正浩
原作:泉鏡花
脚本:田村孟/三村晴彦/篠田正浩
出演:坂東玉三郎/加藤剛/山崎努/丹阿弥谷津子

参考文献:映画秘宝2021年8月号

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